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クエスト

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魔王と勇者によるクエストは年一回ある非常に面倒なイベントだ。要は勇者がちゃんと仕事をしてますよ、と全国民に伝えるもので、あまり意味をなしていない。魔王がそもそも悪さをしていない昨今、特に皆気にしていないのだが、伝統なので、毎年行われている。結果は、決まり次第、大々的に国中に知らされる。

年一回、イベントをこなすことで、勇者は勝っても負けても褒賞を受けることができる。勝ったらお金と副賞。負けたら副賞のみ。ここ最近、負け続きで、お金がキャリーオーバーされ、凄い金額に膨れあがっている。

姫は、最初は文字通りどこかの姫だったが、魔王自身が高飛車な姫を嫌い、その時々の手頃な女をかけて、戦うように様変わりしていった。

いつの時だったか、せっかく魔王が勝ったのに、姫のわがままが酷すぎて送り返されたこともあった。

だからいつも、クエストの報告書の姫の欄と、結果の欄は空白で、書込み式だった。

去年も魔王が勝った。勝って手に入れた姫役は魔王城で働く侍女となり、結果的に魔王が養っている。

だから魔王城の使用人は女性が多い。

クエストの報告書は、国に提出するため、嘘はつけない。法的拘束力もある。




魔王の元へ勇者から手紙が届いた。めんどくさいな、と魔王は思ったがとりあえず読んでみる。

どうせクエストのことだろう。今はリスに構っていて、そんな時間はないので断わろうと思っていた。

勇者からは提案が書かれていた。
どうやらこの前起きたことをクエストとして処理したいとのことだった。

勇者が魔王に戦いを申し込み、魔王の下僕にやられ、姫を助けられなかったと言うクエストにしてくれ、と言うのだ。

現実は、まあ、その通りだった。
勇者が魔王に会いにきたものの門前払いで、ピアに追いかけられ、倒れ、敗れた。


姫をどうするか。
ま、リスでいっか。

結末を考えて、侍女にしようと思ったがやめた。

妻にすれば良いのでは?

悪役ぽいし、法的拘束力が働くからリスが嫌がっても逃げられない。
強引だが、良い考えだと思う。

横暴で良いのだ。だって魔王だから。

リスの同意を取り付けないまま、魔王は記載する。

もし怒られたら、来年の戦いで、勇者に勝ってお菓子を何年分かもらえばよい。
新作のお菓子も作って食わせてやろう。

こうして、クエストは成り立つのだった。








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