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第五十三話 帝のお子たちと神社のイラスト

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「帝のお子たちの生まれ変わりよ、元気してござりますか」
文芸部に到着した三日月姫が、夢乃兄妹、白石陽子を見て言った。

 三人の生徒は、再び言葉失って三日月姫を見た。
昼間夕子が前世の未来に言った。

「未来、生徒は、まだ自分の置かれた立場を理解していません。
ーー 時の流れの説明が必要です」

「夕子が、そういうなら、なんとかしてみよう」

 未来は、夕子のノートに鉛筆でメモを書いた。

「夕子、この字体ならどうじゃ」

未来の書いた字体を見て夕子は未来に言った。
「未来、これなら、少し分かるわ」

「じゃ、夕子、未来と一緒に、をどうじゃ」

「未来、それは、この副読本の続きですか?」
夕子は、副読本を手に未来に聞いた。

前世の未来が微笑んで夕子の手を握り締めた。



「でも、未来、続編と帝のお子たちが関係する物語なの」
「夕子もお子たちも、絵なら分かるじゃ」

 前世の未来は、夕子に絵本を書かせようとしている。
絵本なら、帝のお子たちも理解できると判断した。

「未来、私、絵本は、書けないわよ」

 副部長の白石陽子が昼間に助け舟を出す。
「昼間先生、私がお手伝いします」

「白石そうか、お前は絵が得意だったな」

「はい、是非、私に」

 白石の熱意に押され未来が白石に言った。
「絵本、お手伝いしてくださるでござりますか」

「はい、是非に」
「白石、じゃよろしくお願いします」
夕子が白石の手を握ると、前世の未来も真似して握っていた。

 前世の未来が、登場人物のメモを書いて白石に渡した。
それは、夕子が次作で考えていた内容に似ている。

未来が夕子に告げる。
「この登場人物は、すべて実在の人物じゃ」
「未来、それじゃ御伽噺おとぎばなしじゃないわ」

「登場人物は実在じゃが、物語は別じゃ」

「なるほど」
夕子は呟き、白石に言った。

「白石さん、今度、私と未来と一緒に付き合ってくれないか」
「先生、何するんですか?」

「絵本の打ち合わせを酒田さんに、お願いに行くわ」



 翌日、未来と昼間夕子と白石陽子は、酒田と編集長の飯塚と次作の打ち合わせをしていた。

「昼間先生、次作は絵本と酒田から聞きましたが・・・・・・」

「飯塚さん、挿絵さしえをここにいる白石陽子さんにお願いしてみようと思うの。
ーー 私が下書きを書いて、未来がまとめて、
ーー 白石に絵を書いてもらうわ」

 飯塚は、腕組みしながら顎を摩っている。
「なるほど、絵で難解な字体のデメリットを回避するということかな」

「編集長、昼間先生もそういう意向と言っています」
酒田は、本人を目の前に代弁している。

「わかった。じゃあ、下書きドラフトが完成したら見せてください。
ーー 協議は、そのあとにしましょう」

 編集の飯塚は、昼間夕子の新しい企画に賛成した。



出版社を出た三人の女性は、酒田のおごりで近くの喫茶店でのどうるおすことになった。

「編集長から接待してくれと頼まれたので、心配ありませんよ」

「酒田さん、私、全然心配していませんから大丈夫よ」
昼間の言葉を聞いた白石が尋ねた。

「昼間先生、出版社と親しいんですか?」
「いやな、親の時代からの古い付き合いの腐れ縁でな・・・・・・」

 夕子は、酒田を見て酒田を促す。

「ねえ、酒田さん」

「昼間先生の言う通りです。
ーー うちと、昼間先生のご家族は古い付き合いですから」

「そうなんだ、よく分からないけど、まあいいわ」

 夕子の脇にいた前世の未来は、素知らぬ顔をしながらチーズケーキを食べていた。

「酒田、三日月姫と妹に、このケーキを食べさせてみたいでござりまする」
酒田は、未来のリクエストを聞くなりウエイターにテイクアウトをお願いした。

「白石さん、これから、どうする」
「先生、私も、夢乃兄妹も最近、東富士見町のマンションに引越しました。
ーー 日向黒子部長と同じマンションでびっくりしています」

 昼間夕子は背中に強い寒気を覚えた。
星乃紫も朝霧美夏も、まだ知らない。

「白石、先生も、日向と同じマンションで、酒田さんも同じマンションだ」

「ええ・・・・・・」
白石も驚きを隠せない。

「そういうことなんで、一緒に帰ろう」
酒田が白石に言った。

「酒田さん、白石さんは、未成年ですからね。
ーー しかも、あなたの前世のお子たちの生まれ変わりよ」

「昼間先生、ミステリー過ぎて頭が混乱しそう」



「白石、これは、前世の契りと関係あるのじゃ」
未来が白石に言った。

 妖精が未来の言葉に反応して呟く。
[未来、ちぎり、未来、契り・・・・・・]

 前世の未来が夕子に言う。
「夕子、妖精がささやいたわ」

「そうね。また聞こえたわね。
ーー ところで、白石さん、
ーー まさか、あなたたちも神社のイラストを持っているの」

「昼間先生、持っています。
ーー 夢乃兄妹も持っていると言ってましたが何か」

「そう、じゃあ、安甲神主さんにおはらいをしてもらいましょう」
「先生、そんなにヤバいことなんですか」

「まだ、分からないわ。
ーー ただ今回の超常現象と関係している方のお部屋には・・・・・・。
ーー あの神社のイラストがあるの」

「じゃあ、先生、夢乃兄妹と私のところもお願いしたいと思います」

「わかったわ。神主さんに、明日、立ちあってもらいましょう」



 夕子は、その場で携帯から神主に連絡を入れた。

「もしもし、昼間夕子ですが、安甲神主さんの携帯ですか」

「ああ、昼間先生、花園舞です。
ーー 神主が携帯を置き忘れて私が出ています」

「花園さん、戻られたら、折り返し連絡をもらえますか」

「昼間先生、安甲神主にお伝えしておきます」
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