3 / 17
本編
侯爵家となった後
しおりを挟む
後妻との再婚のタイミングで我が家は伯爵家から侯爵家になった。生活自体は変わらないけれど、父ではなく義母が執務室に籠るようになって、父の代わりに仕事をするようになった。父は彼女に任せて遊んでばかりいるようになって、ライラは驚いた。勤勉だけが取り柄のあの父が、侯爵という爵位は何をして得たものかをライラはよくわかっていなかったが、父のこれまでの功績が認められたのだと思っていた。
後妻は後妻で、父から執務を奪って、何かよからぬことを企んでいるのかと勘ぐれば、そうではないらしい。目に見えて領地が栄えていけば、さすがに何も言えない。
伯爵夫人だった前の婚姻時、義母は似たような仕事を経験済みだから、慣れないで失敗ばかりする父の代わりに仕事をするようになったという。
義母の侍女は、義母の生家からついて来た者で、ライラに対する目が厳しい。まるでライラが何か悪いことをしでかすかのように見張られている。義妹は義妹で彼女は本が好きらしく図書館に入り浸っている。いつも持ち歩いているボロボロの本は年代物らしく、売れば高値がつく、と叔母が密かに狙っていた。
ライラの侍女は大して美しくないのに、ソフィアの侍女は美人揃いだ。ソフィアの侍女を見てライラの侍女達は、綺麗になるために努力をし始めた。成果は今一つだが。
ソフィアの侍女に乗せられて、まるで自分が美人になったかのように動くから、ライラは可笑しくて仕方ない。だが、笑っているのがわかると、恨みを買うからギリギリまで我慢している。
彼女達は表立っては、此方を刺激してこない。皆一様にライラにも丁寧に接してくれる。ただ何かを命令してもそれをライラの侍女に言うだけで、自分で動くことはない。棲み分けは徹底されている。
父が遊び呆けている間、叔母の訪問が多くなったのは単なる野次馬根性からだろう。ライラの勉強中に乗り込んできては邪魔をする叔母のことを、ライラの家庭教師は嫌っていた。
勉強がいくら嫌いでも、結局やらなければならないのだから、家庭教師のいる間くらいは邪魔するのはやめてほしいと、正直思っていた。だが、叔母はそもそも良かれと思ってわざわざこの時間帯にやって来るのだ。
叔母とライラはよく似ているらしい。勉強嫌いだったところも、努力が大嫌いなところも、難しいことは誰かにやって貰いたいと思っているところも、全て。
義母は、基本ライラと叔母には関わって来ない。義妹のソフィアに対しても何か特別可愛がっている、とかではないから、元々娘への情があまりないのだと、また叔母が義母を罵っていた。
叔母は、また真偽不明な世間話を仕入れて来ていた。隣国の第三王子が嫁を探しているそうだが、そのお相手が、一度結婚を経験している人、と指定があるそうで。
「私でも立候補できるのよ。」
頬を染めて乙女みたいな仕草をしている叔母は置いといて、ライラは何故第三王子がそんな指定をしたかを考えた。
叔母は、年上が好きなんじゃない?とか言っていたけれど。ライラの意見は違う。
「誰かを探しているんじゃないかしら。」
叔母が行きたいならいけば良いけれど、何の情報も持たない叔母は、きっと選ばれないだろう、とライラは思った。
後妻は後妻で、父から執務を奪って、何かよからぬことを企んでいるのかと勘ぐれば、そうではないらしい。目に見えて領地が栄えていけば、さすがに何も言えない。
伯爵夫人だった前の婚姻時、義母は似たような仕事を経験済みだから、慣れないで失敗ばかりする父の代わりに仕事をするようになったという。
義母の侍女は、義母の生家からついて来た者で、ライラに対する目が厳しい。まるでライラが何か悪いことをしでかすかのように見張られている。義妹は義妹で彼女は本が好きらしく図書館に入り浸っている。いつも持ち歩いているボロボロの本は年代物らしく、売れば高値がつく、と叔母が密かに狙っていた。
ライラの侍女は大して美しくないのに、ソフィアの侍女は美人揃いだ。ソフィアの侍女を見てライラの侍女達は、綺麗になるために努力をし始めた。成果は今一つだが。
ソフィアの侍女に乗せられて、まるで自分が美人になったかのように動くから、ライラは可笑しくて仕方ない。だが、笑っているのがわかると、恨みを買うからギリギリまで我慢している。
彼女達は表立っては、此方を刺激してこない。皆一様にライラにも丁寧に接してくれる。ただ何かを命令してもそれをライラの侍女に言うだけで、自分で動くことはない。棲み分けは徹底されている。
父が遊び呆けている間、叔母の訪問が多くなったのは単なる野次馬根性からだろう。ライラの勉強中に乗り込んできては邪魔をする叔母のことを、ライラの家庭教師は嫌っていた。
勉強がいくら嫌いでも、結局やらなければならないのだから、家庭教師のいる間くらいは邪魔するのはやめてほしいと、正直思っていた。だが、叔母はそもそも良かれと思ってわざわざこの時間帯にやって来るのだ。
叔母とライラはよく似ているらしい。勉強嫌いだったところも、努力が大嫌いなところも、難しいことは誰かにやって貰いたいと思っているところも、全て。
義母は、基本ライラと叔母には関わって来ない。義妹のソフィアに対しても何か特別可愛がっている、とかではないから、元々娘への情があまりないのだと、また叔母が義母を罵っていた。
叔母は、また真偽不明な世間話を仕入れて来ていた。隣国の第三王子が嫁を探しているそうだが、そのお相手が、一度結婚を経験している人、と指定があるそうで。
「私でも立候補できるのよ。」
頬を染めて乙女みたいな仕草をしている叔母は置いといて、ライラは何故第三王子がそんな指定をしたかを考えた。
叔母は、年上が好きなんじゃない?とか言っていたけれど。ライラの意見は違う。
「誰かを探しているんじゃないかしら。」
叔母が行きたいならいけば良いけれど、何の情報も持たない叔母は、きっと選ばれないだろう、とライラは思った。
806
あなたにおすすめの小説
思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。
兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います
きんもくせい
恋愛
リルベール侯爵家に嫁いできた子爵令嬢、ナタリーは、最初は純朴そうな少女だった。積極的に雑事をこなし、兄と仲睦まじく話す彼女は、徐々に家族に受け入れられ、気に入られていく。しかし、主人公のソフィアに対しては冷たく、嫌がらせばかりをしてくる。初めは些細なものだったが、それらのいじめは日々悪化していき、痺れを切らしたソフィアは、両家の食事会で……
【コミカライズ・取り下げ予定】契約通りに脇役を演じていましたが
曽根原ツタ
恋愛
公爵令嬢ロゼは、優秀な妹の引き立て役だった。周囲は妹ばかりを優先し、ロゼは妹の命令に従わされて辛い日々を過ごしていた。
そんなとき、大公から縁談を持ちかけられる。妹の引き立て役から解放されたロゼは、幸せになっていく。一方の妹は、破滅の道をたどっていき……?
脇役だと思っていたら妹と立場が逆転する話。
白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
だって悪女ですもの。
とうこ
恋愛
初恋を諦め、十六歳の若さで侯爵の後妻となったルイーズ。
幼馴染にはきつい言葉を投げつけられ、かれを好きな少女たちからは悪女と噂される。
だが四年後、ルイーズの里帰りと共に訪れる大きな転機。
彼女の選択は。
小説家になろう様にも掲載予定です。
元夫をはじめ私から色々なものを奪う妹が牢獄に行ってから一年が経ちましたので、私が今幸せになっている手紙でも送ろうかしら
つちのこうや
恋愛
牢獄の妹に向けた手紙を書いてみる話です。
すきま時間でお読みいただける長さです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる