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元王女はやり返される
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王族に身体的な兆候が出始めた原因には、一つに近親間で婚姻を繰り返したと言うことが挙げられる。
元より閉鎖的な国であったことと、出国した人間が外の世界の美しさに魅入られて帰って来なかったことから、近親間でしか相手がいなかったというのもある。
痣だけではなく、わかりやすい奇形に生まれた者も多くいて、仕方なしに魅力的な容姿を誇る王族の一部が外の血を求め出国していった。
以前は痣には彼らの出自を認めるだけでなく、互いにどこにいるかがわかったこともあったというが定かではない。
エリーヌに成り変わった元王女は元の自分の名前を思い出せなかった。フィーヌとかそんな読み方が入っていたような気がしたり、あれは侍女の方だったかのような気がしたり。何故こんな古い昔のことをわざわざ思い出しているかと言うと、今自分がまさに死にそうだから、の一言に尽きる。
トラヴィスを始末した、と思った彼女の目の前にはカリナとトラヴィスに見えるわが子ではなく、正真正銘本物のトラヴィスとカリナがそこにいた。
確かに住処に戻った彼を仲間は刺した筈で……
「貴女が殺したのは本当にトラヴィスだった?貴女、見間違えたんじゃないの?実の息子と彼を。実の息子に会ったのは随分前だと聞いているわ。成長した彼とトラヴィスは似てるんでしょう?」
カリナは此方が嫌がることを理解している。本当に嫌な女だ。
「あの子が死んだなんて、嘘よ。嘘。あの子は幸せになる為に、祖国へ帰したのよ。こんなところで死ぬなんて、私が何のために……」
カリナはしれっと自己弁護を始める夫人に気持ち悪さを感じる。
「貴女は息子の為とか言うけれど、彼はそうじゃないって気づいていたわよ。あの人は嘘ばかりつくからって。」
「あの子がそんなこと言うわけがないわ。だって私と夫の子なのよ。夫の愚弟とは質が違うの。息子は感謝しているわ。私が彼をどんなに大切に思っていると思うの。」
「なら貴女、自分が息子につけた名前は何だか覚えている?アランやトラヴィスではなくて、ちゃんとした彼だけの名前。」
元王女は沈黙した。思い出せなかった訳ではなくて、全く覚えがなかった。
「ディーン、よ。」
「それは貴女ではなくて、彼が引き取られた夫婦がつけてくれた名前よ。彼は名前がなかったの。貴女は最初から、彼に痣が見つかったその日から、貴女の正体を脅かすものとして、息子を祖国へ送ると決めていた。ご丁寧に別の遺体まで用意して。名もない赤子として、捨てられた彼を祖国で面倒を見たのは貴女が陥れ切り捨てた侍女の異父妹よ。
捨てた後は手紙や連絡も一切なかったと聞いたわ。だって捨てたのですものね。それが彼の為ですって?笑うわ。貴女頭がおかしいって自覚ないの?」
元王女は自分の所為ではない、と喚いた。カリナやトラヴィスが嵌めたのだから、自分の所為ではない、と喚き続けた。
「彼は自ら此方に協力すると言ってくれたの。今更母親面する、母を騙る女をやっつけたい、と言って。捨てられた彼は勿論、貴女のような毒の英才教育は受けていないから、結果はお察しの通りよ。即死出来たことがまだ救いかも知れないわ。貴女の指示で彼を殺害した男は、一生後悔するでしょうけれど。」
元より閉鎖的な国であったことと、出国した人間が外の世界の美しさに魅入られて帰って来なかったことから、近親間でしか相手がいなかったというのもある。
痣だけではなく、わかりやすい奇形に生まれた者も多くいて、仕方なしに魅力的な容姿を誇る王族の一部が外の血を求め出国していった。
以前は痣には彼らの出自を認めるだけでなく、互いにどこにいるかがわかったこともあったというが定かではない。
エリーヌに成り変わった元王女は元の自分の名前を思い出せなかった。フィーヌとかそんな読み方が入っていたような気がしたり、あれは侍女の方だったかのような気がしたり。何故こんな古い昔のことをわざわざ思い出しているかと言うと、今自分がまさに死にそうだから、の一言に尽きる。
トラヴィスを始末した、と思った彼女の目の前にはカリナとトラヴィスに見えるわが子ではなく、正真正銘本物のトラヴィスとカリナがそこにいた。
確かに住処に戻った彼を仲間は刺した筈で……
「貴女が殺したのは本当にトラヴィスだった?貴女、見間違えたんじゃないの?実の息子と彼を。実の息子に会ったのは随分前だと聞いているわ。成長した彼とトラヴィスは似てるんでしょう?」
カリナは此方が嫌がることを理解している。本当に嫌な女だ。
「あの子が死んだなんて、嘘よ。嘘。あの子は幸せになる為に、祖国へ帰したのよ。こんなところで死ぬなんて、私が何のために……」
カリナはしれっと自己弁護を始める夫人に気持ち悪さを感じる。
「貴女は息子の為とか言うけれど、彼はそうじゃないって気づいていたわよ。あの人は嘘ばかりつくからって。」
「あの子がそんなこと言うわけがないわ。だって私と夫の子なのよ。夫の愚弟とは質が違うの。息子は感謝しているわ。私が彼をどんなに大切に思っていると思うの。」
「なら貴女、自分が息子につけた名前は何だか覚えている?アランやトラヴィスではなくて、ちゃんとした彼だけの名前。」
元王女は沈黙した。思い出せなかった訳ではなくて、全く覚えがなかった。
「ディーン、よ。」
「それは貴女ではなくて、彼が引き取られた夫婦がつけてくれた名前よ。彼は名前がなかったの。貴女は最初から、彼に痣が見つかったその日から、貴女の正体を脅かすものとして、息子を祖国へ送ると決めていた。ご丁寧に別の遺体まで用意して。名もない赤子として、捨てられた彼を祖国で面倒を見たのは貴女が陥れ切り捨てた侍女の異父妹よ。
捨てた後は手紙や連絡も一切なかったと聞いたわ。だって捨てたのですものね。それが彼の為ですって?笑うわ。貴女頭がおかしいって自覚ないの?」
元王女は自分の所為ではない、と喚いた。カリナやトラヴィスが嵌めたのだから、自分の所為ではない、と喚き続けた。
「彼は自ら此方に協力すると言ってくれたの。今更母親面する、母を騙る女をやっつけたい、と言って。捨てられた彼は勿論、貴女のような毒の英才教育は受けていないから、結果はお察しの通りよ。即死出来たことがまだ救いかも知れないわ。貴女の指示で彼を殺害した男は、一生後悔するでしょうけれど。」
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