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番外編
シフィルの誕生日 2
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「シフィル、お誕生日おめでとう!」
「カリン、アレッタ……?」
ユスティナと共に城で待っていたのは、親友のふたり。
「ふふ、驚いた? シフィルのお誕生日だもの、一緒にお祝いしましょうとお誘いしたの」
悪戯が成功したかのような表情でユスティナが笑う。嬉しいサプライズに、シフィルは頬を染めて微笑んだ。
「嬉しい! 大好きな人たちにお祝いしてもらえて、幸せだわ」
「ほら、早く座って。可愛いケーキも用意したのよ」
くすくすと笑いながらユスティナがシフィルをテーブルへと誘う。
並べられたたくさんのお菓子は、どれもシフィルが好きなものばかり。中央に並べられたケーキが一際目を惹いて、シフィルは思わず小さく声をあげた。
色鮮やかなたくさんのプチケーキは、クリームや砂糖菓子で花を表現していて、まるで花束のよう。可愛らしいものが大好きなシフィルが目を輝かせるのを見て、ユスティナは満足気にうなずいた。
「さぁ、蝋燭に火をつけて。お願いごとは決めた? 心の中でしっかりと願ってね。口に出してはだめよ」
シフィルが選んだケーキに、細い蝋燭が一本挿される。ゆらめく炎を見つめたあと、シフィルはそっと目を閉じた。
――まわりの皆が、いつまでも幸せでありますように。それから、エルヴィンとこの先もずっと仲良く暮らしていけますように。
ゆっくりと噛み締めるように心の中で祈ったあと、シフィルは目を開けた。優しい表情で見守ってくれる友人と妹の姿を見て、思わず滲んだ涙をぬぐい、シフィルは照れたように笑った。
◇
たくさんお祝いをしたいのだと言ったユスティナは、食事もたっぷりと用意してくれていて、昼食どころか夕食までご馳走になってしまった。
最初こそ王女との会食に気後れした様子を見せていたカリンとアレッタも、あっという間にユスティナと打ち解けて、過激すぎない恋愛話で盛り上がっている。
仕事だとは分かっていても、やっぱりエルヴィンと一緒に過ごせないことに寂しい気持ちはあった。だけど、友人たちと楽しく過ごしているうちに、寂しさを覚える間もなく時間は過ぎていった。
◇
テーブルの上には、シフィル宛のプレゼントがたくさん並んでいる。本の読み聞かせをするユスティナの手伝いをしている関係か、子供たちからの可愛らしいメッセージカードまでもらって、嬉しくてたまらない。
ユスティナからは可愛らしい口紅を、そしてカリンとアレッタからも、それぞれ流行りの化粧品をもらった。
「とっても綺麗な色だし、見た目も可愛い!」
プレゼントを開けたシフィルは、ユスティナのくれた口紅を見てうっとりと目を細めた。容器にもきらきらと輝く石が埋め込まれていたり、花の装飾が施されていたりと、持っているだけでも可愛さにうきうきしてしまう。
それを見たユスティナは、少し頬を赤らめながらシフィルの耳元に唇を寄せた。
「あのね、その口紅はね、思わずキスをしたくなる唇になるんですって」
「えっ……」
ユスティナの口から出るとは思えない言葉に、シフィルは思わず目を瞬く。隣でローシェも驚いたような表情を浮かべている。姉妹の似たような反応に、ユスティナは少し不満そうに唇を尖らせた。
「あ、愛しあうふたりがキスをすることくらい、わたくしだって知ってるわ。キスは大事な愛情表現でしょう。だから、それが少しでもより良いものになればって思って……」
そう言いながらもユスティナの顔はどんどん赤くなっていくから、シフィルはそんな彼女をそっと抱き寄せた。
「ユスティナ様、ありがとう。とっても素敵なプレゼントだわ」
「あの、でもね、どこまで効果があるかは分からないのよ。だってそうでしょう、この口紅をつけた途端に、……その、キスされる、とは思えないもの」
「うん、そうね。でも嬉しいの」
初心なユスティナだけど、彼女なりに色々と考えてくれたのだろう。心を落ち着かせるように大きく深呼吸を繰り返すユスティナを、シフィルは強く抱きしめた。
「それなら、やっぱり私はうちの店の新作をプレゼントすれば良かったかしら」
くすくすと笑うアレッタの言葉に、シフィルは慌てて首を振った。いつも過激な下着をくれる彼女だけど、今回は可愛らしいネイルを贈ってくれた。指が綺麗に見えそうな色も、リボンをモチーフにしたボトルのデザインも、シフィルの好みでとても嬉しかった。
「下着はこれ以上、必要ないわ……」
「えぇー、すんごい過激なのが入荷したのに」
残念だわ、と笑って肩を震わせたアレッタの隣で、今度はカリンが身を乗り出した。
「ねぇシフィル、私のプレゼントも開けてみて」
カリンがくれたのは、手のひらに収まるほどの小さな小瓶。どうやら、香水のようだ。蓋を開けると淡いピンク色をした液体がとぷんと揺れて、甘い香りがふわりと広がる。
「わ、すごくいい香り!」
「その香水はね、夜専用なのよ」
「夜専用?」
「そう。思わず食べたくなるような香り、なんですって。ユスティナ様のプレゼントとあわせて使えば、きっと熱い夜間違いなしね」
「そんなこと……」
シフィルは熱を持った頬を隠すように、うつむいた。
「というわけで、今からシフィルはおめかしするのよ」
「え?」
びしりと指を立てた突然のローシェの宣言に、シフィルは驚いて目を瞬く。
「もうすぐエルヴィンも帰ってくるでしょう。綺麗な姿で出迎えて、びっくりさせたいじゃない」
にっこりと笑ったユスティナが手を叩くと、隣室に控えていたらしい侍女が続々とやってきた。すぐに浴室へ、と命じるユスティナの言葉に、シフィルは慌てて首を振った。
「ま、待ってユスティナ様、そんなことまでしてもらうわけには……」
「わたくしからの、誕生日プレゼントだと思って受け取って? いつも仲良くしてくれるシフィルには、これでも足りないくらいよ」
「でも……」
優しく微笑むユスティナに、シフィルは戸惑いつつ言葉を探す。シフィルの方が、色々と良くしてもらってばかりなのに。
「大好きなシフィルを、可愛く飾り立てることができるなんて、わたくしも楽しくて仕方ないのよ。だから、ね?」
だめ押しのようなユスティナの言葉に、ついにシフィルはうなずいた。少しずつでも、シフィルもユスティナに何かを返していけたらと思いながら。
「ふふふ、シフィルの好きそうないい香りの石鹸も用意しておいたの。あとで感想を聞かせてね」
「ありがとう、ユスティナ様」
嬉しそうに笑ったユスティナは、一度息を吐くとキリッとした表情になり、そばに控える侍女たちを見回す。
「あまり時間がないの。最短で、でもぴかぴかに磨き上げてきて」
ユスティナの指示にうなずいた侍女らに促され、シフィルは立ち上がる。
「戻ってきたら、メイクは任せて!」
笑って手を振ったカリンにうなずいて、シフィルは浴室へと向かった。
「カリン、アレッタ……?」
ユスティナと共に城で待っていたのは、親友のふたり。
「ふふ、驚いた? シフィルのお誕生日だもの、一緒にお祝いしましょうとお誘いしたの」
悪戯が成功したかのような表情でユスティナが笑う。嬉しいサプライズに、シフィルは頬を染めて微笑んだ。
「嬉しい! 大好きな人たちにお祝いしてもらえて、幸せだわ」
「ほら、早く座って。可愛いケーキも用意したのよ」
くすくすと笑いながらユスティナがシフィルをテーブルへと誘う。
並べられたたくさんのお菓子は、どれもシフィルが好きなものばかり。中央に並べられたケーキが一際目を惹いて、シフィルは思わず小さく声をあげた。
色鮮やかなたくさんのプチケーキは、クリームや砂糖菓子で花を表現していて、まるで花束のよう。可愛らしいものが大好きなシフィルが目を輝かせるのを見て、ユスティナは満足気にうなずいた。
「さぁ、蝋燭に火をつけて。お願いごとは決めた? 心の中でしっかりと願ってね。口に出してはだめよ」
シフィルが選んだケーキに、細い蝋燭が一本挿される。ゆらめく炎を見つめたあと、シフィルはそっと目を閉じた。
――まわりの皆が、いつまでも幸せでありますように。それから、エルヴィンとこの先もずっと仲良く暮らしていけますように。
ゆっくりと噛み締めるように心の中で祈ったあと、シフィルは目を開けた。優しい表情で見守ってくれる友人と妹の姿を見て、思わず滲んだ涙をぬぐい、シフィルは照れたように笑った。
◇
たくさんお祝いをしたいのだと言ったユスティナは、食事もたっぷりと用意してくれていて、昼食どころか夕食までご馳走になってしまった。
最初こそ王女との会食に気後れした様子を見せていたカリンとアレッタも、あっという間にユスティナと打ち解けて、過激すぎない恋愛話で盛り上がっている。
仕事だとは分かっていても、やっぱりエルヴィンと一緒に過ごせないことに寂しい気持ちはあった。だけど、友人たちと楽しく過ごしているうちに、寂しさを覚える間もなく時間は過ぎていった。
◇
テーブルの上には、シフィル宛のプレゼントがたくさん並んでいる。本の読み聞かせをするユスティナの手伝いをしている関係か、子供たちからの可愛らしいメッセージカードまでもらって、嬉しくてたまらない。
ユスティナからは可愛らしい口紅を、そしてカリンとアレッタからも、それぞれ流行りの化粧品をもらった。
「とっても綺麗な色だし、見た目も可愛い!」
プレゼントを開けたシフィルは、ユスティナのくれた口紅を見てうっとりと目を細めた。容器にもきらきらと輝く石が埋め込まれていたり、花の装飾が施されていたりと、持っているだけでも可愛さにうきうきしてしまう。
それを見たユスティナは、少し頬を赤らめながらシフィルの耳元に唇を寄せた。
「あのね、その口紅はね、思わずキスをしたくなる唇になるんですって」
「えっ……」
ユスティナの口から出るとは思えない言葉に、シフィルは思わず目を瞬く。隣でローシェも驚いたような表情を浮かべている。姉妹の似たような反応に、ユスティナは少し不満そうに唇を尖らせた。
「あ、愛しあうふたりがキスをすることくらい、わたくしだって知ってるわ。キスは大事な愛情表現でしょう。だから、それが少しでもより良いものになればって思って……」
そう言いながらもユスティナの顔はどんどん赤くなっていくから、シフィルはそんな彼女をそっと抱き寄せた。
「ユスティナ様、ありがとう。とっても素敵なプレゼントだわ」
「あの、でもね、どこまで効果があるかは分からないのよ。だってそうでしょう、この口紅をつけた途端に、……その、キスされる、とは思えないもの」
「うん、そうね。でも嬉しいの」
初心なユスティナだけど、彼女なりに色々と考えてくれたのだろう。心を落ち着かせるように大きく深呼吸を繰り返すユスティナを、シフィルは強く抱きしめた。
「それなら、やっぱり私はうちの店の新作をプレゼントすれば良かったかしら」
くすくすと笑うアレッタの言葉に、シフィルは慌てて首を振った。いつも過激な下着をくれる彼女だけど、今回は可愛らしいネイルを贈ってくれた。指が綺麗に見えそうな色も、リボンをモチーフにしたボトルのデザインも、シフィルの好みでとても嬉しかった。
「下着はこれ以上、必要ないわ……」
「えぇー、すんごい過激なのが入荷したのに」
残念だわ、と笑って肩を震わせたアレッタの隣で、今度はカリンが身を乗り出した。
「ねぇシフィル、私のプレゼントも開けてみて」
カリンがくれたのは、手のひらに収まるほどの小さな小瓶。どうやら、香水のようだ。蓋を開けると淡いピンク色をした液体がとぷんと揺れて、甘い香りがふわりと広がる。
「わ、すごくいい香り!」
「その香水はね、夜専用なのよ」
「夜専用?」
「そう。思わず食べたくなるような香り、なんですって。ユスティナ様のプレゼントとあわせて使えば、きっと熱い夜間違いなしね」
「そんなこと……」
シフィルは熱を持った頬を隠すように、うつむいた。
「というわけで、今からシフィルはおめかしするのよ」
「え?」
びしりと指を立てた突然のローシェの宣言に、シフィルは驚いて目を瞬く。
「もうすぐエルヴィンも帰ってくるでしょう。綺麗な姿で出迎えて、びっくりさせたいじゃない」
にっこりと笑ったユスティナが手を叩くと、隣室に控えていたらしい侍女が続々とやってきた。すぐに浴室へ、と命じるユスティナの言葉に、シフィルは慌てて首を振った。
「ま、待ってユスティナ様、そんなことまでしてもらうわけには……」
「わたくしからの、誕生日プレゼントだと思って受け取って? いつも仲良くしてくれるシフィルには、これでも足りないくらいよ」
「でも……」
優しく微笑むユスティナに、シフィルは戸惑いつつ言葉を探す。シフィルの方が、色々と良くしてもらってばかりなのに。
「大好きなシフィルを、可愛く飾り立てることができるなんて、わたくしも楽しくて仕方ないのよ。だから、ね?」
だめ押しのようなユスティナの言葉に、ついにシフィルはうなずいた。少しずつでも、シフィルもユスティナに何かを返していけたらと思いながら。
「ふふふ、シフィルの好きそうないい香りの石鹸も用意しておいたの。あとで感想を聞かせてね」
「ありがとう、ユスティナ様」
嬉しそうに笑ったユスティナは、一度息を吐くとキリッとした表情になり、そばに控える侍女たちを見回す。
「あまり時間がないの。最短で、でもぴかぴかに磨き上げてきて」
ユスティナの指示にうなずいた侍女らに促され、シフィルは立ち上がる。
「戻ってきたら、メイクは任せて!」
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