【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん

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社会人編

6 四面楚歌……

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掠れた声でそう叫んだが、翔は俺の頭を押さえていた手を外して、俺の尻へ手を添えた。
そして────……。


────……ズブッ……。

なんとお尻の穴に指を入れてきたのだ!!

「(&$#$)00)’%$#────っ!!!??」

「……うん、大丈夫か。……へぇ~……柔らかいんだね、源の中って……。────ふ~ん……?」

声にならない悲鳴を上げる俺のお尻の穴に指を出し入れしたり、クニクニと中を探る様に動かす翔に…………俺はキレた。

「止めろってばっ!!ばっかやろう!!」

「────!?」

渾身の力で翔の腕から脱出すると、そのまま破られた服をかき集め、お風呂場から逃げる。
そしてそのまま服を着て、ドアまで猛ダッシュだ。

「────源!」

翔が後ろで叫んでいたが、俺は振り向くことなくそのまま大激怒して外に出た。
そしてエレベーターに乗り込み、驚くコンセルジュの視線を受けながら実家へ向かう。
夜の風が少し冷たいが、それよりもとにかく翔と離れたくて仕方がなかったため、全力ダッシュした。


「なんなんだよ、なんなんだよ、なんなんだよ、アイツ~!」

頭の中には翔に対する怒りと不満が一杯だ。
そもそも、なんで俺は社会人になったっていうのに、まだ翔とルームシェアとかしてんの?!
怒りと不満は今までボンヤリと霧がかかった様な頭をスッキリとさせ、今の状況がおかしい!とうるさいくらいに警告を鳴らす。


「タワマン貰ったからそこに引っ越そうね。」

ちなみに、学校を卒業して直ぐに言われたのはコレ。
俺が「はぁ?」と冗談だと思っている間に、荷造りが終わっていて……なんと、次の日にはタワマンが住処になっていたのだ。
これだって他人から聞いた話なら、『いや、意味わからん。』と返すと思う。
でもいざ自分に起きると、こんなにもあんぽんたんになるとは思わなかった。


「……とりあえず、少しの間実家に住まわせてもらって、直ぐに物件探す。それで翔とはそれっきりだ!
あんな要介護者みたいな生活とはおさらばしてやる。」


人生の中で何度目かになる決意をし……その日は実家に帰り、そのまま寝た。
そして翌日────……。

「────今日は会社が休みで良かった……。」

朝の八時にモソッ……と起き出し、台所へ向かうと、母と姉が呆れた顔で俺の事を睨む。

「アンタは全く~……。昨日突然帰ってきて、理由も言わずに直ぐ寝ちゃうんだから!
なんで急に帰ってきたのよ。いい年して~。」

「しかもなんであんな服がビリビリだったの?────あ、酔っ払いと喧嘩でもしたんでしょ~。ばっかじゃな~い?」

「お前らなぁ~……。」

散々貶してくる二人にムカッ!としながら、理由を話そうとして動きを止める。
自分が怒っている事は、なんとなくピンポイントではないため説明が難しい。
う~ん……?と考え込みながらたどたどしく理由を説明した。

「いや……その……なんか、翔が家事全部してくれるのが嫌……?っていうか……。
車で毎日送り迎えとかも嫌で……??あと、何でも知ってるのも嫌……………????
あ、あと、え~と……あっ!!あと、昨日凄い浣腸してきたんだぜ!あんにゃろう!!」

「「はぁぁぁ~???」」

二人は大きく顔を歪めて怒りだし、そのまま怒涛のごとく怒鳴り散らす。

「あんた!あんないいところに住まわせて貰っている分際で、家事も全部翔君にしてもらっているの?!
母さん、翔君に合わせる顔がないよっ!!このバカ息子!!」

「しかもあんなイケメンに車で送り迎えとか……────はぁ?!アンタ何様!!?完全な寄生虫生活じゃない!!」

ガ──ッ!!!と怒鳴られ、俺は大きく背を逸らして黙った。
違うんだ!と伝えたいのに、どう説明してよいものか困ってしまい、そのままガミガミと説教コースへ突入してしまう。

……これがいつものパターン。
俺が翔に対して違和感を感じると、絶対セットでついてくる周りからの説教だ。
シュン……と凹んで下を向いていると、突然ピンポーン!とインターホンの音が聞こえた。

「は~い!」

母が俺への説教を止め、直ぐに玄関に向かうと「あらあらあら~♡」というご機嫌な声が聞こえて嫌な予感に震える。
そして部屋に入ってきた人物を見て、姉まで目をハートにして黙るのを見て────嫌な予感が当たった事を理解した。

「源、昨日はごめんね?」

翔は申し訳無さそうに眉を下げ、俺に謝る。

「まぁまぁまぁ!!翔君はな~んにも悪くないわ~!ウチのバカ息子が全部悪いのよ~。」

「そうですよ~♡ウチの馬鹿な弟がすみませ~ん♡」

あからさまにキャピキャピと媚びだした二人に、もう絶句!
黙っている間に、翔は手に持っていたお菓子の包みを母と姉に渡した。

「朝からお騒がせして申し訳ありません。良かったら皆さんで食べて下さい。」

「────!!?これって……!銀座で有名な和菓子の老舗店の限定イチゴ大福セット……っ!!
一日販売限定5箱だから、朝から並んでも手に入らないのに……!」

二人は目をキラキラと輝かせて、そのお菓子を見つめている。

もう駄目だ……。
自分の味方は誰もいない事を悟った。

「さ、帰ろう。源。源の大好きなシュークリームも用意したからさ。」

「いや、俺はもう……。」

キッ!と睨みつけて頑なに拒んだが、翔は悲しげに目を伏せて同情を誘う顔をする。

「ごめん。俺は源が仕事をがんばり過ぎているから心配だったんだよ。────ね?仲直りしよう?」

「いや、仲直りとかじゃなくて……。」

母と姉から盛大なブーイングが飛ぶが、俺はハッキリとルームシェアの解消を申し出ようと思ったのだが……。

────チラッ!

翔の胸元からこんにちは!していたのは、一日限定5名だけの超高級焼肉店の予約チケットだった。

「!!?翔、それどうしたんだよ!」

「うん、実はね~運良く予約がとれたんだよね。これから行こうかなって思ったんだけど……。」

チラチラッ!と見え隠れするチケットに俺の目は釘付け!
これもいつもの流されパターンだと理解しなんとか踏ん張るが……これには心がゆっさゆっさと揺さぶられる。

「ぐ……ぐぐぐ~ぅぅぅっ……。」

「一体どんな肉を出してくれるんだろうね?もう一年以上先まで予約が埋まってるって言ってたよ。」

「ううぅぅぅ~……。」

「源が喜んでくれるかなって、頑張って取ったのにな……。」

しおらしく悲しむ翔の様子を見た母と姉は、とうとう俺を家の中から追い出そうとグイグイと背中を押してきた。
必死に踏ん張ったが抵抗虚しく、家からポイッと追い出されてしまい、そのまま崩れ落ちる。

「我が儘も大概にしなさい!こんなに翔君がお前のために色々してくれてるんだから、土下座して受け取るのよ!」

「この平凡地味男!!翔君との友情だけが、アンタの誇れるモノだって理解しろ!ば~か!ば~か!」

二人は般若の顔で俺を怒鳴りつけた後は、翔にニコニコと笑顔を見せて家の扉を閉めてしまった。

四面楚歌……。
あんまりな状況に立ち直れず呆然としていると、翔が悲しげな顔を一変。
怒っている様にも見える無表情に変え、俺を見下ろす。

「────さぁ、帰ろうね。」

「お……俺は……俺は……。」

ブツブツと呟く俺を見て、翔は口元を歪め多分笑顔の様な表情を浮かべてボソッと呟いた。

「本当に凄いな、源は……。側にいるだけでも幸せだと思っていたのに……。────これから変わるね、俺達の関係。」

凹み過ぎててよく聞こえなかったが、とりあえず翔が驚きの発言をしたため、俺はえっ!?と顔を上げる。
すると翔はなんだか嬉しそうな笑顔?をしていたので、もしかして……?と翔の今考えている事を予想した。


『源に悪い事しちゃったから反省しよう。』

『だから今度からは節度ある態度と、普通の幼馴染の距離を心がけるね!』

『ちょっと変な距離感を改めて、俺達は新たな幼馴染関係になるぞ☆』


「────!!そっかそっか~!翔やっと分かってくれたか~。
じゃあ、俺達今日から新たな関係って事でよろしく。」

「 ハハハッ!源、分かってないよね?────フフ……アハハハハハっ!!!
まぁ……いいよ?どうせ逃げられないんだし。
籠の中にちゃんと大人しくいるなら、今まで通り自由をあげる。」

そのまま腹を抱えて笑う翔を見て、少々心配になったが、そのまま腕を引っ張られて車に無理やり乗せられると、またシートベルトまで装着してくれた。
そして自分も運転席に乗ると、そのまま車は走り出す。

「さぁ、お店に行ってお腹一杯食べようね。今日はお祝いだ。」

「う……うう~……。わ、分かった……。肉に罪はないし……こ、今回だけは許す……。でも、もう二度と変な事するなよ!?
ああいう冗談は本当に止めろよ?!」

「??あぁ……もしかしてお尻に指突っ込んだ事?────ん~……分かった。」

翔はキッパリと言ってくれたので、俺は安心して力を抜いた。
するとそんな俺を見て翔は笑ったので、仕方ないかと今回は綺麗にすっぱり許す事にする。

なんてったって、これから俺達は普通の幼馴染!
小さな喧嘩くらいは、こうやって仲直りしないとな!

ニコニコしながら高級肉の事を考えていた俺に、翔は最後にボソッと呟いた。

はやめるから大丈夫だよ。────楽しみだね。」
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