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何も知らない王子殿下②
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ヨハンはコリーナに会う前に、どうしても会いたい人物がいた。今回は選ばれなかったが、自分が望めばどうにでもなる、とヨハンはまだ諦めていなかった。
「まずはエリザベス嬢に会って、互いの愛を確認しなければ。」
運が良ければそこで既成事実すら作れるかもしれない、と下心満載で、意気揚々と公爵家に向かうヨハン。
サプライズと称して、いつもと同じように先触れも出さずに向かったのだが、それがよくなかったのか、エリザベスは不在だった。
「戻ってくるまで待たせて貰おう。」
公爵家の使用人は、ヨハンの訪問に困惑しているようだった。いつもなら優秀な彼女の侍従が相手をしてくれるはずだが今日は姿が見えない。
出されたお茶と菓子を食べ、彼女の帰りを待つが一向に帰ってくる気配はない。そろそろ帰らねばと立ち上がるタイミングで運良く待ち人が帰って来た。
愛らしい笑い声が響いたと思ったら、いつもとは異なる格好の侍従と、エリザベス嬢が恋人のように手を繋いで笑っている。
エリザベス嬢にヨハンの訪れを報告した使用人に、彼女は、嫌そうな顔を見せる。
「また来たの、あの方。先触れもなしに?良い加減にしてほしいわ。」
まあまあ、と侍従に宥められ、ヨハンの前に来る頃には、上手に本音を隠した対応をしている。
ヨハンはさっき見た現実を忘れられずに呆然としていた。
彼女の言うには、彼女は婚約者候補から外れることで、初恋の人と結ばれることができて、嬉しいということだった。
相手は侍従だが、彼はこの度公爵家に婿入りするらしい。エリザベス嬢は、ヨハンの前では見せたことのない柔らかな笑みを浮かべ、侍従を見ていて、いくらヨハンが鈍感でも、その意味は理解できた。碌に話もできないまま、公爵家から出ると、失意のまま、次のご令嬢の家を目指した。
「それならば次は、ライラ嬢だな。彼女なら、男を周りに侍らせたりしないはずだ。彼女はエリザベス嬢のように薄情なこともないだろう。私を諦めるのが早すぎる。これは明らかな不貞だろう。」
エリザベス嬢を選んだのは王家で、そこには彼女の気持ちなんてこれっぽっちも反映されていないのだが、そんなことは最初から知らないヨハンは、女性は皆自分と結婚したいはずだと言う、偏見に満ちていた。
それにより、更なる不幸に見舞われるとは思いもせずに。
ライラ嬢は、王子の婚約者候補に最初からなりたくなかった。その為、候補から外れた後の逃げ足も尋常じゃない速さで行われた。
王子はライラ嬢のいるはずの、公爵家に、先触れを出したが、断られた。
「ライラなる者は、公爵家から除籍した為、おりません。」と、そう言われたのである。
それからも、何人ものご令嬢を訪ねたものの、皆一様に幸せそうで、ヨハンは自分には決められた婚約者しかいないのだと、諦めるしかなかった。
「まずはエリザベス嬢に会って、互いの愛を確認しなければ。」
運が良ければそこで既成事実すら作れるかもしれない、と下心満載で、意気揚々と公爵家に向かうヨハン。
サプライズと称して、いつもと同じように先触れも出さずに向かったのだが、それがよくなかったのか、エリザベスは不在だった。
「戻ってくるまで待たせて貰おう。」
公爵家の使用人は、ヨハンの訪問に困惑しているようだった。いつもなら優秀な彼女の侍従が相手をしてくれるはずだが今日は姿が見えない。
出されたお茶と菓子を食べ、彼女の帰りを待つが一向に帰ってくる気配はない。そろそろ帰らねばと立ち上がるタイミングで運良く待ち人が帰って来た。
愛らしい笑い声が響いたと思ったら、いつもとは異なる格好の侍従と、エリザベス嬢が恋人のように手を繋いで笑っている。
エリザベス嬢にヨハンの訪れを報告した使用人に、彼女は、嫌そうな顔を見せる。
「また来たの、あの方。先触れもなしに?良い加減にしてほしいわ。」
まあまあ、と侍従に宥められ、ヨハンの前に来る頃には、上手に本音を隠した対応をしている。
ヨハンはさっき見た現実を忘れられずに呆然としていた。
彼女の言うには、彼女は婚約者候補から外れることで、初恋の人と結ばれることができて、嬉しいということだった。
相手は侍従だが、彼はこの度公爵家に婿入りするらしい。エリザベス嬢は、ヨハンの前では見せたことのない柔らかな笑みを浮かべ、侍従を見ていて、いくらヨハンが鈍感でも、その意味は理解できた。碌に話もできないまま、公爵家から出ると、失意のまま、次のご令嬢の家を目指した。
「それならば次は、ライラ嬢だな。彼女なら、男を周りに侍らせたりしないはずだ。彼女はエリザベス嬢のように薄情なこともないだろう。私を諦めるのが早すぎる。これは明らかな不貞だろう。」
エリザベス嬢を選んだのは王家で、そこには彼女の気持ちなんてこれっぽっちも反映されていないのだが、そんなことは最初から知らないヨハンは、女性は皆自分と結婚したいはずだと言う、偏見に満ちていた。
それにより、更なる不幸に見舞われるとは思いもせずに。
ライラ嬢は、王子の婚約者候補に最初からなりたくなかった。その為、候補から外れた後の逃げ足も尋常じゃない速さで行われた。
王子はライラ嬢のいるはずの、公爵家に、先触れを出したが、断られた。
「ライラなる者は、公爵家から除籍した為、おりません。」と、そう言われたのである。
それからも、何人ものご令嬢を訪ねたものの、皆一様に幸せそうで、ヨハンは自分には決められた婚約者しかいないのだと、諦めるしかなかった。
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