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36.さりげなくチェックしなくちゃ
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「お待たせ、マックス」
「こんにちは、マクシミリアン様」
「こんにちは、アレク……シア嬢……。オーギュ、すまないな、俺の分まで」
最初マクシミリアンは自分が食堂に行くと皆が嫌な思いをすると言って購買に行こうとしていたが、オーギュストがついでに持ってくるからと待っていてもらったのだ。
「ついでだからいいよ、アレクのお勧めで平民用の薄味を持って来たよ」
オーギュストはそう言って四阿のテーブルにトレイを置いた。
「平民用?」
「はい、貴族用のスパイスを大量に使ったものより食べやすくて、比べるとこちらの方が多く食べられるという事で平民用を食べる人が凄く増えていました。お気に召さなければ明日からまた貴族用を持って参りますので」
「そうなのか……、知らなかった……。ありがとう、アレク……シア嬢」
オーギュストの代わりにアレクシアが答えると、マクシミリアンはぎこちなく微笑みを浮かべた。
アレクと呼びたいがもうひと息なのだが愛称でなかなか呼べない。
「うふふ、持って来ているのはオーギュ兄様ですけれど。それよりオーギュ兄様と同じようにアレクと呼んで下さいませ」
「え、あ、その……アレク……と、呼んでいいの……か?」
「はい! 言葉遣いも普段通りでお願いします」
マクシミリアンはアレクシアにどういうスタンスで対応すれば良いかわからず、時々敬語が混ざる話し方をしていたので、少しでも親しくしたいアレクシアはチャンスとばかりにタメ口で話してもらう事をお願いした。
昨日と違い頬張らずとも食べられる食事の為、食事をしつつ会話が出来る。
アレクシアは昨夜寝る前に考えていた質問を少しずつ投げかけた。
「そういえばマクシミリアン様にご兄弟はいらっしゃるのですか?」
「え? ああ……、母親は違うが弟が2人いる……」
マクシミリアンの母親はマクシミリアンが5歳の時に「いくら我が子とはいえ、こんな醜悪な容姿の子供を可愛いとは思えないし連れて歩きたく無い」と出て行ってしまったのだ。
もとより適齢期に結婚ができなくて渋々嫁いできたせいですぐに離婚が成立し、そしてその1年後に父親が再婚した。
「まぁ、弟でしたら一緒に剣術の練習も出来ていいですね」
順調に家族構成から聞き出してニコニコしながら言うが、マクシミリアンの顔色は良くなかった。
「そうだな……、上の弟は今8歳だが既に剣の才能は俺を上回っている本物の天才だ」
「なるほど、だからマクシミリアン様は弟さんに負けないように努力しているから、剣術の授業で常に1位なんですね。きっと弟さんもそんなマクシミリアン様の姿を尊敬していると思います。私達の弟のエミールも、オーギュ兄様みたいに強くなって私を護ってくれるそうですよ?」
チラリとオーギュストに視線を向けて微笑むと、オーギュストは一瞬瞠目してから照れ臭そうに笑った。
「そんな風に言ってくれているのなら益々努力しないとな、そしてエミールと一緒にアレクを護るよ」
「まぁ、ありがとうオーギュ兄様! オーギュ兄様がそうやって自然に努力する姿を見せるからこそ尊敬されるのよ。きっとマクシミリアン様の弟さんも同じではないでしょうか? もし弟の方が才能があるからと言って努力する事をやめてしまっていたら今のマクシミリアン様はなかったと思います。続ける努力が出来る人には私も尊敬の念を抱きますもの、いつも刺繍を途中で投げ出したくなってしまいますから、うふふふ」
実際アレクシアの刺繍の腕は上位貴族の令嬢としては普通だが、決して好きでは無い。
スケジュールとして決められているから渋々こなしているだけなので、止めて良いと言われたらとっくに投げ出していただろう。
「あ……」「お食事中失礼致します。アレク、午後から馬術だから早く寮に戻って着替えて来ないと、間に合わなくなるわよ?」
マクシミリアンが何か言おうとした時、レティシアがアレクシアを呼びに来た。
「あ、そういえばそうだったわね。呼びに来てくれてありがとう、レティ。それではマクシミリアン様、お兄様、申し訳ありませんがこれで失礼しますね」
そう言ってレティシアとアレクシアは食器を片付ける為に食堂へ向かった。
残されたのはガックリと項垂れるマクシミリアンと、それを呆れた目で見るオーギュストだった。
「で? 何を言おうとしてたんだ?」
「できるなら……マックスと呼んで貰おうと思って……、あと、お前と話す時と同じ話し方で話して欲しくて……。ケーキのお礼も言い損ねたし、それとこの平民用の味付けだと多めに食べられそうだから、教えてくれたお礼も言いたかった……、はぁぁ……」
(何より弟と比べたり下手な慰めの言葉を口にせず、俺の努力する姿勢を褒めてくれたお礼を言いたかったな)
大きなため息を吐いてモソモソと食事を続けるマクシミリアン。アレクシアが居る間は緊張で食が進まずまだ半分程残っている。
一方で容姿以外は隙が無いと思っていた親友が次々に見せる新たな面に、苦笑いしながらオーギュストは最後のひと口を口に入れた。
「もぐもぐ……ごくん。私の予想ではそれらを言い終えるのに1週間は掛かるとみた。普段人と関わらないようにしているツケが回って来たと思う事だね」
オーギュストは恨めしげな親友の視線を受け止めながら笑って肩を竦めた。
「こんにちは、マクシミリアン様」
「こんにちは、アレク……シア嬢……。オーギュ、すまないな、俺の分まで」
最初マクシミリアンは自分が食堂に行くと皆が嫌な思いをすると言って購買に行こうとしていたが、オーギュストがついでに持ってくるからと待っていてもらったのだ。
「ついでだからいいよ、アレクのお勧めで平民用の薄味を持って来たよ」
オーギュストはそう言って四阿のテーブルにトレイを置いた。
「平民用?」
「はい、貴族用のスパイスを大量に使ったものより食べやすくて、比べるとこちらの方が多く食べられるという事で平民用を食べる人が凄く増えていました。お気に召さなければ明日からまた貴族用を持って参りますので」
「そうなのか……、知らなかった……。ありがとう、アレク……シア嬢」
オーギュストの代わりにアレクシアが答えると、マクシミリアンはぎこちなく微笑みを浮かべた。
アレクと呼びたいがもうひと息なのだが愛称でなかなか呼べない。
「うふふ、持って来ているのはオーギュ兄様ですけれど。それよりオーギュ兄様と同じようにアレクと呼んで下さいませ」
「え、あ、その……アレク……と、呼んでいいの……か?」
「はい! 言葉遣いも普段通りでお願いします」
マクシミリアンはアレクシアにどういうスタンスで対応すれば良いかわからず、時々敬語が混ざる話し方をしていたので、少しでも親しくしたいアレクシアはチャンスとばかりにタメ口で話してもらう事をお願いした。
昨日と違い頬張らずとも食べられる食事の為、食事をしつつ会話が出来る。
アレクシアは昨夜寝る前に考えていた質問を少しずつ投げかけた。
「そういえばマクシミリアン様にご兄弟はいらっしゃるのですか?」
「え? ああ……、母親は違うが弟が2人いる……」
マクシミリアンの母親はマクシミリアンが5歳の時に「いくら我が子とはいえ、こんな醜悪な容姿の子供を可愛いとは思えないし連れて歩きたく無い」と出て行ってしまったのだ。
もとより適齢期に結婚ができなくて渋々嫁いできたせいですぐに離婚が成立し、そしてその1年後に父親が再婚した。
「まぁ、弟でしたら一緒に剣術の練習も出来ていいですね」
順調に家族構成から聞き出してニコニコしながら言うが、マクシミリアンの顔色は良くなかった。
「そうだな……、上の弟は今8歳だが既に剣の才能は俺を上回っている本物の天才だ」
「なるほど、だからマクシミリアン様は弟さんに負けないように努力しているから、剣術の授業で常に1位なんですね。きっと弟さんもそんなマクシミリアン様の姿を尊敬していると思います。私達の弟のエミールも、オーギュ兄様みたいに強くなって私を護ってくれるそうですよ?」
チラリとオーギュストに視線を向けて微笑むと、オーギュストは一瞬瞠目してから照れ臭そうに笑った。
「そんな風に言ってくれているのなら益々努力しないとな、そしてエミールと一緒にアレクを護るよ」
「まぁ、ありがとうオーギュ兄様! オーギュ兄様がそうやって自然に努力する姿を見せるからこそ尊敬されるのよ。きっとマクシミリアン様の弟さんも同じではないでしょうか? もし弟の方が才能があるからと言って努力する事をやめてしまっていたら今のマクシミリアン様はなかったと思います。続ける努力が出来る人には私も尊敬の念を抱きますもの、いつも刺繍を途中で投げ出したくなってしまいますから、うふふふ」
実際アレクシアの刺繍の腕は上位貴族の令嬢としては普通だが、決して好きでは無い。
スケジュールとして決められているから渋々こなしているだけなので、止めて良いと言われたらとっくに投げ出していただろう。
「あ……」「お食事中失礼致します。アレク、午後から馬術だから早く寮に戻って着替えて来ないと、間に合わなくなるわよ?」
マクシミリアンが何か言おうとした時、レティシアがアレクシアを呼びに来た。
「あ、そういえばそうだったわね。呼びに来てくれてありがとう、レティ。それではマクシミリアン様、お兄様、申し訳ありませんがこれで失礼しますね」
そう言ってレティシアとアレクシアは食器を片付ける為に食堂へ向かった。
残されたのはガックリと項垂れるマクシミリアンと、それを呆れた目で見るオーギュストだった。
「で? 何を言おうとしてたんだ?」
「できるなら……マックスと呼んで貰おうと思って……、あと、お前と話す時と同じ話し方で話して欲しくて……。ケーキのお礼も言い損ねたし、それとこの平民用の味付けだと多めに食べられそうだから、教えてくれたお礼も言いたかった……、はぁぁ……」
(何より弟と比べたり下手な慰めの言葉を口にせず、俺の努力する姿勢を褒めてくれたお礼を言いたかったな)
大きなため息を吐いてモソモソと食事を続けるマクシミリアン。アレクシアが居る間は緊張で食が進まずまだ半分程残っている。
一方で容姿以外は隙が無いと思っていた親友が次々に見せる新たな面に、苦笑いしながらオーギュストは最後のひと口を口に入れた。
「もぐもぐ……ごくん。私の予想ではそれらを言い終えるのに1週間は掛かるとみた。普段人と関わらないようにしているツケが回って来たと思う事だね」
オーギュストは恨めしげな親友の視線を受け止めながら笑って肩を竦めた。
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