私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

森の中で

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たくさん歩いた。日が暮れて、辺りが真っ暗になって、獣がいるかもしれなくて、でも歩いて、歩いて。

少し行くと、小屋があった。電気は付いていなくて、鍵はかかっていなかった。
恐る恐る入って、明かりをつけると、誰かが寝泊りしている跡があった。

今日はいないらしく、悪いとは思ったが、勝手にいさせて貰う。交互に仮眠をとる。エミリアに長く眠って欲しかったが、不安で眠れないみたいだった。

エミリアを一人にしたくなかったが、疲れていたようで、深く眠ってしまった。
起きた時に、すぐエミリアを探すと、また声を出さずに泣いていたので、抱きしめる。

「エミリア。大丈夫。大丈夫だから、泣かないで。大丈夫、大丈夫。」
エミリアは、つよく抱きしめ返しながら、小さな声でずっと謝っていた。

エミリアが謝ることなんて、何もないのに。

「エミリア、これから隣国へ行かないか?聖女様に助けを求めよう。」
本物の聖女様ならなんとかして貰えるかもしれない。隣国へ行けば、王子の牽制にもなるかもしれないし。

「アーリオも、来てくれる?」
「当たり前だろ?本物の聖女様を見に行こう。」
エミリアは泣きながら、笑おうとして、ぎこちない笑顔になった。

エミリアの涙を拭う。「もう少しだけ、寝て。」抱きしめながら、そう言うと素直に目を閉じて、すぐに寝息が聞こえた。

早くしないと、エミリアが壊れてしまう。早く聖女様に会わなければ。


朝になると、小屋に光が降り注ぐ。あまりに眩しくて、スッキリ目覚める。

お腹が空いたので、キッチンを漁ると、非常食が出てきたので、食べる。美味しくはないが仕方がない。腹が膨れただけマシだ。

少しでも食べると、沈んだ気持ちが楽になるみたいだ。顔色が良くなってきたように思う。

「もしかしたら、変装した方がいいかも。」

近くにあった帽子をエミリアに被せる。
男性物で少し大きいが、顔がすっぽり隠れるし、日除けにもなる。貰って行くことにする。住人が帰ってこないうちに家を後にする。爽やかな森の香りが漂っていた。深呼吸をすると、落ち着いた。港を目指して、また歩く。

聖教会で用事が終われば、幾らか寄付をして、その日も泊まるつもりだったので、お金はまだある。盗賊に遭わないようにお金を色んな所に隠して、あとは武器を手に入れたいとアーリオは思っていた。小さなハンドナイフは、森の中では使い勝手が良いが、魔獣や、盗賊が相手だと心許ない。

エミリアよりは、腕はたつけれど、アーリオは不安だった。最近変な人ばかりに会っているので、これ以上は勘弁して欲しかった。
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