私は聖女なんかじゃありません

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王子 裏側

不穏な空気

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陛下の呼び出しは、案の定、聖女に関することだった。聖教会からはまだ何も連絡がないが、本当か、と。

「私たちが、全員奇跡を目撃したのです。彼女は、真に聖女ですよ。」

未だに、完全には信じていないようなので、信用できない第二王子ではなく、信頼に値する忠臣を呼ぶ。
「イーサンもおりましたので、彼に確認していただければ。」

陛下の忠実な臣下であり、第一王子の犬である騎士のイーサンを呼ぶ。彼の話は息子より信用できるらしい。では、最初からそうすれば良い。無駄足を、わざわざ運ばせるのは、性格が悪いのか、頭が既に耄碌しているのか。

「聖教会に見つかる前に、連れてこい。」
「承知しました。」

結局はこうなるのだから、呼び出しさえなければ、既に手中に収めていたものを。なぜ、邪魔をするのか。


聖教会本部に送り込んだ部下が、聖女が逃げたことを報告してきた。
隙をついて、男が逃したそうだ。あの男、良い働きをするじゃないか。

聖教会に認められたのなら、本当にあの女は聖女なのだな。面白い。

聖女が逃げたのなら、どこへ向かうだろう。家族の元へは、既に人を送り込んでいる。監視中だから、何か動きがあれば、すぐ知らせが入る。

いや、私なら帰らない。捕まる可能性が高い。

しばし、考えたのち、イーサンに向き直る。「お願いがあるのだが、イーサン。君に聖女の追跡を頼みたい。」

陛下の前で口にしたのは、陛下に口添えしてもらえるのでは、と期待したからだ。思ったとおり、イーサンに任せることになる。

追跡を彼に任せて、私は高みの見物だ。あと、兄上の看病は任せてくれ。すぐに楽にしてやる。


聖教会から逃げたということは、そちらからも追っ手がくると言うことだ。つまり、それとイーサンがやりあってくれれば、邪魔をなくすことができる。

ついでに、どちらも倒れてくれればいいのだけど。そんなに上手くはいかないか。

あの男をまずは手に入れて、聖女にお越しいただくのが良いか?

平民らしく、許しを乞えば、苦しまずに処分してやってもよいが、楽しみがなくなってしまうな。

聖女を捕まえたら、どう可愛がってやろうか考えるだけで、待ち遠しい。壊して治してまた壊してまた治して、何度目で戻らなくなるのだろう。

あの生意気な顔が、恐怖に怯えて、狂うのが早く見たい。

イーサンを仕留め損なう場合、アレを保険にかけておこう。

「アレを呼べ。」
気配だけ、訪れる。
「……」
「聞いていたな?イーサンを討て。」

命令を出した瞬間、気配が消える。
私はきっといつかアレに始末される。

だが、今ではない。今はまだ、私が主人だ。


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