どら焼は恋をつなぐ

谷内 朋

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やっとこさ本編

本当の事……

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 指定されたファーストフード店に到着した俺は姿の見当たらない遵斗にメールを送る。
 【二階席にいる】
 それを確認してからジュースだけを注文して二階に上がると、私服姿の遵斗が窓際のカウンター席に独り座っていた。元々細身だけど更に痩せたような気がする、通院もしてるって聞いてるし、まさか大きな病気に罹ったとか言わねぇよな?
 「待たせたな」
 「いや、そうでもないよ」
 振り返った遵斗の顔は先日の椅子振り上げ事件の時よりは落ち着いていた。それでもやっぱ痩せたよな……頬がコケちまってる。
 「ちゃんと食ってんのか?余計なお世話だろうけど」
 「ん〜、一時よりは。それも含めて伽月には迷惑掛けてるからちゃんと話そうと思って」
 遵斗は俺が座り易いよう隣の椅子を引いてくれた。俺は遠慮なくそこに座り、手にしていたジュースを飲む。
 「俺今摂食障害の治療受けてんだ。一時期何も食べられなかった時期があって」
 「お前ダイエットでもしてたのか?」
 元々痩せ型なのに必要ねぇだろ?ってそんな単純な問題じゃないか……。
 「そのつもりは無かったんだけど……中学の時に飲み始めたハーブティーの影響か食い物を受け付けなくなっちまって」
 ハーブティー?物によってはダイエット効果が期待できるのもあるだろうけど、効果てきめん過ぎると言うかそれってもしかして……。
 「『危険ドラッグ』とか『脱法ハーブ』って言えば分かるか?」
 それマジで言ってんのか!?立派な犯罪じゃねぇかよ!いや、先ずは落ち着け、一通り話を聞こう。
 「そんなもん中坊の手に入るもんなのか?」
 「って思うだろ?それがびっくりする位お手軽に買えるんだよ。ちょっとだけ高めのハーブティー的な売り方でな、俺は近所の輸入食材店で買ってたんだ」
 最初は知らずに使ってた。遵斗は自嘲するかの様にそう言った。多分店頭に普通に並んでたんだろうから中坊の知識で気付けるはずが無い。
 「その店が移転した時に止めれば良かったんだけど、ご丁寧に移転先を報せるチラシ貰って、ノコノコ通ってるうちにもっと効果的な使い方があるって教えられて依存する様になっちまって……何日か空くと禁断症状が出て吐き気はするイライラもするしで自分一人じゃ手に負えなくなってまた頼る……それの繰り返しだったんだ」
 喜多川の言ってた事がマジになった……でも俺に何が出来る?少なくとも今は通院してる、本人はドラッグからの脱却を図ってるはずなんだ。余計な正論は多分要らない、変な同情もかえって失礼な気がする……でも聞きたい事は幾つかある、でも聞いていいのか?
 「……何か言いたそうだな」
 俺は図星を突かれて一瞬身が固くなる。田丸じゃないが遵斗も時々人の心を見透かした様な事を言ってくる。でもこの方が好都合だ、だったら素直に聞けばいい。
 「お前捨て猫を虐待してたってホントか?」
 「……らしいんだ」
 「何だよそのボヤッとした言い方、動物苦手っつってたよな」
 何とも曖昧な返答に俺は若干イラッときた。どこかに嘘でも潜ませてんのか?
 「動物一切触れないんじゃなかったか?」
 「触れないよ、服に猫の毛いっぱい付いてたから事実だと思う……記憶に無いんだよ、嘘みたいな話だけど。それに気付いた時は発狂しそうだった」
 遵斗は俺から視線を外して頭を抱える。ちょっとやり過ぎたかも知れないけど謝る気なんて無い。俺も完璧とは言えないが、人や物を粗末に扱う行為はどんな理由があっても許されるものではないと思う。
 「さっき言った『別の方法』でハーブを使う様になってから記憶が飛ぶ様になったんだ。実を言うとお前に早朝通話した事も、昌幸に椅子を振り上げた事も覚えてないんだよ……」
 「……」
 「さすがにヤバイと思って少し前に親には話した。けど禁断症状が怖くて分量減らしながらも服用は続けてたんだ、最後に使ったのはテスト最終日、お前が倒れた日だよ……」
 それである分は全部使い切った。遵斗は頭を持ち上げて俺の方に体を向けた。その表情は何となくだけど吹っ切れたと言うかスッキリした様に見えた。
 「先週は断食で入院してたんだ、一度デトックスした方がいい、って。今は規則正しい生活を身に着けるためにキチンと食事を摂るところから始めてるんだ。全寮制の学校に医療施設が付いてる所に入るからまだまだ治療は続くけど」
 「そっか……月並みだけど頑張れよ、もうちょい優しい言い方あるんだろうけど思い付かねぇわ」
 「それは言い方次第だと思う、言葉だけ優しくても心がこもってなかったり言霊が投げやりだったらその方が不親切だよ」
 遵斗はようやっと笑顔を見せてくれた。それで気持ちの整理が付いたんなら俺も少しは役に立てたのかな……?
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