ランドマーク ~そこに君がいてくれるから~

志生帆 海

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第2章

ただ会いたくて 3

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 握手を交わした。
 互いの手を差し出しギュッと握りしめ、更に空いている手も上に重ねた。
 しっかり繋がっている……
 また君と繋がれたね。

 握手は親愛や喜びの気持ちを共有する手段で、仲直りの意味もある。
 出会いの握手は2人の距離を一気に縮めてくれ、君の心に触れることが出来た。

 そうか……君と僕には、こういうスタイルもあったのか。
 目と目が合い、自然に微笑み合う。
 青空を映した優しい碧い瞳に、僕も吸い込まれそうだ。

「久しぶりだね、元気だった?」
「うん、君も元気だった?」
「あぁ、また会えて嬉しいよ」
「僕も」

 これ以上過去を、あの日を振り返っても、何も生まれない。
 だからもうやめよう、前を向こう。
 お互いに、会えなかった数か月には触れなかった。

「レモネード、飲んで」
「ん……冷たくて美味しいね」
「しかし今日は暑いな。もう夏も終わるのに」
「本当に汗が流れるね」
「さぁ俺達も芝生に行こう!」
「うん!」

 初めて過ごしたロンドンの夏は、あの長い曇天の季節が嘘かと思う程、快晴で湿度が低く風が気持ち良かった。
 今日もまさにそんな夏空だ。

 さっきから眺めていた芝生ではカップルや友達同士、家族……皆、思い思いの休日を自由に過ごしており、そこに僕たちも加わる。

 もう夏も終わるというのに、最後にこんなにも夏らしい時間を君と過ごせるなんて、嬉しいよ。
 芝生に座ると、君はリュックから紙の包みをガサゴソと出した。

「これ食べてみて」
「……?」
「Hot Salt Beef Bagleさ」
「へぇ初めて食べるよ」
 
 塩漬けの厚切りビーフが、少し甘いベーグルに挟まれていて、とても美味しかった。

「わぁ、すごく美味しいね」
「君に食べてもらいたくてレモネードと一緒に買って来た。実は少し前から、君を見ていたんだ」
「……すぐに話しかけてくれたらよかったのに」
「それが、なぜかもったいなくて……君の姿……『額縁』に収めたい気分だった。その一方でこんなの買いに行っている間にいなくなったらどうしようって気が気じゃなかったのが本音さ」

 君の様子を想像すると、なんだか照れ臭くなった。
 僕はその時、どんな顔をしていたのか。

「……僕は日没まで、あのベンチに座っているつもりだった」
「……もしかして……俺を待っていてくれた?」
「……うん、また会いたいなって思っていた」
「嬉しいよ! 本当に」

 もし君とまた会えたら、今度はもっと素直になろうと誓っていた。
 君はさっきからくすぐったそうに、空を見上げたり鼻をこすったり、落ち着かない。
 いや、落ち着かないのは、僕も一緒だ。
 君と再会できたことが信じられなくて、まだ夢を見ているようだ。

「全然日焼けしてないね」
「君も」
「あー 俺は……昨日まで湖水地方の親戚の家に行っていて……夏休み中、勉強に集中していた」

 そうか、やはりロンドンにいなかったんだね。それで納得だ。

「……そうなんだね。僕は日焼けすると赤くなって酷くなるから」
「だから長袖のリネンシャツなんだな。でも今日は流石に暑くないか」
「……暑い」

 男のくせに白い柔らかい肌で、日焼けすると真っ赤になってヒリヒリしてしまう。
 泣くと赤くなる目と一緒だ。

「あー 俺は日焼けしたいな。こんな真っ白な肌で新学期を迎えたくないよ」
「ん?」
「よし! 今日は焼くぞ!」
「えっ!」

 突然、着ていたTシャツを勢いよく脱ぎ上半身裸になったので、目のやり場に困った。
 僕……男なのに同性の君にドキドキし過ぎだ! 
 そう思うのに君のたくましい上半身を見たら、ますます赤面してしまった。

「ん? こっちじゃ公園で脱いで日焼けって、普通だぜ」
「そ、そうみたいだね」

 確かに芝生の上で脱いでいるのは、君だけじゃない。
 あっちの女性なんて水着を着て芝生に横たわっているし、向こうの男の人は海パン姿!

「あー水着を着てくればよかったな」
 
 逞しい胸板だ。
 海里もだけど、男らしい体つきが羨ましい。

「……なぁ、君も脱ぐ?」
「えぇ──!」

 過剰に反応し過ぎた。
 僕っ……
 でもそういう君だって、顔を真っ赤にしている!


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