私は聖女なんかじゃありません

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王子 裏側

追っ手

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第一王子が病に伏せっている、と言う情報は古い。第二王子より毒を盛られて体調を崩している、と言う情報はあるにはあるが、事実ではない。

第一王子自身が自由に動き回るために、流した嘘である。第一王子の忠臣は、役者揃いだ。あの、狡猾で、抜け目のない第二王子の目をそらせることができたのだから。

イーサンを第一王子から離した所で、一思いに第一王子を亡き者にしようと計画しているのだろう、と予測できたが、それは不可能だ。

既に第一王子はこの国におらず、他国に逃げている。逃げている、と言う表現は些か語弊がある。正確には、勧誘しに行っている。自分の仲間となってくれそうな人に恩を売りにいっている。司祭様を味方につけるため、隣国の聖女を亡命させるのを手伝っている。

隣国の聖女がクーデターに巻き込まれるのを防いだのである。

今は第一王子もろとも、別の国で、鎮静するのを待っているところだ。
第一王子の身代わりとして、影武者が王宮に残っており、第二王子は、それを知らない。

知ったところで、第二王子が、第一王子の顔をしっかりと認識しているかは謎だ。

第二王子はあの女癖と残虐性がなければ、王太子にふさわしいと思う。その二つがあるからこそ第二王子なのだが。

イーサンは逃げた女性は聖女に限りなく近い人だと思ってはいる。ただし、確証がない。兵士の怪我は、疑っている部分が多少あるが、聖教会であの司祭様が導き出した答えを否定することはできず、また最初にあった魔獣についても、あれはただのペットではないと思う。魔獣にしては小さいが、犬ではなかった。

彼女からは魔力を感じなかったから、まだ覚醒前の聖女と言う可能性は捨てきれず、とくにあの場では発言をしなかった。

第二王子の顔を見る限り、どちらでも良いと思っているだろう。聖女を自分の物にしたい、と言う顔をしていた。どうしてあんなに偏った人物なのだろう。

少なくとも半分は陛下の血が入っているのに。育てたのではなくて、最初から持っていたと言う方が、正しいかもしれない。

小さい子が好きな女の子を苛める、みたいな可愛いものではなく、追い詰めるだけ追い詰めて、どこで決壊するかを、見て楽しむなんて。精神に異常をきたしているとしか思えない。

見た目は、ただのアホ王子なのだから、手に負えない。

イーサンは、その厄介な王子から、自分にも追っ手がつけられているのを知っている。その追っ手が、少々面倒な奴だと言うことも。


第一王子の為にも、私が帰ることは絶対だ。聖教会の追っ手が来てから一気に仕掛けてみるのも面白いかもしれない、と人知れずほくそ笑んだ。




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