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本編 表側
聖女の逃亡
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跪いた神官が期待に溢れる瞳で司祭様に向き直り、エミリアから目を離した瞬間だった。
「こっちだ。はやく。」
エミリアの腕をアーリオが掴む。
「走るぞ。」
かろうじて頷いて泣きそうな顔でエミリアが一緒に走り出す。
「あ、聖女様?どちらへ?」
神官の声が追いかけてくるが、気にしている場合ではない。
とにかく、走って、走って、走った。
すでに乗合馬車は出てしまったあとで、次は早くても1時間後。待っている時間があるなら逃げるべきだと第六感が警告を発している。
「ごめんなさい、またアーリオを巻き込んで…」
「いや、こんなの予想できないよ。」
「とにかく家に帰らなきゃ。」
「…いや、帰らないで、このまま逃げる方が良いと思う。」
家に一旦帰ると、そこで捕まってしまうかもしれない。
今から逃げるなら、その分時間が稼げる。
問題はたくさんあるが、一番は、多分今日は野宿か、止まらずに走り続けなければならない、と言うことだ。
エミリアはずっと悩んでいたが、漸く考えがまとまったようで、このままにげるのを承諾してくれた。
家族に迷惑をかけてしまうのが、怖いのだろう。ただ、アーリオの家族も近くにいるし、知り合いもいるし、家族の方は大して問題はないだろう。ましてや、こちらの行き先を知らないのだから。
危険なのは自分達だ。王子だけでなく、今日で聖教会からも追いかけられるのではないか、とアーリオは確信していた。
希望があるとすれば、司祭様の様子。
納得のいっていない、少し首を傾げたはっきりしない様子が、まだエミリアが聖女ではないことの可能性もあるのではないか、と思わせる。
アーリオはさっきの水晶が割れたのを間近で見ても、エミリアが聖女であるとは思っていない。エミリアは普通の女の子だ。
水晶が割れて、怯えて小さくなって震える大切な友人だ。
あと少し逃げるのが遅ければどうなっていたか、わからない。とにかく今は逃げなければ、この国からでることを目標に港町へ向かう。船に乗ってしまえば、そう簡単に追ってくることはないだろう。
ここから港町まで、足がないと大変だが、今は歩けるところまで歩く。体を隠せるように、出来るだけ鬱蒼とした森の中を進んでいく。お貴族様や、教会の偉い人達は、そもそも通らないから、同じ道を追いかけては来ない。
鉢合わせすることはない。
震えが止まらないエミリアの肩を抱く。声を出さずに、泣いているのを見ると、ここまでついてくることを志願して良かったと思う。
大丈夫。俺が守るから。
元気になってほしくてそう言ったのに、エミリアは何故か更に泣いてしまった。
「こっちだ。はやく。」
エミリアの腕をアーリオが掴む。
「走るぞ。」
かろうじて頷いて泣きそうな顔でエミリアが一緒に走り出す。
「あ、聖女様?どちらへ?」
神官の声が追いかけてくるが、気にしている場合ではない。
とにかく、走って、走って、走った。
すでに乗合馬車は出てしまったあとで、次は早くても1時間後。待っている時間があるなら逃げるべきだと第六感が警告を発している。
「ごめんなさい、またアーリオを巻き込んで…」
「いや、こんなの予想できないよ。」
「とにかく家に帰らなきゃ。」
「…いや、帰らないで、このまま逃げる方が良いと思う。」
家に一旦帰ると、そこで捕まってしまうかもしれない。
今から逃げるなら、その分時間が稼げる。
問題はたくさんあるが、一番は、多分今日は野宿か、止まらずに走り続けなければならない、と言うことだ。
エミリアはずっと悩んでいたが、漸く考えがまとまったようで、このままにげるのを承諾してくれた。
家族に迷惑をかけてしまうのが、怖いのだろう。ただ、アーリオの家族も近くにいるし、知り合いもいるし、家族の方は大して問題はないだろう。ましてや、こちらの行き先を知らないのだから。
危険なのは自分達だ。王子だけでなく、今日で聖教会からも追いかけられるのではないか、とアーリオは確信していた。
希望があるとすれば、司祭様の様子。
納得のいっていない、少し首を傾げたはっきりしない様子が、まだエミリアが聖女ではないことの可能性もあるのではないか、と思わせる。
アーリオはさっきの水晶が割れたのを間近で見ても、エミリアが聖女であるとは思っていない。エミリアは普通の女の子だ。
水晶が割れて、怯えて小さくなって震える大切な友人だ。
あと少し逃げるのが遅ければどうなっていたか、わからない。とにかく今は逃げなければ、この国からでることを目標に港町へ向かう。船に乗ってしまえば、そう簡単に追ってくることはないだろう。
ここから港町まで、足がないと大変だが、今は歩けるところまで歩く。体を隠せるように、出来るだけ鬱蒼とした森の中を進んでいく。お貴族様や、教会の偉い人達は、そもそも通らないから、同じ道を追いかけては来ない。
鉢合わせすることはない。
震えが止まらないエミリアの肩を抱く。声を出さずに、泣いているのを見ると、ここまでついてくることを志願して良かったと思う。
大丈夫。俺が守るから。
元気になってほしくてそう言ったのに、エミリアは何故か更に泣いてしまった。
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