私は聖女なんかじゃありません

mios

文字の大きさ
4 / 53
本編 表側

聖教会への訪問

しおりを挟む
聖教会の本部につくと、名前と用件を記入し、順番がくるまで、ひたすら待つ。前に数十名いたので、もしかしたら今日中には無理かもしれない。あまり、寄付していない平民は後回しにされる事が多い。とりあえず、宿を取りに行くために待合室を出る。

平民専用の宿に泊まるため、ホテルへ向かうと生憎一部屋しか空いていない。アーリオが気を遣って野宿しようとするのを引き留めて、一緒に泊まるよう説得する。

泊まる所は確保したので、もう一度、本部を覗いてみると、案の定、順番は明日の午後になるそうだ。

「とにかく、腹ごしらえだな。」
食堂に行くと、宿屋がいっぱいの割に人は少なかった。

「意外と少ないね。」
「ん?ああ、そうだな。さっき、悪かった。」
アーリオから謝られる覚えはない。どちらかというとこちらが謝らないといけないのに。

「お前の問題なのに、何かあの王子にお前を取られたくなくて。」
顔が真っ赤になっている。びっくりしてじっとみていると、アーリオは恥ずかしそうに顔を背けた。

「謝るのはこっちだよ。あれでアーリオも目をつけられちゃった。ごめんなさい。でも、助けてくれてありがとう。」
あの時ほど、一人でなくてよかったと思ったことはない。アーリオがいてくれて、良かった。


アーリオはエミリアの頭をポンポンと軽く叩いて、溜め息をついた。
「まあ、とにかく明日までの辛抱だ。王子の勘違いだって、すぐにわかるよ。」
「そうだよね。すぐ、笑い話になるよね。」
あの変な王子に付き纏われるのも、明日までの辛抱だ。聖女ではないと知ればもう大丈夫だろう。エミリアが聖女でないことは疑いようもないのだから。

話しながら、しっかりご飯を食べて、体力をつけておく。明日は長い1日になるだろうから。

食べ終えて、宿に帰ると、急に我にかえる二人。ベッドは一つだけだ。半分ずつ背中越しで寝ようとするが、全く眠れない。近くに好きな人が寝ていて、触れようとしなくても、ベッドが狭くて触れ合ってしまう。

ドキドキしすぎて、心臓に悪い。体は疲れているのに、眠くならない。
ふう、と溜め息をついた途端、後ろから抱きしめられる。体が強張るが、アーリオの寝息が頭上から聞こえてきて、どうやらエミリアは抱き枕に就任したらしい。

やっぱり疲れていたのだと、エミリアは申し訳なく思った。だから、起こさないように、大人しく抱き枕としての仕事を全うする。

アーリオにドキドキしながらも、目を閉じると、人肌の温かさに徐々に眠気に包みこまれていった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

処理中です...