【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹

文字の大きさ
17 / 35
本編

17 近付く二人

しおりを挟む
 なんとか甘々なモーニングを終えた後、いつものようにお見送りをするために玄関に向かった。

「ランディ様、行ってらっしゃいませ」

「出来るだけ早く戻るから待っててくれ」

 彼は私の髪をサラリと撫でて、ちゅっと唇にキスをした。私は驚いて唇を手でおさえた。

「行ってくる」

 そのままご機嫌に彼は出て行った。ミアやテッド、他の使用人達もいるのに……唇にキスされてしまった。そりゃあ、前までは『夫婦なんだしキスくらいしてくれならいいのに!』なんて思っていたけれど、実際されたら恥ずかしい。

 みんなはあえて見て見ぬふりをしてくれている。うゔ……なんだか照れる。

 そして、仕事から帰ってきた彼はさらに甘かった。約束通り早めに戻って来られ「お帰りなさいませ」と言い切る前に抱きしめられた。

「ただいま。早くヴィヴィに逢いたかった」

 ちゅっちゅとキスをして、頭を撫で……真っ赤になっている私に「可愛い」と目を細めて家の中に入って行った。

 うわーっ!あの人は誰なの!?私の知っているランディ様はこんな人じゃなかったのに。いや、このランディ様も素敵だけれど。

 戸惑う私にミアが「あれが本当の旦那様ですよ」と教えてくれた。

 そしてディナーを食べながら、ランディ様と色々なことを話した。彼は仕事の合間に私の両親に今回の事件の説明とお詫びに行ってくださったらしい。

「ヴィヴィをとても心配されていたから、時間のある時に一度帰るといい」

「はい、そうさせていただきます。ありがとうございました」

「でも……お願いだから、ちゃんとここに帰って来てくれよ」

 ランディ様は少し不安そうに私を見つめてながらそう呟いた。私はくすっ、と笑った。

「私はあなた様の妻ですよ?この家以外に帰るところなんてありませんわ」

「そうか……そうだよな!」

 急にご機嫌にパクパクと食事を取り出す姿が、なんだか可愛らしい。

「そう言えば、今週末にまた孤児院へ行ってこようと思います」

「そうか。今週末……よければ俺も一緒にいってもいいか?休みがあるから」

「え!お休みなのにいいのですか?嬉しいです」

「……もちろん。俺も嬉しい」

 孤児院へ行くだけだけど、なんだかデートみたいで嬉しい。子ども達がランディ様を好きになってくれたらいいな。

 そしてまた夜が来た。露出は少ないが、ミアに選んでもらった可愛らしい夜着を着て……一応身体も普段より丁寧に洗って夫婦の寝室に入った。

 うーん……ドキドキする。ゆっくり夫婦になりたいと言ってくださったので、きっと今夜結ばれることはないのだろう。でも、緊張はしてしまう。どこで待つべきか悩んだが、とりあえずベッドに腰掛けた。

「ヴィヴィ、入っていいか?」

「ど、どうぞ」

 彼の声がして、心臓がさっきより早く動いているのがわかる。ちょっと吃ってしまった。ランディ様が私の隣にゆっくりと座ると、マットレスが少し沈んだ。

「……そんなに緊張しないでくれ。襲ったりしないから」

「はい」

「その夜着やっぱり似合っているな。ヴィヴィに合うと思ったんだ」

 そう言われて私は驚いた。これはランディ様が選んでくださった物だったのか。

「これはランディ様が選んでくださったのですか?知りませんでした。ありがとうございます」

 彼はポリポリと頬を指でかいて、少し気まずそうに目線を逸らした。

「ヴィヴィのクローゼットの中の服は、全部俺が選んでいるから」

「ええっ!?」

 あれもこれもそれも!?まさかランディ様が自ら選んでいたというのか。

「……い、嫌だったか?すまない、今までは秘密にしていた」

「いえ。どれも私に似合うものばかりです。ありがとうございます」

 ランディ様が可愛い物が好きなのは本当らしい。しかしまさか全部選んでくださっていたとは驚きだ。

「ヴィヴィの服を選ぶのは本当に楽しい。ヴィヴィが着たら、どの服も可愛くなるから堪らないな」

「あのー……ランディ様、もしかして……その……下着もですか?」

 私は不安に思ったことを、勇気を出して聞いてみた。下着は結構セクシーなのも入っていた気がする。まさか……それも……いや、でも彼はセクシーなのは好きじゃないんだっけ?

「ち、違う!それは侍女に全て任せている。あ、あ、当たり前だろう」

「あー……そうですよね。よ、良かったです」

 ああ、焦ったわ。それならば安心だ。もしかしてそれも全て選んでいらっしゃったらどうしようかと思ったわ。

「そう言えば、初夜の時に夜着が『似合わない』と言われて傷つきましたわ。じゃあ……あれはランディ様のチョイスではないということですよね?」

 私は唇を尖らせてわざと拗ねたようにそう言った。あの時泣いてしまったことをランディ様が気にしていらっしゃる気がしたので、あえて冗談っぽく言おうと思ったのだ。

「最初はヴィヴィの好みがわからないから、侍女達に色んな物を頼んでいたんだ。あれはもっと君に合う服があるのに、と思ってつい言ってしまった。でも言い方が最悪だったし、傷付けて悪かった」

「あなたがセクシーなのがお好きだと思っていましたから、あんなものを初めて着たんですよ。まあ、自分で見ても似合っていませんでしたが」

「……すまない」

「もういいです。許してあげますわ」

「ありがとう」

 彼とのわだかまりも解けたところで「そろそろ寝ようか」という話になった。

 大きなベッドに二人並んで横になる。前にも一緒に寝たことがあったけれど、あの時は寝落ちして意識がなかったから大丈夫だった。今は……はっきりと意識があるのでどうしたらいいものか。

「ヴィヴィ……抱きしめていいか?」

「ど、どうぞ」

 彼に優しく抱きしめられて、胸がドキドキする。ランディ様は温かくて気持ちがいい。

「ヴィヴィは柔らかくて癒されるな。それに甘くていい匂いがする」

 ランディ様は私の首筋に顔を埋めながら話すので、なんかこそばゆい。

「ふふ……くすぐったい。ランディ様は筋肉がすごいですね!」

 私は憧れの眼差しで彼を見つめた。鍛え上げられた胸筋がすごい。騎士の身体ってすごいんだなと感心して、ついペタペタと触る。同じ人間じゃないみたい。

「こら、じっとしていなさい」

 彼は何故か少し不機嫌そうに大きなため息をついて、私が動けないように再度抱きしめた。

「困りました、これではドキドキして寝れません」

「そうだな。確かにハグしたままはハードルが高い。でももう寝よう……これから一緒に寝るんだから慣れないと。おやすみ」

 ランディ様にちゅっとおやすみのキスをされて、ハグは諦め……二人並んだ状態で寝ることになった。触れるか触れないかの距離の手がなんだかもどかしい。

 隣に好きな人がいるなんて、寝れるわけない。寝れるわけがない……と思っていたのに、気が付いたら朝だった。何故?自分の神経の図太さが嫌になる。

「おはよう。くくくっ……ぐっすり眠れたようだな」

 ランディ様は私の頬をツンツンと突きながら、揶揄うようにそう言った。

「……おはようございます」

「ドキドキして寝れないって言ってたのに、ヴィヴィは嘘つきだな」

「うゔっ、すみません」

「すやすや寝る無防備なところも、可愛くて好きだよ。でも俺のことは男だと常に意識していてくれ」

 そう言って甘く唇を吸われ、私は朝っぱらからとろんと蕩けさせられた。

「もちろん意識……してます」

「ならいいけれど」

 それからもランディ様に、優しく起こされる日々が続いた。日を追うごとに一緒に眠るのも段々と慣れてきて、手を繋いだり……腕枕をしてもらいながら寝たりと二人の距離は近付いていった。

 忙しい彼とベッドの中で、話せる時間があるのも嬉しかった。ああ、幸せだな。私は今夜も彼の温もりを感じながら深い眠りに落ちていった。


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

【完結】何もできない妻が愛する隻眼騎士のためにできること

大森 樹
恋愛
辺境伯の娘であるナディアは、幼い頃ドラゴンに襲われているところを騎士エドムンドに助けられた。 それから十年が経過し、成長したナディアは国王陛下からあるお願いをされる。その願いとは『エドムンドとの結婚』だった。 幼い頃から憧れていたエドムンドとの結婚は、ナディアにとって願ってもいないことだったが、その結婚は妻というよりは『世話係』のようなものだった。 誰よりも強い騎士団長だったエドムンドは、ある事件で左目を失ってから騎士をやめ、酒を浴びるほど飲み、自堕落な生活を送っているため今はもう英雄とは思えない姿になっていた。 貴族令嬢らしいことは何もできない仮の妻が、愛する隻眼騎士のためにできることはあるのか? 前向き一途な辺境伯令嬢×俺様で不器用な最強騎士の物語です。 ※いつもお読みいただきありがとうございます。中途半端なところで長期間投稿止まってしまい申し訳ありません。2025年10月6日〜投稿再開しております。

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します

大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。 「私あなたみたいな男性好みじゃないの」 「僕から逃げられると思っているの?」 そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。 すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。 これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない! 「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」 嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。 私は命を守るため。 彼は偽物の妻を得るため。 お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。 「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」 アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。 転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!? ハッピーエンド保証します。

【電子書籍化・1月末削除予定】余命一カ月の魔法使いは我儘に生きる

大森 樹
恋愛
【本編完結、番外編追加しています】 多くの方にお読みいただき感謝申し上げます。 感想たくさんいただき感謝致します。全て大切に読ませていただいております。 残念ですが、この度電子書籍化に伴い規約に基づき2026年1月末削除予定です。 よろしくお願いいたします。 ----------------------------------------------------------- 大魔法使いエルヴィは、最大の敵である魔女を倒した。 「お前は死の恐怖に怯えながら、この一カ月無様に生きるといい」 死に際に魔女から呪いをかけられたエルヴィは、自分の余命が一カ月しかないことを知る。 国王陛下から命を賭して魔女討伐をした褒美に『どんな我儘でも叶える』と言われたが……エルヴィのお願いはとんでもないことだった!? 「ユリウス・ラハティ様と恋人になりたいです!」 エルヴィは二十歳近く年上の騎士団長ユリウスにまさかの公開告白をしたが、彼は亡き妻を想い独身を貫いていた。しかし、王命により二人は強制的に一緒に暮らすことになって…… 常識が通じない真っ直ぐな魔法使いエルヴィ×常識的で大人な騎士団長のユリウスの期間限定(?)のラブストーリーです。 ※どんな形であれハッピーエンドになります。

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

処理中です...