私は聖女なんかじゃありません

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本編 表側

船に乗る

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森を抜けると、潮の香りがしてくる。活気に溢れた港町。周りには船がたくさん。案内所に入って、今日の便を確認する。チロも合流したので、動物が一緒でも良いか確認すると、ちゃんと檻に入ってるなら、と返された。

ひとまずホッとして、檻を買いに行く。少し怪しげな男の人に紹介してもらい、緊張するも、丁度良いサイズの檻を手に入れることができた。

もう少しお金を出すと、自由に大きさを変えられる檻とかあったけれど、お金は大事なのでまあまあ強度のある普通の檻にした。

チロは貨物としてべつに積まれるわけではなく、一緒にいられるらしい、と言うのを理解してるのかわからないが、終始嬉しそうにしていた。ララは子ども料金でギリギリ入れた。行き先を急遽隣りのダールからフォルシアに変更したため、お金がない。どこかで働き口を探さないとダメかも。ララが元の形になってくれたらお金はかからないのだが、人間の形の方が追っ手の目を眩ましやすいかなと思ってのことだ。

船で移動することは、追っ手に乗り込まれた場合、捕まってしまう可能性が強いが、途中で降りることが許されない条件は同じで、フォルシアにさえついてしまえば、聖女様になんとかして貰えるのではないか、とそちらに賭けるしかない。チロとララがいるとしても、戦闘力が絶対的に足りないのは、どうしようもならない。

「エミリアは船に乗ったことある?」
「こんなに大きいのはないわ。釣をするのに、小さな船を漕いで、って言うのはあるんだけど。」
「じゃあ、揺れは大丈夫かな?長い移動になるから、船酔いしたら最悪だよ。」
「うん。私は大丈夫。アーリオは…割と乗ってるわね。」
「うん。隣国に叔母がいるからね。たまに会いに行くし。まあ、でも距離が倍以上だから、しんどくなったら無理しないこと。ちゃんと言うこと。ララも、チロもいいな。」
チロは既に檻の中でリラックスしていて、心配はないと思われた。ララはキョロキョロしていたが、初めてみるものばかりで、興奮しているせいと思って、特に気にしなかった。

未だにアーリオはララのことを、エミリアの小さい妹と認識していて、さっき見た妖精とかは、頭から抜け落ちていた。
だから、ここで最初の認識のズレがあった。エミリアを守るのに手一杯のアーリオは、自身も同じだけ追い詰められていることに気がつかなかった。

そして、それが小さな歪みとなっていく。

アーリオは、エミリアより先に自分が狙われるとは思っても見なかった。






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