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本編 表側
従者
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「じゃあ、そろそろ行きますか。」
独り言のように呟いた後、アーリオとエミリアに、「少しこの場は離れますが、この子がいるので、大丈夫だと思います。」チロを見て、優しい顔をしたと思ったら急に目の前で姿を消した。魔法など使えないエミリア達は、驚くばかりで仕組みなど全くわからない。国をいくつも越えて、正直もうさすがに、エミリア達を追ってくるものなどいないと思ったが、それは希望でしかなかったらしい。
「保険のつもりか?」
微かに魔族特有の匂いがして、従者は自分の記憶の中で同じ匂いを嗅いだことがある、と思い出した。懐かしい香りだ。
従者だって、元は人間だ。強い呪いで魔族を共存させられているだけの、人間。
任務中の隙を突かれた事故で、少しでも気を抜くと魔族に喰われてしまう。人間に戻りたいとは思わない。もう既に慣れてしまった。人間だけだとこんな強さもなく、ただ死ぬだけ。大切な人すら守ることができない。
あの平民の近くにいる聖獣の近くにいると、自分の中にいる魔族が怯える。それがわかっただけで、自分はここに来た意味がある。
いつまでこの場所にいられるか、わからない。愛しい人と離れたくはないが、仕方がない。自分は駒でしかない。最後には捨てられてしまう。それまでに、愛する人を自分に依存させられたら万々歳だ。国に置いてきた第三王子のことを思い出し、自嘲した。
愛し方のわからない男が愛を語るなんて烏滸がましい。
侵入者はやはり、聖教会の手の物だ。こんなところまで、来るなんて案外骨がある。大方、匂いに釣られてきただけだろうが。
聖女や聖獣には、魔族が好む匂いがある。エミリアは聖女ではないらしいが、微かに匂いはする。聖獣が近くにいるからだろうか。
魔族は良い匂いに釣られては、浄化されてしまうので、この匂いがしたら上級魔族はすぐに逃げるのだが、下級にはそれが難しいらしい。
「逃げた方がいいのに。」
まあ、今逃げようとしても、逃しはしないが。
聖教会の闇は意外に深いらしい。闇で生きてきた人間には、ありがたい、のか。潰しがいがあるっていいことだと思うから。
独り言のように呟いた後、アーリオとエミリアに、「少しこの場は離れますが、この子がいるので、大丈夫だと思います。」チロを見て、優しい顔をしたと思ったら急に目の前で姿を消した。魔法など使えないエミリア達は、驚くばかりで仕組みなど全くわからない。国をいくつも越えて、正直もうさすがに、エミリア達を追ってくるものなどいないと思ったが、それは希望でしかなかったらしい。
「保険のつもりか?」
微かに魔族特有の匂いがして、従者は自分の記憶の中で同じ匂いを嗅いだことがある、と思い出した。懐かしい香りだ。
従者だって、元は人間だ。強い呪いで魔族を共存させられているだけの、人間。
任務中の隙を突かれた事故で、少しでも気を抜くと魔族に喰われてしまう。人間に戻りたいとは思わない。もう既に慣れてしまった。人間だけだとこんな強さもなく、ただ死ぬだけ。大切な人すら守ることができない。
あの平民の近くにいる聖獣の近くにいると、自分の中にいる魔族が怯える。それがわかっただけで、自分はここに来た意味がある。
いつまでこの場所にいられるか、わからない。愛しい人と離れたくはないが、仕方がない。自分は駒でしかない。最後には捨てられてしまう。それまでに、愛する人を自分に依存させられたら万々歳だ。国に置いてきた第三王子のことを思い出し、自嘲した。
愛し方のわからない男が愛を語るなんて烏滸がましい。
侵入者はやはり、聖教会の手の物だ。こんなところまで、来るなんて案外骨がある。大方、匂いに釣られてきただけだろうが。
聖女や聖獣には、魔族が好む匂いがある。エミリアは聖女ではないらしいが、微かに匂いはする。聖獣が近くにいるからだろうか。
魔族は良い匂いに釣られては、浄化されてしまうので、この匂いがしたら上級魔族はすぐに逃げるのだが、下級にはそれが難しいらしい。
「逃げた方がいいのに。」
まあ、今逃げようとしても、逃しはしないが。
聖教会の闇は意外に深いらしい。闇で生きてきた人間には、ありがたい、のか。潰しがいがあるっていいことだと思うから。
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