悪役令嬢を召喚したら、可愛すぎて色々無理

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第三章 巻き込まれる

土下座

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現代日本における最大限の謝罪の意を表現した綺麗な土下座を、アンネちゃんのお兄さんの前で晒している。

いや、もう、怖すぎる。

アンネちゃんと二人でゆっくり話せるように、と用意された部屋でアンネちゃんを暫く待たせてお兄さんの元に有無を言わさず、連れてこられ、扉を開けた瞬間から、殺気が絶え間なくお兄さんから発せられている。

殺気なんて、そうそう味わえないものだが、ありがたくも何ともない。

アンネちゃん曰く、妹に何の興味もなく、疎遠な兄……って、誰が?

他にも兄がいるのだろうか。妹に無関心ではないよね。どちらかと言えば、シスコンの極みみたいな兄だ。同じ兄として、俺はここまでではない、と思うが。

「それで、君はリーゼのことをどう思っているんだ。」

え、これ、どう答えるのが正解?

「素敵なお嬢様だと、思っております。こちらの手違いで、アンネちゃ…アンネリーゼ様には、不自由な生活を強いてしまい、申し訳ございませんでした。

アンネちゃ、アンネリーゼ様は、素直で可愛らしい方で、優しくて、負けず嫌いで好奇心旺盛で、賢くて、我慢強くて、正直助けてもらうことばかりでした。

私はまだ未熟で、微力ですが、アンネちゃんの幸せの為でしたら、何だって致します。私と妹をアンネちゃんは助けて幸せにしてくれたので。」

何か、よくわからん文章になってしまった気がする。恥ずかしさに顔が赤くなる。

お兄さんは、満足したのか、頷いていたが、また目に力を入れて、こちらを睨みつけた。

「リーゼが可愛いのは当たり前だ。うちのお姫様だからな。私が聞きたいのは一つだけだ。君は、あの王子よりも、リーゼを幸せにすることができるのか?」

王子と言うパワーワードに怯んだのは事実。あんな可愛い女の子に婚約者が居ることは最初に聞いていたし、覚悟していた。

だけど、わかっていたのに、好きになってしまった。アンネちゃんが望むなら、王子に彼女を預けて幸せになるのを見守りたかった。それが、自分の役回りだと思ったからだ。彼女が幸せになるなら、相手は自分でなくても良いと思っていたのに、アンネちゃんが、王子の元に戻りたくない、と言った時に、誰よりも喜んだのは自分だ。

あれだけ、アンネちゃんの家族に謝罪を、と言っていたのも後手になってしまった。

矛盾ばかりだ。

俺は、アンネちゃんと幸せになりたいんだ。それを思っているだけではなくて、表に出さないといけない。

姿勢を正し、お兄さんを見上げると、私は畏れ多くも口にしてしまった。実現ができるかわからない未来を。

それでもお兄さんは満足した顔をした。

「後はちゃんと、リーゼに言いなさい。君の気持ちは、わかった。私は妹の幸せの為、力になると約束しよう。」

話のわかるお兄さんで良かった。

「出来なかったら、わかってるよね?」

笑顔が怖いです。お兄様。
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