テクノブレイクで死んだおっさん、死後の世界で勇者になる

伊藤すくす

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第八章: プレイング・ウィズ・ダークネス

第九話

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「一人って、誰だか分かるか?」
俺は兵士に聞いた。一人にA地区の兵たちがやられるとか、総指揮レベルじゃないとあり得ない。

「今の総指揮はゴンゾウって奴じゃないのか?」

「いえ、現在はサドという大天使が指揮を執っています‥‥‥」
息を切らせながら、その兵士はゴンゾウではない名前を口にした。

「サド‥‥‥」
どこかで聞いたことがあったような名前だな。でも、単身で戦えるくらい強いのか。これはサボンをザバンの所に連れて行けるか怪しくなってきたな。

「分かった。サボン、お前も付いて来てくれ。ここでの戦いを終わらせに行くぞ」

そうだ。誰が相手でも、暴力を使わないで解決出来ないと意味ないんだ。例えそれが、ゴンゾウより強い奴でも。

俺たちは、さっき俺が戻るときに通って来た場所まで来ていた。そこで見た光景は、あまりにも凄惨だった。

俺を通すために、道を作ってくれた兵士たちの身体が、あらゆる場所に横たわっていた。それも、一つにまとまった身体の兵士は一人も居なかった。全員、身体が真っ二つにされていた。

「何だよ、これ‥‥‥」
こんな酷い殺し方をするなんて、サドって奴は、強い上に最低な野郎ってことが分かった。それと、俺が実現させようとしてることを、馬鹿にしそうってのも分かった。

兵たちの、消えかかっている身体を見て、サボンは申し訳なさそうな表情を浮かべた。そしてその顔を見て、今度は俺が申し訳なくなった。俺が介入してなかったら、きっとこんなことは起きなかっただろう。

また胸の辺りがざわざわする‥‥‥

「ハジメ様、あれは」
サボンの視線の先には、大きな砂煙が出来ていた。その中に、一つの人影が見えた。暫くすると、砂煙は収まり、その影の正体が見えた。

長く真っ直ぐに伸びた黒髪に、閉じられた両目。そして無地の黒色の着物衣装。手には身の丈よりも長く黒い剣、それも日本刀を持っていた。

一目見ただけで、コイツが強いことが分かる。一体どうすれば、サドを倒せるだろうか。正直、さっきの殺し方といい、話し合いが通じる相手じゃないだろう。かと言って、諦めるわけにはいかない。

どうしたものか‥‥‥
ビーストを使って、奴の記憶を読むか?

いや、それは返って逆効果かもしれない。サドの記憶を見て、俺の闇が増える可能性だってあるしな。

それじゃあ、戦うしかないのか。サドは明らかに俺たちの方に向かって来ている。このままだと、皆んな殺されてお終いだ。

「勇者はお前か」
俺は白濁の剣を強く握りしめ、戦闘体制に入った。

「勇者はお前かと、聞いているんだ」

え?嘘だろ。

少し離れた場所にいると思っていたサドが、いつの間にか俺の真横にいた。しかも、俺の肩に肘をつき、肘置きみたいにしていた。

このエレメントの感じ。コンスタンティンやゴンゾウとは全く異なる物だ。コイツの闇には、深夜みたいな静けさがある。故に、乱れが無く読みにくい。

サドは何も言わずに、日本刀を上にあげた。このままだと、殺されちまう。

俺は、振りかざした剣をずっと見ていた。動きが早すぎて、太刀筋が見えないかと思いきや、その逆で、スローモーションのように遅かった。

だが、何も出来ることはない。太刀筋は見えているのに自分の身体が動かない。

刀が段々と俺の首元に近付いて来ている。これに全員やられたのか。見えるのに防げない太刀筋。やっぱり強いな、サウス軍は。

でも負ける訳にはいかない。ここで負けたら、何も変わらない。一生この戦争は終わらないような気がする。俺は、こんなとこで死ぬ訳にはいかねえんだ!

キーン!

「ほお、この攻撃を防ぐとは」

何とか死を免れることが出来た。よし、ここからが本番だ。俺は一旦サドから離れた。

「援護を頼む!」
「はい!」

サドの太刀筋を後ろで見ていたサボンと兵士の声が聞こえた。俺が防げたことに驚いている様子だった。

ビーストを創るにしても、その間に殺されそうだ。純粋な戦闘をしても、俺たちで勝てるか分からないし、俺の求める戦闘法とは違う。

一回基礎に戻るべきか。エレメントのみを使った戦闘に。

これは、想像力の勝負になりそうだ。

「二人は左右に回って、アイツに向けて大量の水をかけてくれ。あの刀にも間合いがあるはずだ。だから、出来るだけ遠くから撃ってくれ。それで動きを鈍らせることが出来るだろう」

「ハジメ様は?」

「遅くなった所を、俺が討つ!」
討つと言っても、遠くから攻撃することになるけどな。

「頼んだぞ、二人とも」

俺の言葉を聞くと、二人は左右に分かれていった。サドは左右に居る者達を見ていたが、いつでも殺せるという自負があるのだろうか、動く様子はなかった。

位置についたサボンと兵士は、両手をサドに向けてかざし、水を発射した。サドは、水攻撃に少し呆気にとられているようだった。

これであの早い動きは出来ないだろう。よし、俺の出番だ。

俺はサドの周りに四方系の壁を作った。

「水を入れろ!」
丸で蓋が開いてるサイコロみたいに、水を入れるためにまだ上は開けておいた。

開いている所めがけて、俺も含めた三人は水を上から掛けた。見る見るうちに箱は水でいっぱいになり、サドはその中で何も出来ずに浮かんでいた。良く見てみると、結構シュールな光景だな。

「蓋をする!」
そう言い、さっき作った壁の外周に二枚の壁を作った。念のためだ、壁を三重にしてもサドなら壊しちまうかもしれない。そして、それぞれのサイコロに蓋をした。

中からは、何も聞こえない。この静寂、嫌な予感がする。

「馬鹿げた作戦だ」

俺の予感は的中した。サドは俺の真横に立っていた。

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