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発展編

幸せを呼ぶ 25

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 キスをした……

 キスをし続けた。

 宗吾さんと、今までこんなに長いキスをしたことがあっただろうか。
 僕の躰……宗吾さんからの口づけだけで、もう溶けてしまいそうになっている。

 さっきから下腹部に明らかにお互いの高まったモノがあたっているのを感じている。こんな……どうにもならない、どうしようもない状況下で、僕たちは構わずにキスをし続けた。

 好き、好き……好きな気持ちが、まるで風船のようにどんどん膨らんでいくようだ。

「瑞樹……可愛いよ、君が好き過ぎて、どうにかなりそうだよ」

 宗吾さんが苦し気に小声で……愛を囁いてくれる。僕も同じ気持ちだから、素直に受け止め、素直な気持ちを伝えるだけ。

 もう……難しく考えなくていい。

 この人との恋は──素直に、風に吹かれるように自由に心の赴くままに進めばいい。
 
「僕もです」
「俺たちゴールまで、もうあと一歩だな」
「はい、すぐそこです。もう……見えていますね」
「あぁその通りだ。俺の家に来たら、毎晩、寝かさないよ」
「……はい」

 もう最後まで抱かれる覚悟は出来ている。僕の方だって、あなたに抱かれたくて……溜まらなくなっているのだから。

 何だか……まるで結婚までの『純潔』を守るみたいだ、こんなの。

 今まで散々一馬に抱かれてきた癖に……この一年という月日が、アイツの名残りを綺麗に消し去ったのを感じていた。

 宗吾さんと知り合った当初……最初は正直まだ忘れられなかった。結婚式の朝まで僕を抱いてくれた一馬のことを、すぐには忘れられなかった。でも宗吾さんを知れば知るほど、彼と歩めば歩む程、一緒に困難を乗り越えれば乗り越える程、僕が宗吾さんを好きになった。

 疼く── 

 宗吾さんが欲しくて、下腹部がズキッ疼くのを必死に呑み込んだ。

「もう少しだけ待ってください。あれから1年は……もう間もなくです」
「分かっている。俺は大丈夫だよ。でも……瑞樹のここ切なげだな。どうする?」

 宗吾さんの手が下腹部を這い、パジャマ越しにそこを擦ってくるので羞恥に震えてしまう。

「んっん……駄目ですっ、流石にそこは……自分でなんとかします」
「それは駄目だ。瑞樹にそんなことさせられない。とても辛そうだ」
「宗吾さんだって辛いのに」
「ははっ! 俺はかなり忍耐力がついた。この1年間、こんなに欲情を我慢したことはない」

 宗吾さんの声が思いのほか大きくて、我に返ってしまった。

「しっ静かに! ふたりが起きたらどうするんでか」
「もう真夜中だろ。あれから物音ひとつしないし、今頃ぐっすり眠っているだろう」
「でっでも──」

 確かに僕たちは長い間キスをし続けたので、この部屋にこもってから随分時間が経っていた。耳を澄ましてみるが物音ひとつしない。

「んっ……」
「大丈夫さ、君が静かに出来るならね。ほら手で押さえて」
「……はい」

 宗吾さんが僕の手を持って、自らの口をふさぐように促してくる。

 隣の部屋に他人がいるという背徳感なのか。不謹慎なことをしていると理解しているのに、何だか興奮してしまう。
 
 宗吾さんが僕のパジャマのズボンをそっと下ろす。静かに、慎重に……

 そのまま僕の股間に顔を埋められて、ドキッ心拍数が上がった!

 彼の温かい舌先が近づいて、熱い息がかかることにより、期待が高まっていくのを躰全体で過敏に感じていた。

「うっ……」

 必死に口元を押さえ、声を押さえる。

 ピチャ……






 ガチャガチャ──

 その時……それまでの静寂が突然破られてしまった。

 まさかまさか! ドアノブを回す音だ!

 このタイミングで?

 ガチャ──ガチャガチャ……

 まっまずい!!
 
 慌てて押し倒されていたシングルベッドから飛び起きたら、宗吾さんがバランスを崩して落下してしまった!

 どっどうしよう!

 頭の中が真っ白になる。

 ドスンっと落下音で、菅野をますます心配させてしまったようだ。

「おいっ葉山! 大丈夫か」
「……なっ何……えっ起きたの? いっ、いつから」
「おー、ちょっといいか。ここ開けてくれよ」
「わっ……わかった!」

 慌ててズボンを引き上げて、ヨロヨロとドアに行こうと思ったら、宗吾さんに毛布をバサッとかけられた。

(瑞樹っマズイ! それで隠せ! )

 小声でアドバイス……

 こぶりとはいえ明らかに高まっているモノ……同期には絶対に見られたくない!

 ふぅーっと深く深呼吸をしてからドアをそっと開け、顔だけそっとのぞかせた。

「な、なに? どうした?」

 今、このタイミングで至近距離で菅野に顔を見られるのは猛烈に恥ずかしい。

 今の僕の顔、どうなっている?

 キスを受け続けた唇は、濡れていないか。
 散々宗吾さんに撫でられ、指で遊ばれた髪は不自然に乱れてないか。

 足元だけは、絶対に見るなよ!

 菅野と話ながら、どんどん顔が真っ赤になってしまう!

 もう涙目だ!




















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