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第三十二話 あわや時空の落とし穴に

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 昼間夕子未来と酒田昇を先頭に神社への道を七人が進む。
夕子の後ろには、文芸部の日向黒子、夢乃神姫ゆめのしんき、夢乃真夏、最後尾は、朝霧美夏三日月星乃紫ケイだった。

 傍目から見れば、集団登校のような光景だ。
さすがに七人の大所帯となるとノロノロとした足取りで神社が遠くに感じる。



「昼間先生、神社って遠いのですか?」
酒田が昼間に尋ねた。

「いいえ、近いわよ。酒田さん・・・・・・
ーー 多分、この大所帯の性よ。多分ね」

「そうですか? さっきから同じ道を歩いていませんか?」

「酒田さん、そんなことはないわよ」

「先生、同じ道ですよ」
「ヒメまで、何を言っているのか?」

 真夏が兄の手を引き息を殺している。
「真夏、どうした」
「なんか怖いよ。ヒメ兄」

「霧もないのに、霧の中にいるようにひんやりしているわ」
「星乃先生まで・・・・・・」

「昼間先生、やっぱり変よ」
「日向まで、そう思うのか」

「なんか、向こうから、人が来ますが」
「朝霧先生、人なんか見えませんよ」

「やっぱり、戻りましょうか・・・・・・」
星乃先生が言いかけた時、遠くから呼ばれる。

「星乃先生!」
「あっ、神主さん」

「どうしたんですか」
「時空が歪み、見ていたらみなさんがその中を彷徨さまよっていて驚きました」

 神主は言葉を切り、七人の繋がりを覗く。

「この七人の組み合わせが原因じゃな」
「神主さん、何を言っているのですか?」

「この七人は、全員前世からの繋がりが見える」
神主は躊躇いがちに言って続けた。

「少ない人数の時は気付くことも無かったが、間違いない。
ーー 今日は、帰られた方が安全です。
ーー 私が通りまで送って行くうちに」

 昼間、朝霧、星乃の三人は神主の意見に従うことにした。
酒田昇は意味を理解出来ず混乱している。
日向と夢乃兄妹も同じだった。

 陰陽師の子孫の神主は、七人を書店のある大通りの角まで送った。

「あなた方七人が神社の結界に影響を与え時空がゆがんだ。
ーー その結果、同じ時間を何度も経験することになった。
ーー ここまで、来れば問題ないがちょっと気になることがある」

「神主さん、なんでしょうか?」
「そこの背の高い男性、昼間先生に連絡して私の神社に来てください」

「はあ、僕でしょうか?」
「そう、あなたです」

「今日では」
「今日は無理ですよ。定過ぎる」

「分かりました。昼間先生に相談します」

 神主は、神社へ帰って行った。
 占い部の顧問の星乃先生は、今、起きたことの意味を理解してふるえを覚えた。

「昼間先生、神主さんが来なければ、時空の狭間に落ちていましたよ」
「星乃先生、意味が分からないわ」

「次元間の落とし穴よ。
ーー タイムスリップとか次元スリップとか呼ばれている。アレよ」

「分かったわ。今日は素直に帰るけど、いつか仕切り直しが必要ね」

 昼間先生の意気込みに夢乃兄妹、日向、朝霧、星乃も呆れ顔をしている。

「昼間先生、あなたね、このことの意味が分かっていないわよ。
ーー 戻れなくなるリスクがあるのよ」
「朝霧先生、今日は厳しいわね」

「そりゃあ、そうよ。タイムスリップなんて冗談じゃないわよ。
ーー 考えるだけでも鳥肌が立つわ」

「朝霧先生、星乃先生、酒田さん、生徒諸君、今日は、お茶だけして解散にしましょう」
「昼間先生、僕は、用事を思い出したので失礼します」

「分かったわ、酒田さん、今度、連絡をくださいね」



 残った六人は、昼間先生のおごりでカフェに通じるエスカレーターに乗る。

 昼間夕子、星乃紫、朝霧美夏の三人は同じことを考えていた。
「原因は、あいつね」
星乃と朝霧がうなずく。

「昼間先生、なんのことですか」
「日向、気にしなくていい」

「日向さん、目に見えない世界には、鍵が掛かっていて普段は開かないのよ。
ーー でもね、なんらかのきっかけや偶然が重なると開いてしまうのよ」
「星乃先生の説明、分かりやすい」

「多分、今回は、七人の波動が時空に影響を与えた可能性があるわ」
「星乃先生、その話、今夜のお酒のさかなに合うわね」

「最近の昼間先生は、飲み過ぎシールよ」
「星乃先生、昼間先生って、そんなにお酒を飲むんですか」

「星乃先生、真夏ちゃんが誤解しているわ」
朝霧美夏が、星乃と昼間の間に入り、話題を変えようとした。

「まあ、まあ、お二人とも内輪めはいい加減にして、
ーー オーダーしてください」

「分かったわ。朝霧先生、
ーー 今日もいつものスーパーマーケットね」

 朝霧美夏は大きなため息をき、星乃紫は背伸びをした。

「昼間先生、スーパーでお買い物するんですか?」
日向が言った。

「いやな、美味しい漬物があってな、
ーー ついつい癖になって買ってしまうんだよ。えへへ」
昼間先生は照れながら自分の頭を掻いた」

「先生、漬物って?」
真夏が尋ねる。

「それはなあ、信州の野沢菜よ」

「野沢菜ってお酒に合うと、父が言ってました」
日向が皮肉った。

「もう真夏ちゃんも、日向も先生を尋問する刑事さんみたいね」

「それは、先生の後ろめたさですよ」
「おい、ヒメまで、それはないだろう」

 昼間夕子先生を五人の言葉の包囲網が包み込む。
「先生、四面楚歌ですね」
 星乃紫先生がいうと、朝霧美夏先生が夕子にウインクした。

 夕子は、心の出口を見つけて安堵するが酒田昇が気になった。
今回の騒動に酒田の役割がわからない。

 精霊に聞いてみようと夕子は思ったが返事は無い。

 カフェの窓に真夏の太陽の日差しがギラギラと差し込んでいる。
日没には遠い時間だった。
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