【完結】美醜逆転!? ぽっちゃり令嬢のビボー録

酒本 アズサ

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35.淑女の授業

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 翌日、アレクシアは登校中にオーギュストからケーキとクッキーについて絶賛された。
 しかしマクシミリアンが泣きそうになって感激していたと聞いてからは、オーギュストの賛辞は右の耳から左へ何の引っかかりも無く抜けていった。


 そんな上機嫌で受ける家政学の授業、男子生徒は剣術と分かれている。
 アレクシアとしては家政学は家庭教師に習い終わっているので、剣術の授業に参加したいのだが、流石に紅一点で参加するわけにはいかない。


 もしもオーギュストと双子であれば無理を言ってでも剣術の授業に参加して、マクシミリアンの姿を目に焼き付けていただろう。
 今日も平民にもわかるように、基礎の基礎からなので昨日習った仕分け項目のおさらいだ。


「おほほほ、あなた本当に貴族なのかしら? 本当は平民なのではなくて? このような簡単な事もわからないだなんて」


 上の空で授業を受けていると、かんに障る不快な甲高い声が聞こえた。
 声の主の視線を追うと、レティシアに向けられていた。
 レティシアは姉の嫌がらせと容姿のせいで、家庭教師からまともに授業を受けられなかった為、平民よりはマシという程度の知識だったのだ。


 幸いマナーに関してはアレクシアやリリアンとお茶会をしていたので教えてもらったり、素晴らしいお手本が目の前に居たお陰で他の令嬢に見劣りする事はない。
 しかし家政学に関しては「どうせ結婚なんて出来ないんだから学んでも仕方無いでしょう」とののしる姉に教科書を隠され、家庭教師には教科書を失くすなんてやる気がない証拠だと見放されていたのだ。


(あの令嬢ってポンポンヌ侯爵令嬢のとりまきやったはず。せっかくクラス離れて安心しとったのに、意地悪せんと生きてけへん人種ってどこにでもおるな……)


「授業中ですよ、自分が知っているからと他人も知っていると決めつけるのはおやめなさい。邪魔をせず口を閉じているように」


 家政学なだけあって教師も貴族な為、毅然とした態度がとれる。
 学園の教師に貴族が多いのはこういう時に対応できるようにだろう、令嬢は真っ赤な顔で教師を睨みながら座った。


(あ~あ、わざわざ立ち上がってまで要らんこと言うから……。それにしてもこの先生好感持てるわ~)


 シモーヌ・ド・コルデー元伯爵夫人、夫が息子に爵位を譲った後、学園長自らスカウトした程の女傑だと言われている。
 少なくない数の生徒がコルデー先生に尊敬の眼差しを向けていた、問題の令嬢に暴言を浴びせられたのはレティシア1人では無いという事だろう。


 貴族の令嬢も退屈しないように、時々実用的で裏技的な財テクを雑談混じりにポロッと零す時があり、授業が終わる頃には殆どの生徒が真面目に話を聞いていた。


「コルデー先生って素晴らしい先生だわ」


 授業が終わった後、レティシアが頬に手を当ててホゥ、とため息を吐いた。


「確かに昔はその辺の領地と比べてパッとしなかったらしいけれど、コルデー先生が伯爵家に嫁いでからジワジワと領地が潤って、今では豊かな領地をいくつか上げればコルデー伯爵領の名前が出るものね」


 リリアンがウンウンと頷きながら答えた。上位貴族なだけあって、幼い頃からどの領地と仲良くした方が良いかなど叩き込まれているので当たり前のように知識が披露される。
 

「流石リリアン、詳しいのね。コルデー先生ってご結婚なさる前は文官として王宮で働いていたのよね? 今は教師をしているし、自立している女性って憧れるわ。私は結婚できるかどうか怪しいから卒業後は文官を目指すの」


 希望に燃えた目で、レティシアが将来の夢を語った。


「卒業後かぁ……」


 次の授業の準備をしながらアレクシアは呟いた、卒業するまでに恋人がいなければ父親の薦める人と結婚させられるであろう未来がぼんやり見えそうになって頭を振る。


(いやいや、弱気になったらあかん。絶対マクシミリアン様が卒業する迄に恋人になったる! 敵を知り己を知れば百戦危うからずや、まずはお昼にマクシミリアン様の事を少しずつリサーチせな)


 そんな野心を抱きながら午前中の授業を終え、お昼休みに迎えに来たオーギュストの腕をガッチリ捕まえて食堂へ向かった。
 食事はやはり食堂の物が良いという事で、トレイごと中庭に持ち出す許可を職員に貰って3人分運び出す。


 オーギュストに腕を絡めていたお陰か、テオドール王子にもセザールにも声を掛けられなかったので、明日からも食堂から食事を持ち出そうという事になった。
 レティシア達は慣れているオーギュストはともかく、容姿が残念だと有名なマクシミリアンも一緒という事で気を遣うからと食事は別行動する事にした。


(お昼は一緒じゃなくても大体朝食も夕食も一緒に食べる事多いし、お昼くらいは別々でもええやろ。それに私の将来の為にもマクシミリアン様の事を色々知って、私にも興味持ってもらわな!)


 マクシミリアンと自分の2人分のトレイを持ったオーギュストの後ろを歩きながら、アレクシアは気合いを入れ直した。
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