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側妃のターン
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暗に、アレクセイの出自を陛下に指摘され、側妃シルビアは長年隠していた秘密が暴かれたことに恐怖した。
「どうして、それを。」
ポロッと溢した言葉に、揃った者達が皆困惑した表情に変わる。
シルビアは男女の営みも、何もわからない状態で妊娠した。行為中の意識が何もなく、相手が誰だったのかは結局確信がないまま。それでも陛下にそっくりな息子アレクセイが生まれたことで、自分は陛下との子を産んだのだと思い込もうとしていた。
だが、意識が浮上して目が覚めた時に一瞬だけ見た陛下ではない男の姿に、相手が彼だったらどうしよう、とずっと恐れていたのだった。
クラリスは側妃シルビアが盛大な勘違いをしていることに気づいていた。彼女はトリア男爵令嬢と同じタイプの人間だが、一つだけ決定的に違っていたのは、彼女は、正真正銘の天然だったことだ。
側妃シルビアの周りにいた腐った貴族達は、陛下の好む女性がこういった女性だとわかっていた。アントニオの母である正妃も、そうだった。彼女は公爵令嬢だった。シルビアよりも情報通であった為、まだ話が通じる方だが、ある意味では可愛らしく人によってはあざとく感じる天然さは陛下の好む特徴であったのだろう。
シルビア妃は良くも悪くも正直に振る舞うことで陛下の寵を受けていた。彼女が側妃になれたのは、二心がない、と判断されたからに尽きる。
彼女は無菌状態を保っていられるなら、何の害もない赤子同然。軽い神輿として持ち上げられなければ、単なる置物として、何の脅威も持たない存在だった。だから、正妃も放っておいたのだ。
だが、彼女がどうあれ、アントニオを暗殺せんとする勢力に彼女が加担するようであれば、放っておくこともない。
幸いなことに、アレクセイは見事な愚か者に育った。置物としての自分を受け入れることなく、一丁前に自分を主張するだけで何も出来ない。これなら、腐った貴族に餌をばら撒いているだけだ。
陛下の手のひら返しはクラリスには気持ち悪く映った。顔だけでなく、性格もそっくりなアレクセイは正真正銘陛下の子だと確信するほどだというのに、肝心な陛下は、シルビア妃の言葉に少なからず衝撃を受けている。
まさか自分の言った冤罪が、真実だとは思っていなかったらしい。
それより何よりシルビア妃が陛下との行為について何も覚えていない方が問題なのでは?
彼女の言葉が本当なら、陛下は意識のない女性を無理矢理抱き、妊娠させたことになる。
クラリスの胸の内には陛下に対する軽蔑がじわじわと広がっていた。
シルビア妃が取り乱し倒れた為に、その話は一旦終了となったが、皆一様に疲れた様子で、理解が追いつかなかった。
「陛下はアレクセイ殿下を自分の子ではないとし、継承権を奪おうとしたのね。まあ、形だけでもそうすれば、側妃を幽閉して後は退位した後に穏やかに暮らそう、とか考えていたのかもしれない。」
「勝手すぎて反吐が出るな。アレクセイのことはどうするつもりだったんだ。」
呆れを通り越して怒りまで湧いてきた父の姿に、クラリスも、同意する。
「こうなったらお望み通り退位してもらいましょう。私達は甘くないから、自分の罪は自分で償ってもらう方向で。」
「どうして、それを。」
ポロッと溢した言葉に、揃った者達が皆困惑した表情に変わる。
シルビアは男女の営みも、何もわからない状態で妊娠した。行為中の意識が何もなく、相手が誰だったのかは結局確信がないまま。それでも陛下にそっくりな息子アレクセイが生まれたことで、自分は陛下との子を産んだのだと思い込もうとしていた。
だが、意識が浮上して目が覚めた時に一瞬だけ見た陛下ではない男の姿に、相手が彼だったらどうしよう、とずっと恐れていたのだった。
クラリスは側妃シルビアが盛大な勘違いをしていることに気づいていた。彼女はトリア男爵令嬢と同じタイプの人間だが、一つだけ決定的に違っていたのは、彼女は、正真正銘の天然だったことだ。
側妃シルビアの周りにいた腐った貴族達は、陛下の好む女性がこういった女性だとわかっていた。アントニオの母である正妃も、そうだった。彼女は公爵令嬢だった。シルビアよりも情報通であった為、まだ話が通じる方だが、ある意味では可愛らしく人によってはあざとく感じる天然さは陛下の好む特徴であったのだろう。
シルビア妃は良くも悪くも正直に振る舞うことで陛下の寵を受けていた。彼女が側妃になれたのは、二心がない、と判断されたからに尽きる。
彼女は無菌状態を保っていられるなら、何の害もない赤子同然。軽い神輿として持ち上げられなければ、単なる置物として、何の脅威も持たない存在だった。だから、正妃も放っておいたのだ。
だが、彼女がどうあれ、アントニオを暗殺せんとする勢力に彼女が加担するようであれば、放っておくこともない。
幸いなことに、アレクセイは見事な愚か者に育った。置物としての自分を受け入れることなく、一丁前に自分を主張するだけで何も出来ない。これなら、腐った貴族に餌をばら撒いているだけだ。
陛下の手のひら返しはクラリスには気持ち悪く映った。顔だけでなく、性格もそっくりなアレクセイは正真正銘陛下の子だと確信するほどだというのに、肝心な陛下は、シルビア妃の言葉に少なからず衝撃を受けている。
まさか自分の言った冤罪が、真実だとは思っていなかったらしい。
それより何よりシルビア妃が陛下との行為について何も覚えていない方が問題なのでは?
彼女の言葉が本当なら、陛下は意識のない女性を無理矢理抱き、妊娠させたことになる。
クラリスの胸の内には陛下に対する軽蔑がじわじわと広がっていた。
シルビア妃が取り乱し倒れた為に、その話は一旦終了となったが、皆一様に疲れた様子で、理解が追いつかなかった。
「陛下はアレクセイ殿下を自分の子ではないとし、継承権を奪おうとしたのね。まあ、形だけでもそうすれば、側妃を幽閉して後は退位した後に穏やかに暮らそう、とか考えていたのかもしれない。」
「勝手すぎて反吐が出るな。アレクセイのことはどうするつもりだったんだ。」
呆れを通り越して怒りまで湧いてきた父の姿に、クラリスも、同意する。
「こうなったらお望み通り退位してもらいましょう。私達は甘くないから、自分の罪は自分で償ってもらう方向で。」
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