113 / 145
やっとこさ本編
……僕は前に進みます
しおりを挟む
ようやく学校に行けた木曜日の夕方、僕は輝君に電話をしてみました。
『はい』
何度かのコールで通話に出てくれた彼の声は少しかすれていました。風邪でも引いたのかな?
「誠です、もしかして体調悪い?」
『うん……峠は越えて熱は下がったんだけど喉の痛みだけ残ってて』
って事は僕がダウンしたのとほぼ同時期に輝君も体調崩してたんだ……知らなかったとは言え、一度くらい連絡すれば良かったかもと少し申し訳無い気持ちになります。
「差し障り無ければお見舞いに行ってもいい?」
『うん、良いよ。実は君に話しておきたい事があって……』
僕もだよ、そう思いながらも言葉を飲み込みました。今回は輝君の話を聞いたら帰ろう……そう考えながら一旦『マカロワさん』から逆方向にある洋菓子店で、お気に入りのレモンタルトを買ってからお見舞いに行きました。
「ごめんください」
輝君の自宅でもある『マカロワさん』に入ると、子供の頃から見慣れてるおかみさんがいらっしゃい、と出迎えてくれました。たまに手抜きしたい時に利用させて頂くので、僕が一応近所に住んでるって事はご存知みたいです。
「久し振りだねぇ、◇◇に通ってんのかい?」
「はい。今日は輝君のお見舞いに伺いました」
僕は買ってきたレモンタルトを手渡します。
「あら、あの子と親しくしてくれてんだね。お気遣いありがとう、さっ、上がって上がって」
お邪魔します。僕はおかみさんに案内されて三階にある輝君の部屋の前に着きました。
「輝、お友達が来てくれたよ」
『はい、今開ける』
その声と共にドアが静かに開き、マスク姿の輝君がそっと顔を出してきました。
「後でお茶淹れるね」
「うん、ありがとう伯母さん」
あっ、そっか。今は伯父様夫妻がここを切り盛りしてるんだよね。お父様は手伝ってらっしゃるって聞いてるけど……。
「来てくれてありがとう、あんまキレイな部屋じゃないけど入って」
「あっうん、お邪魔します」
そう言えば輝君の部屋初めて入る……ドキドキしながら中に入ると、さすがブラバン青年と言った感じで音楽絡みの物がたくさんありました。うわっ、練習用のドラムセットもある!
「凄い……音楽一色のお部屋だね」
「うん、要らないのもあるけど捨てられなくて」
うんうん、ジャンルは違えどそういうのあるよね。因みに僕はミシンとお祖母ちゃんが買ってくれた子供用のお料理キット、ミシンは壊れちゃったけどお料理キットはたまに出してお手入れしてます……って話脱線しちゃいました。
「早速なんだけど、良いかな?」
うん。僕は勧められるまま向かい合って座ります。輝君は変わらず綺麗な顔をしていますが、遊園地デートの時みたいなときめきは感じませんでした。
「日曜日の事なんだけど……ゴメンね、キス、しちゃって」
輝君は申し訳無さそうにそう言ってきました。恋じゃなかった事を思い知らされたのは事実だけど、そこまで嫌じゃなかったから気に病まないで。
「気にしないで、嫌だった訳じゃないから」
「でも……正直凄く後悔したんだ、何か悪い事しでかした様な罪悪感がずっと抜けなくて」
ひょっとして彼も同じ様な事考えてるのかな?本当の気持ちを知りたい……僕は輝君の次の言葉を待ちます。
「誠君の事大好きだし、君はとっても魅力的だよ。でも違ってた、恋じゃなかったんだ……」
「僕もそう……」
「えっ?」
「僕も同じ事考えてた。輝君はとっても優しくて素敵だから、お付き合いするならこういう人が良いなぁ、って思ってて。恋じゃなかったって気付いた時はちょっとショックだったし勝手な言い分だと思うけど……友達じゃ駄目かな?」
「そう言ってくれて嬉しいよ……君とも伽月とも気まずくなりたくなかったんだ。先に言われちゃったけど……これからも仲良くして」
うん。こんな形で折角の縁が薄れてしまうのが嫌だったので、思い切って言葉に出来て良かったです。この部屋にホッとした空気が流れたところで、おかみさんがさっき渡したレモンタルトと飲み物を持って入ってきました。
「飲み物は紅茶にしたけど良かったかい?」
「うん、ありがとう。それよりこのタルトあそこの洋菓子店?」
「そうだよ、この子がお見舞いにって持ってきてくれたんだ。ご丁寧に私らの分まで」
「えっ!?ウチ七人家族だよ!?誠君そこまでしなくても……」
輝君はびっくり顔で僕の顔を見ています。実はその洋菓子店、セールでカットケーキが百円で買える事があるんです。通知はホームページのみ、僕はそこの隠れファンで定期的にチェックしてるんです。で、今日はレモンタルトが一個百円、安くなってもクオリティは全く下がらないからとってもお買い得♪しかも個数制限無し。
「種明かしするとセールだったから安く買えたんだ」
「あぁ、サイト限定のセール今日だったんだね。あんまり広めたくないから黙ってたのよ」
おかみさんはご存知だったみたいです、思わぬ所にお仲間が……ってまたまた脱線してしまいました。おかみさんはすぐお店に戻り、僕たちはケーキを美味しく頂きました。
『はい』
何度かのコールで通話に出てくれた彼の声は少しかすれていました。風邪でも引いたのかな?
「誠です、もしかして体調悪い?」
『うん……峠は越えて熱は下がったんだけど喉の痛みだけ残ってて』
って事は僕がダウンしたのとほぼ同時期に輝君も体調崩してたんだ……知らなかったとは言え、一度くらい連絡すれば良かったかもと少し申し訳無い気持ちになります。
「差し障り無ければお見舞いに行ってもいい?」
『うん、良いよ。実は君に話しておきたい事があって……』
僕もだよ、そう思いながらも言葉を飲み込みました。今回は輝君の話を聞いたら帰ろう……そう考えながら一旦『マカロワさん』から逆方向にある洋菓子店で、お気に入りのレモンタルトを買ってからお見舞いに行きました。
「ごめんください」
輝君の自宅でもある『マカロワさん』に入ると、子供の頃から見慣れてるおかみさんがいらっしゃい、と出迎えてくれました。たまに手抜きしたい時に利用させて頂くので、僕が一応近所に住んでるって事はご存知みたいです。
「久し振りだねぇ、◇◇に通ってんのかい?」
「はい。今日は輝君のお見舞いに伺いました」
僕は買ってきたレモンタルトを手渡します。
「あら、あの子と親しくしてくれてんだね。お気遣いありがとう、さっ、上がって上がって」
お邪魔します。僕はおかみさんに案内されて三階にある輝君の部屋の前に着きました。
「輝、お友達が来てくれたよ」
『はい、今開ける』
その声と共にドアが静かに開き、マスク姿の輝君がそっと顔を出してきました。
「後でお茶淹れるね」
「うん、ありがとう伯母さん」
あっ、そっか。今は伯父様夫妻がここを切り盛りしてるんだよね。お父様は手伝ってらっしゃるって聞いてるけど……。
「来てくれてありがとう、あんまキレイな部屋じゃないけど入って」
「あっうん、お邪魔します」
そう言えば輝君の部屋初めて入る……ドキドキしながら中に入ると、さすがブラバン青年と言った感じで音楽絡みの物がたくさんありました。うわっ、練習用のドラムセットもある!
「凄い……音楽一色のお部屋だね」
「うん、要らないのもあるけど捨てられなくて」
うんうん、ジャンルは違えどそういうのあるよね。因みに僕はミシンとお祖母ちゃんが買ってくれた子供用のお料理キット、ミシンは壊れちゃったけどお料理キットはたまに出してお手入れしてます……って話脱線しちゃいました。
「早速なんだけど、良いかな?」
うん。僕は勧められるまま向かい合って座ります。輝君は変わらず綺麗な顔をしていますが、遊園地デートの時みたいなときめきは感じませんでした。
「日曜日の事なんだけど……ゴメンね、キス、しちゃって」
輝君は申し訳無さそうにそう言ってきました。恋じゃなかった事を思い知らされたのは事実だけど、そこまで嫌じゃなかったから気に病まないで。
「気にしないで、嫌だった訳じゃないから」
「でも……正直凄く後悔したんだ、何か悪い事しでかした様な罪悪感がずっと抜けなくて」
ひょっとして彼も同じ様な事考えてるのかな?本当の気持ちを知りたい……僕は輝君の次の言葉を待ちます。
「誠君の事大好きだし、君はとっても魅力的だよ。でも違ってた、恋じゃなかったんだ……」
「僕もそう……」
「えっ?」
「僕も同じ事考えてた。輝君はとっても優しくて素敵だから、お付き合いするならこういう人が良いなぁ、って思ってて。恋じゃなかったって気付いた時はちょっとショックだったし勝手な言い分だと思うけど……友達じゃ駄目かな?」
「そう言ってくれて嬉しいよ……君とも伽月とも気まずくなりたくなかったんだ。先に言われちゃったけど……これからも仲良くして」
うん。こんな形で折角の縁が薄れてしまうのが嫌だったので、思い切って言葉に出来て良かったです。この部屋にホッとした空気が流れたところで、おかみさんがさっき渡したレモンタルトと飲み物を持って入ってきました。
「飲み物は紅茶にしたけど良かったかい?」
「うん、ありがとう。それよりこのタルトあそこの洋菓子店?」
「そうだよ、この子がお見舞いにって持ってきてくれたんだ。ご丁寧に私らの分まで」
「えっ!?ウチ七人家族だよ!?誠君そこまでしなくても……」
輝君はびっくり顔で僕の顔を見ています。実はその洋菓子店、セールでカットケーキが百円で買える事があるんです。通知はホームページのみ、僕はそこの隠れファンで定期的にチェックしてるんです。で、今日はレモンタルトが一個百円、安くなってもクオリティは全く下がらないからとってもお買い得♪しかも個数制限無し。
「種明かしするとセールだったから安く買えたんだ」
「あぁ、サイト限定のセール今日だったんだね。あんまり広めたくないから黙ってたのよ」
おかみさんはご存知だったみたいです、思わぬ所にお仲間が……ってまたまた脱線してしまいました。おかみさんはすぐお店に戻り、僕たちはケーキを美味しく頂きました。
0
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
学校一のイケメンとひとつ屋根の下
おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった!
学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……?
キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子
立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。
全年齢
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる