【完結】美醜逆転!? ぽっちゃり令嬢のビボー録

酒本 アズサ

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57.卒業パーティ 3

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 緊張のせいか少しひんやりとしたマクシミリアンの唇が離れたと思ったら、啄むように何度もアレクシアの唇に触れる。
 時々瞼や頬、鼻の頭に触れたと思えばまた唇に戻って来る、まさかマクシミリアンがそんな行動に出るとは思わずアレクシアは全身が赤く染まっているんじゃないかと思う程心臓がうるさく騒いだ。


 気が済んだのか、やっとキスの雨が止んでアレクシアはギュッと抱きしめられると、膝から力が抜けてカクンと体勢を崩した。


「アレク!?」


 マクシミリアンは慌てて抱きしめていた腕に力を込めて身体を引き上げて立たせる。


「はぁ、はぁ、あ……、い、息を止めていたから……」


 マクシミリアンに縋り付いて喘ぐように息を整えるアレクシアの姿と、抱きしめている身体の柔らかさに酔いしれる反面、あまりにも可愛い理由に笑いが込み上げてきた。


「くっ、ははは、可愛過ぎるだろう……っ、くくくっ」


「ひ、酷い、だって初めてでどうしたらいいかわからなかったんですもの! もうっ、笑わないで!」


「初めて……」


 アレクシアの言葉に呆然としたように呟くマクシミリアン。


「そうよ、だってマックスが初恋なんです……もの……」


 段々恥ずかしくなって来てマクシミリアンの胸に埋めるように顔を隠す。
 そんなアレクシアを嬉しくて堪らないという笑顔で覗き込もうとしていたら、アレクシアは小さくクシャミをした。


「冷えたか? 中に戻ろう」


 マクシミリアンが肩を抱いてアレクシアを連れて行こうとした時、肩に乗せた手にアレクシアが触れた。


「もう少しだけ……、ここに居たいな。だって戻ったら他の人ともダンスしないといけないでしょ? だったらマックスと2人で過ごしたい……」


 自分を気遣ってくれているマクシミリアンを引き留める事が申し訳ないと思いつつ、おずおずと見上げてお願いした。
 上目遣いで自分と2人きりで居たいというアレクシアに、マクシミリアンは理性を総動員して心を落ち着かせ、上着を脱いでアレクシアの肩に掛ける。


「ありがとうマックス……暖かい……。ふふ、大きくてマックスに抱き締められてるみたいだわ」


 嬉しそうに微笑むアレクシアの姿に、マクシミリアンは自分の理性が音を立てて切れていく気がした。


「アレク、あまり2人きりの時にそういう事を言っちゃいけない。幻滅されるかもしれないけど……、俺はアレクが思う程清廉潔白な紳士じゃないんだ。その、男としての……欲も持ってる訳で……」


「マックス……」


(せやな、マックス16歳やもんな、日本やったら友達同士でAVの貸し借りしとる頃やで、段々育ってきた私の身体に興味出てもしゃーないか。身も心も捧げる気はあるけど貴族令嬢の立場やと許されへんしなぁ……)


「すまない、怖がらせるつもりはないんだ。あまりにもアレクが可愛くて魅力的で……俺の理せ……精神が軟弱なばっかりにアレクの魅力に抗えないというか……」


 マクシミリアンはアレクシアが男の性欲というものを理解した上で許容してくれているなどとは夢にも思っていないが、もしその事を知ったら自分に都合の良い夢でも見ていると思い込むだろう。


 前世の兄とは違い、今世の兄達はアレクシアは純粋で穢れた欲とは程遠いと思っているので、一切そういう知識に触れないように、悟られ無いようにして来た。
 故に前世知識が無ければ「男としての欲って何でしょう?」とマクシミリアンに聞いていただろう。


「……出来るといいな」


「え?」


「早く大人になってマックスと結婚できるといいな……って言ったの。そうしたらマックスが我慢する必要なくなるでしょ?」


 その一言でマクシミリアンの理性は、濡れたヨーヨー釣りの紐並みに脆くなった。
 本の知識としてでしか知らない大人のキスをしようと顔を近づけた時、カチャリとテラスのドアが開く音がしてマクシミリアンは我に返った。


 テラスは薄暗い為、人影として認識できるのの、それが誰かまでは判別できない。
 その為テラスに出て来た人達はアレクシアとマクシミリアンがいると気付く事は無かった。


 まばらに数人の男女がテラスに出てきて某河原の名物の如く、一定の間隔を空けて2人の世界を作り上げている。
 中には先程の自分達よりも激しくイチャつき始めた猛者もいたせいで、マクシミリアンの理性は完全に復活した。


「人が増えてきたし、戻ろうか……」


「そうね……、続きはまた今度……ね?」


 マクシミリアンがキスしようとした事に気付いたアレクシアは、少々残念に思いつつマクシミリアンに微笑みかけた。


(く……っ、さっきそういう事を言っちゃいけないと言ったばかりなのに……! 俺はちゃんと結婚までアレクの純潔を守れるんだろうか……)


 悶々とするマクシミリアンと共に会場に戻ったアレクシアは、肩にマクシミリアンの上着を掛けていたお陰で体調を気遣われてダンスに誘われる事は無かった。
 ただ常に誰かしらの視線を向けられてはいたが。


 そして夜が更けてパーティーはお開きになった、卒業式の夜が明けると卒業生は寮を出て行く。
 もうマクシミリアンやオーギュストと共に昼食を摂る事はないのだと思うと、寂しくてアレクシアの胸が軋んだ。
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