2 / 32
本編
2 一人の夜
しおりを挟む
結婚式後、王都から休憩をはさみながら一週間かけてセルバンテス辺境伯領に着いた。
途中の街で何泊もしたが、彼とは別の部屋で……話した会話といえば朝晩の挨拶と『長旅だからしっかり休め』だけだ。私はこれからの夫婦生活が大丈夫なのか不安な気持ちでいっぱいになった。
セルバンテス辺境伯領はとても田舎だが、自然がいっぱいで空気が気持ちが良かった。そしてお屋敷は要塞のように立派で、まるで大きな城だった。華やかさはないが丈夫で強そうだ。
「……すごいです。大きなお家」
私はポカンと口を開いて、城を見上げた。
「田舎だから土地が余ってるだけだ。たいしたことはない」
エルベルト様はそう言って、家の中に入って行った。馬車から降りる時はエスコートをしてくださったが、すぐに手を離された。
「奥様、お待ちしておりました」
使用人の皆さんはとても優しく、私のことを歓迎してくださって嬉しかった。
「初めまして。私はノエルと申します。奥様付きの侍女になりましたので、何なりとお申し付けくださいね」
ニッコリと笑う優しい彼女とはすぐに打ち解けた。エルベルト様の二つ年上で、昔からこの家に仕えているらしい。
本当は我が家からも侍女が付いてくると言ってくれたのだが、遠い辺境の地に連れて行くのはどうしても気が引けて私は一人でここに来ることを決めた。幼い頃から一緒にいた侍女とは泣く泣く別れてきたので、ノエルと仲良くなれて嬉しかった。
「奥様とてもお綺麗です。素敵ですよ」
この家に着いて初めての夜。きっと夫婦としての営みがあるだろうと、体を磨き上げ……可愛い夜着を着て寝室で待っていた。
緊張している私に「大丈夫です。全て旦那様にお任せ下さい」と微笑んでノエルは部屋を出て行った。
ドキドキと胸の鼓動が煩い。結婚した以上、そういう行為をするのは当然だというのはいくら子どもな私でもわかる。
「……俺だ。入ってもいいか?」
――来た! その声に身体が跳ねる程驚いたが、なるべく冷静を取り繕った。
「は、はい」
ガチャリと扉を開けて入ってきたのは、スラックスにガウンを羽織ったエルベルト様だった。鍛えあげられた胸元がチラチラと見えて、目のやり場に困る。
彼はベッドに座っている私をじーっと見下ろしているが、特に何も言ってくれない。穴が空くほど見つめ……いや、睨まれてとても気まずい。
私は何か変なのだろうか? この可愛い夜着が似合わないのかな。それとも好みじゃない……?
恋愛小説のヒーローなら初夜の旦那様は『綺麗だよ』とか『素敵だ』とか甘い言葉を言ってくれるのに……と哀しく思った。
彼は無言のまま私の隣に腰掛け、そっと顎に手をかけた。ゆっくりと顔が近付き、ちゅっと触れるだけの口付けをされた。初めて出会った時と変わらず険しい顔なのに、キスは優しいのが意外だ。
しかしそのキスで私はガチガチに緊張し、身体が固まった。その瞬間、私は勢いよくベッドに押し倒された。
「きゃっ……こ、怖い」
私はついそう呟いてしまった。初めて知る男性の力強さに驚いたのだ。その言葉はハッキリと聞こえてしまったようで、エルベルト様は無表情のまま目だけ大きく見開いた。
彼はすぐに私から離れ、ベッドに背を向け立ち上がった。私は自分が口走ったことに青ざめた。
「も、申し訳ありません。あの……初めてのことなので驚いて……しまい……お許しください」
震えた声を隠すことはできず、それでもなんとか声に出した。
「……ゆっくり休め」
そう言って彼はバタンと外に出て行ってしまった。広いベッドに一人取り残され、私は涙が出てきた。
その夜は泣き疲れたまま寝てしまい、翌日パンパンに腫れた瞼の私を見てノエルは一体旦那様と何があったのかと心配していた。そしてベッドの綺麗なままのシーツを見て……むしろ『何もなかった』から泣いていたのだと気付き、抱き締めてくれた。
「困った旦那様ですね。奥様は何も悪くありませんわ」
そう慰めてくれたおかげで、私は心が救われた。旦那様は今朝早く仕事に出掛けたらしく……しかも二日戻らないらしい。彼は新婚なはずなのに休みも取っていないようだ。私は仕事に行く彼を見送ることすら許されなかった。でもこの瞼の腫れた不細工な顔を見られなくて良かったと思った。
そして二日後に帰ってこられた日、私はエルベルト様を出迎えた。
「お仕事お疲れ様でした。お帰りなさいませ。この前は、お見送りができず申し訳ありませんでしたわ」
私は笑顔でニコリと微笑んでみたが、彼は困ったような顔で私を見ていた。
「……帰った。この二日間何も不自由はなかったか?」
「はい。みんな良くしてくださっています」
「……そうか」
それだけで会話が終わってしまった。気まずい。彼は着替えてくると自室に入って行った。
それから、初めて夕食を一緒に食べることになった。ここの土地の料理は美味しいが、とても豪快だ。お野菜もゴロゴロしているし、お肉もお魚もすごく分厚い。
エルベルト様は綺麗な所作であるものの、大きなお口でパクパクと食べ……吸い込まれるようにお皿の料理がなくなっていく。すごい。私は量を減らしてもらっているが、全く追いつかない。
もぐもぐと頑張って食べるが、彼はあっという間に食べ終わりジッと私を見つめている。私は緊張して、食べる手が止まった。
「……君は食べるのが遅いな」
「も、申し訳ありません」
「別に謝らなくていい」
低い声でぶっきらぼうにそう言って、フイッと目線を逸らしたままだが……そのまま席に座ってくれている。もしかして待っててくれてるのかな? でも気まずい。
「あ、あの。エルベルト様はお忙しいと思うので、私のことはお気になさらないでくださいませ」
そう言うと、彼はガタリと立ち上がった。私はその急な動きにビクリと震える。
「先に部屋に戻る」
そう言って彼はリビングを出て行った。はぁ……やっと肩の力が抜ける。一人になると気が楽になり、食事が美味しく感じた。
彼よりだいぶ時間がかかって食べ終えると、苺のデザートが出てきた。わあ、美味しそう。でも……エルベルト様は食べてなかったのに何故?
「旦那様が奥様は甘い物が好きではないかと、料理長にデザートを頼まれたのですよ」
「そうなのですか」
「はい」
食べると口の中に甘さが広がってとても美味しい。エルベルト様が、私を気にかけてくれたことを嬉しく思った。
しかし……それから何日経過しても夜に彼が夫婦の寝室に来ることはなかった。今日こそはあるかもしれないと期待して緊張しながら、可愛い夜着を着るのも虚しくなってきた。
「もう自分の部屋で寝ようかしら」
こんなに毎晩準備をしているのに、触れてもらえないなんて女として哀しすぎる。最初に拒否するようなことを言ったことは私が悪いが……彼は十歳も年上なのだから『怖くないから俺に任せておけ』くらいの台詞言えないものか。
それともエルベルト様には別の女がいるだろうか? だから、こんな子どもの私に触れるつもりがないとか?
私は翌日から夫婦の寝室には近付かず、自室で休むことに決めた。ノエルにそう告げると、すこし哀しそうな顔をしたが『わかりました』と私の部屋のベッドを整えてくれた。
エルベルト様からもそのことについて何も言われなかったので、この人はずっと私が夫婦の寝室で待っていたことすら知らないのかもしれないと腹がたった。
途中の街で何泊もしたが、彼とは別の部屋で……話した会話といえば朝晩の挨拶と『長旅だからしっかり休め』だけだ。私はこれからの夫婦生活が大丈夫なのか不安な気持ちでいっぱいになった。
セルバンテス辺境伯領はとても田舎だが、自然がいっぱいで空気が気持ちが良かった。そしてお屋敷は要塞のように立派で、まるで大きな城だった。華やかさはないが丈夫で強そうだ。
「……すごいです。大きなお家」
私はポカンと口を開いて、城を見上げた。
「田舎だから土地が余ってるだけだ。たいしたことはない」
エルベルト様はそう言って、家の中に入って行った。馬車から降りる時はエスコートをしてくださったが、すぐに手を離された。
「奥様、お待ちしておりました」
使用人の皆さんはとても優しく、私のことを歓迎してくださって嬉しかった。
「初めまして。私はノエルと申します。奥様付きの侍女になりましたので、何なりとお申し付けくださいね」
ニッコリと笑う優しい彼女とはすぐに打ち解けた。エルベルト様の二つ年上で、昔からこの家に仕えているらしい。
本当は我が家からも侍女が付いてくると言ってくれたのだが、遠い辺境の地に連れて行くのはどうしても気が引けて私は一人でここに来ることを決めた。幼い頃から一緒にいた侍女とは泣く泣く別れてきたので、ノエルと仲良くなれて嬉しかった。
「奥様とてもお綺麗です。素敵ですよ」
この家に着いて初めての夜。きっと夫婦としての営みがあるだろうと、体を磨き上げ……可愛い夜着を着て寝室で待っていた。
緊張している私に「大丈夫です。全て旦那様にお任せ下さい」と微笑んでノエルは部屋を出て行った。
ドキドキと胸の鼓動が煩い。結婚した以上、そういう行為をするのは当然だというのはいくら子どもな私でもわかる。
「……俺だ。入ってもいいか?」
――来た! その声に身体が跳ねる程驚いたが、なるべく冷静を取り繕った。
「は、はい」
ガチャリと扉を開けて入ってきたのは、スラックスにガウンを羽織ったエルベルト様だった。鍛えあげられた胸元がチラチラと見えて、目のやり場に困る。
彼はベッドに座っている私をじーっと見下ろしているが、特に何も言ってくれない。穴が空くほど見つめ……いや、睨まれてとても気まずい。
私は何か変なのだろうか? この可愛い夜着が似合わないのかな。それとも好みじゃない……?
恋愛小説のヒーローなら初夜の旦那様は『綺麗だよ』とか『素敵だ』とか甘い言葉を言ってくれるのに……と哀しく思った。
彼は無言のまま私の隣に腰掛け、そっと顎に手をかけた。ゆっくりと顔が近付き、ちゅっと触れるだけの口付けをされた。初めて出会った時と変わらず険しい顔なのに、キスは優しいのが意外だ。
しかしそのキスで私はガチガチに緊張し、身体が固まった。その瞬間、私は勢いよくベッドに押し倒された。
「きゃっ……こ、怖い」
私はついそう呟いてしまった。初めて知る男性の力強さに驚いたのだ。その言葉はハッキリと聞こえてしまったようで、エルベルト様は無表情のまま目だけ大きく見開いた。
彼はすぐに私から離れ、ベッドに背を向け立ち上がった。私は自分が口走ったことに青ざめた。
「も、申し訳ありません。あの……初めてのことなので驚いて……しまい……お許しください」
震えた声を隠すことはできず、それでもなんとか声に出した。
「……ゆっくり休め」
そう言って彼はバタンと外に出て行ってしまった。広いベッドに一人取り残され、私は涙が出てきた。
その夜は泣き疲れたまま寝てしまい、翌日パンパンに腫れた瞼の私を見てノエルは一体旦那様と何があったのかと心配していた。そしてベッドの綺麗なままのシーツを見て……むしろ『何もなかった』から泣いていたのだと気付き、抱き締めてくれた。
「困った旦那様ですね。奥様は何も悪くありませんわ」
そう慰めてくれたおかげで、私は心が救われた。旦那様は今朝早く仕事に出掛けたらしく……しかも二日戻らないらしい。彼は新婚なはずなのに休みも取っていないようだ。私は仕事に行く彼を見送ることすら許されなかった。でもこの瞼の腫れた不細工な顔を見られなくて良かったと思った。
そして二日後に帰ってこられた日、私はエルベルト様を出迎えた。
「お仕事お疲れ様でした。お帰りなさいませ。この前は、お見送りができず申し訳ありませんでしたわ」
私は笑顔でニコリと微笑んでみたが、彼は困ったような顔で私を見ていた。
「……帰った。この二日間何も不自由はなかったか?」
「はい。みんな良くしてくださっています」
「……そうか」
それだけで会話が終わってしまった。気まずい。彼は着替えてくると自室に入って行った。
それから、初めて夕食を一緒に食べることになった。ここの土地の料理は美味しいが、とても豪快だ。お野菜もゴロゴロしているし、お肉もお魚もすごく分厚い。
エルベルト様は綺麗な所作であるものの、大きなお口でパクパクと食べ……吸い込まれるようにお皿の料理がなくなっていく。すごい。私は量を減らしてもらっているが、全く追いつかない。
もぐもぐと頑張って食べるが、彼はあっという間に食べ終わりジッと私を見つめている。私は緊張して、食べる手が止まった。
「……君は食べるのが遅いな」
「も、申し訳ありません」
「別に謝らなくていい」
低い声でぶっきらぼうにそう言って、フイッと目線を逸らしたままだが……そのまま席に座ってくれている。もしかして待っててくれてるのかな? でも気まずい。
「あ、あの。エルベルト様はお忙しいと思うので、私のことはお気になさらないでくださいませ」
そう言うと、彼はガタリと立ち上がった。私はその急な動きにビクリと震える。
「先に部屋に戻る」
そう言って彼はリビングを出て行った。はぁ……やっと肩の力が抜ける。一人になると気が楽になり、食事が美味しく感じた。
彼よりだいぶ時間がかかって食べ終えると、苺のデザートが出てきた。わあ、美味しそう。でも……エルベルト様は食べてなかったのに何故?
「旦那様が奥様は甘い物が好きではないかと、料理長にデザートを頼まれたのですよ」
「そうなのですか」
「はい」
食べると口の中に甘さが広がってとても美味しい。エルベルト様が、私を気にかけてくれたことを嬉しく思った。
しかし……それから何日経過しても夜に彼が夫婦の寝室に来ることはなかった。今日こそはあるかもしれないと期待して緊張しながら、可愛い夜着を着るのも虚しくなってきた。
「もう自分の部屋で寝ようかしら」
こんなに毎晩準備をしているのに、触れてもらえないなんて女として哀しすぎる。最初に拒否するようなことを言ったことは私が悪いが……彼は十歳も年上なのだから『怖くないから俺に任せておけ』くらいの台詞言えないものか。
それともエルベルト様には別の女がいるだろうか? だから、こんな子どもの私に触れるつもりがないとか?
私は翌日から夫婦の寝室には近付かず、自室で休むことに決めた。ノエルにそう告げると、すこし哀しそうな顔をしたが『わかりました』と私の部屋のベッドを整えてくれた。
エルベルト様からもそのことについて何も言われなかったので、この人はずっと私が夫婦の寝室で待っていたことすら知らないのかもしれないと腹がたった。
143
あなたにおすすめの小説
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
初恋をこじらせた騎士軍師は、愛妻を偏愛する ~有能な頭脳が愛妻には働きません!~
如月あこ
恋愛
宮廷使用人のメリアは男好きのする体型のせいで、日頃から貴族男性に絡まれることが多く、自分の身体を嫌っていた。
ある夜、悪辣で有名な貴族の男に王城の庭園へ追い込まれて、絶体絶命のピンチに陥る。
懸命に守ってきた純潔がついに散らされてしまう! と、恐怖に駆られるメリアを助けたのは『騎士軍師』という特別な階級を与えられている、策士として有名な男ゲオルグだった。
メリアはゲオルグの提案で、大切な人たちを守るために、彼と契約結婚をすることになるが――。
騎士軍師(40歳)×宮廷使用人(22歳)
ひたすら不器用で素直な二人の、両片想いむずむずストーリー。
※ヒロインは、むちっとした体型(太っているわけではないが、本人は太っていると思い込んでいる)
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~
藤 ゆみ子
恋愛
グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。
それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。
二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。
けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。
親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。
だが、それはティアの大きな勘違いだった。
シオンは、ティアを溺愛していた。
溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。
そしてシオンもまた、勘違いをしていた。
ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。
絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。
紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。
そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる