どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

十日振りの学校は……

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 「久し振りだな伽月」
 十日降りに教室に入った俺に真っ先に声を掛けてきたのは猛だった。おっ、ギブス取れてんじゃねぇか。
 「うす、長い事休んじまった」
 「俺寂しかったんだぞー、十日も学校休みやがってさぁ」
 猛は何を思ったか俺に抱き付いてくる。オイ、大男が『寂しかった』とか言って泣きそうな顔するなよ……。
 「おはよう伽月、輝もここんとこ学校休んでるんだ」
 次に声を掛けてきたのは真幸、この前ノートありがとな。
 「らしいな、光畑から聞いた」
 俺は教室を見渡して所々空席になっている事に気付く。遵斗も来てない様だ、運動部の大会もまだあるみたいだしな。
 「今日は野球部と相撲部が公欠だよ、それに伴って井口も公欠」
 颯天と佐野が公欠か……最近颯天とはメールしかしてない、大会に向けて稽古も大詰めだろうしな。そう言やヤシックスも居ねぇな、あいつらはどうでも良いけど結嶋に打ち負かされてどうなったんだろうな?
 「ヤシックスなら結嶋のスパルタに音を上げたよ、手の平変えて媚びに行ってたけど三日くらいしか持たなかったよ」
 「へぇ、三日も持ったか……にしても結嶋からしたら不完全燃焼だろうな」
 「みたい。『不良を語るな軟弱者が!』ってぼやいてた……おはよう、結嶋」
 噂をすれば何とやら、結嶋はおはようと言ってから遵斗の席に座って授業の支度を始める。
 「平泉は終業式まで学校に来ないらしいから席を借りてるんだ。『一人ポツンと居るのも寂しいだろうから使え』って」
 月曜日に会ったんだ。結嶋はそう言った。
 「遵斗来てたんだ」
 「うん、詰めて通院するらしくて必要な書類を提出しに来たって言ってた」
 「このところずっと変だったのも影響してるのかな?」
 「そこまでは分からないけど、ちょっとやつれてたし顔色も良くなかったな」
 俺は田丸と喜多川から聞いてる話と、ライブハウスでの遵斗の行動をふと思い出した。通院ってひょっとして……あの早朝着信以来お互いちょっと距離を置いてるけど、転校するまでに一度きちんと話がしたいって思ってる。んでも終業式まで来ないのか……ならメールでもしてみるか。
 
 テストが明けて早十日経っているので、帰りがけに職員室に立ち寄って担任の史生谷先生から一気に答案用紙を受け取った。
 「あの体調の悪さでよく頑張ったな、今回は数学も含めて赤点無しだ」
 うぉっしゃラッキー!これで心置きなくデート……いや、バイト(それもどうかと突っ込まれそうだな)できる!答案用紙と共に解答用紙(全教科)まで付けてくれてるから復習しとかないとな、ここで成績落としたくない。
 「数学はマジ自信無かったです」
 「俺が教えてんだ、成績上げてもらわねぇとこっちが困る。まぁ補習を受けたいってんなら何日か呼んでや……」
 「いえ結構です」
 「食い気味で断わんな」
 先生は苦笑いしながら俺を呆れ気味に見てくる。冗談じゃねぇ、何が悲しくて貴重な夏休みでまで訳の分からん数式と戯れにゃいかんのだ、そんなの宿題だけで充分だ。
 「始業式翌日に主要五教科のテストがある、宿題の提出は無いが問題はそこから出すからちゃんと勉強しておけよ」
 はい。これで話は終了かと思ったがまだ続きがあった。
 「ところでだ、平泉とは連絡取ってるのか?」
 「最近は全然……彼がどうかしたんですか?」
 「いや、何らかのコンタクトがあったら話聞いてやってくれってそれだけの事だ」
 はい。取り敢えずの返事をして職員室を出たのだが、何となく遵斗の事を託された様な気がして今朝ふと思い出してた事が蘇った。あの話本当だったのか?そんな事を考えていると鞄の中のケータイがブルブルと震え出し、端に寄って画面を確認すると遵斗からのメールだった。

 【話がしたい、時間取れるか?】

 このタイミングで遵斗からコンタクトを取ってきた……断る理由なんて無い。俺はすぐに了承の返信をすると、待ち合わせ場所に国道沿いのファーストフード店を指定してきた。あそこは独立店舗だから駐輪場がある、自転車通学の俺を気遣っての事かも知れない。そういった細かいところを気遣える男なだけに、あの時の早朝着信が未だに信じられない。
 何があった遵斗、言える範囲でいいから教えてくれ。願うかの様にそう思いながら俺は必死にペダルをこいだ。
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