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5年目の真実······
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木々の下を歩く一人の女性は自分の母校で立ち止まる。
「あ~、久しぶりだなぁ」
2、3階の窓から見える教室、1階の下駄箱に自転車置場など、その雰囲気がとても懐かしく一気に高校生気分に戻っていく。
「秋先輩!」
彼女を呼んだのは、
「九美~、LINEありがと、久しぶり」
学校の入り口に立つ九美だった。
「本当ですね~」
しかしその容姿は変わっていて、オフホワイトのスーツにショートカット、顔も大人びている。
「でもホントッ、教師になるなんて、とても不良だったとは思えないわね」
「止めてくださいよ先輩、恥ずかしい」
彼女は人生を変えてくれた先輩達や先生達のように自分もと思い元不良の仲間や後輩達に得意の勉強を教えていくうちに、教師の道をめざし見事に教師になったのだ。
「先輩だってもう立派な看護師じゃないですか」
秋も看護師になっていた。看護師の先輩である間城 アンと黒井 泊二人に高校卒業後もコンタクトをとってアドバイスを貰いながら大学を卒業し、晴れて憧れである看護師へと就職したのだ。
「まだまだ新米よ。ところでどうして今日集まるの?」
「あと二人来ますので」
すると、
「オ~イッ!」
明るい声、でも少し大人びたパールとその隣に高弘が、
「パール~、お寿司美味しかったわー!」
パールは卒業後、お寿司の専門学校に通って念願の寿司屋になった。そして今は、自分の店を開くために他の寿司屋で働いて、そこに月に一回秋は行っていた。
「相変わらずだな」
高弘は短大に行き卒業後、高校の時に体験した障害者施設で働いている。
「パール先輩、高弘先輩、お久しぶりです」
「オ久シブリ、九美」
「久しぶり、前みんなで会ったのは去年の12月だったよな、たしか」
当時を思い出しながら教室へと足を運ぶ。
「懐かしいな~」
「あまり変わってなくて良かった気がするな」
「何カ、マタ学校キタクナル」
浸っている三人を見てニッコリとしたあと真剣な顔つきになる九美は、
「先輩たちに集まって頂いたのには、理由があります······大井先生お願いします」
扉から上が薄い黄緑と下がグレーのスーツの大井先生が入って来て、
「みんな久しぶり、大人になったわね」
「大井先生っ!」
大井先生の姿は変わってなく元気そう、でも前のようにキャピキャピさはなくなって何となく前よりも先生としての風格が出ている。三人は驚いたが話は続く、
「皆に話さなければならない事があります。覚悟して聴いて下さい」
皆どうしてと思いつつ真面目な顔つきになり大井先生は語りだす。
「この話は5年前の、卒業式が終わったあとの事です······」
――それは、生徒達がいなくなった卒業式の終わりに先生達が後片付けをしていると、
「ではロボット先生、行きますよ」
「はい」
「ちょっと待って下さいっ!」
「大井先生、あなたが何言っても変わりませんよ」
ロボット先生を送る役員の方は言う。
「分かってます。でも、少しお時間を下さい、お願いします」
大井先生は頭を下げた。
「······わかりました」
「20分位で良いのでっ!」
何とか20分の時間を貰い、
「ありがとうございます、ロボット先生行きましょう」
「どこに······」
「教室です」
そう言ってロボット先生の手を掴み教室に急いで連れていく。
彼女は秋と彼の約束を果たさせるため、
「ロボット先生は秋さんにメッセージを、私はスマホで撮りますので」
大井先生の考えを理解したロボット先生は、
「そうですね、ではお願いします」
秋への合格メッセージを撮り始めた――。
「撮り終わりです······ロボット先生」
「ご協力ありがとうございました。大井先生」
そのいつもの優しい声に、
「ホントに、何も出来なくて、すいません、ロボット先生」
下を向き助けられない悔しさで涙を見せる。
「泣かないでください、大井先生」
「でも、でもやっぱり納得いかなくて······こんな、酷い事」
「大井先生が言いたいことが沢山あるのは、分かります。でも前を向いて下さい、生徒たちにはあなたのような方が必要です」
「ロボット先生」
今の状況に絶望し人の残酷さしか見えない彼女、教師を辞めようとさえ思ってしまう。
それでも彼の言葉が心に染みる。今の生徒達にロボット先生の事を少しでも記憶に残してほしい。
「大井先生、時間がないですが今度は皆に向けてムービーを撮りたいのですが」
「ぐすっ、はい、すいません」
「――そのあと、ロボット先生は処分されに行きました」
「あ~、久しぶりだなぁ」
2、3階の窓から見える教室、1階の下駄箱に自転車置場など、その雰囲気がとても懐かしく一気に高校生気分に戻っていく。
「秋先輩!」
彼女を呼んだのは、
「九美~、LINEありがと、久しぶり」
学校の入り口に立つ九美だった。
「本当ですね~」
しかしその容姿は変わっていて、オフホワイトのスーツにショートカット、顔も大人びている。
「でもホントッ、教師になるなんて、とても不良だったとは思えないわね」
「止めてくださいよ先輩、恥ずかしい」
彼女は人生を変えてくれた先輩達や先生達のように自分もと思い元不良の仲間や後輩達に得意の勉強を教えていくうちに、教師の道をめざし見事に教師になったのだ。
「先輩だってもう立派な看護師じゃないですか」
秋も看護師になっていた。看護師の先輩である間城 アンと黒井 泊二人に高校卒業後もコンタクトをとってアドバイスを貰いながら大学を卒業し、晴れて憧れである看護師へと就職したのだ。
「まだまだ新米よ。ところでどうして今日集まるの?」
「あと二人来ますので」
すると、
「オ~イッ!」
明るい声、でも少し大人びたパールとその隣に高弘が、
「パール~、お寿司美味しかったわー!」
パールは卒業後、お寿司の専門学校に通って念願の寿司屋になった。そして今は、自分の店を開くために他の寿司屋で働いて、そこに月に一回秋は行っていた。
「相変わらずだな」
高弘は短大に行き卒業後、高校の時に体験した障害者施設で働いている。
「パール先輩、高弘先輩、お久しぶりです」
「オ久シブリ、九美」
「久しぶり、前みんなで会ったのは去年の12月だったよな、たしか」
当時を思い出しながら教室へと足を運ぶ。
「懐かしいな~」
「あまり変わってなくて良かった気がするな」
「何カ、マタ学校キタクナル」
浸っている三人を見てニッコリとしたあと真剣な顔つきになる九美は、
「先輩たちに集まって頂いたのには、理由があります······大井先生お願いします」
扉から上が薄い黄緑と下がグレーのスーツの大井先生が入って来て、
「みんな久しぶり、大人になったわね」
「大井先生っ!」
大井先生の姿は変わってなく元気そう、でも前のようにキャピキャピさはなくなって何となく前よりも先生としての風格が出ている。三人は驚いたが話は続く、
「皆に話さなければならない事があります。覚悟して聴いて下さい」
皆どうしてと思いつつ真面目な顔つきになり大井先生は語りだす。
「この話は5年前の、卒業式が終わったあとの事です······」
――それは、生徒達がいなくなった卒業式の終わりに先生達が後片付けをしていると、
「ではロボット先生、行きますよ」
「はい」
「ちょっと待って下さいっ!」
「大井先生、あなたが何言っても変わりませんよ」
ロボット先生を送る役員の方は言う。
「分かってます。でも、少しお時間を下さい、お願いします」
大井先生は頭を下げた。
「······わかりました」
「20分位で良いのでっ!」
何とか20分の時間を貰い、
「ありがとうございます、ロボット先生行きましょう」
「どこに······」
「教室です」
そう言ってロボット先生の手を掴み教室に急いで連れていく。
彼女は秋と彼の約束を果たさせるため、
「ロボット先生は秋さんにメッセージを、私はスマホで撮りますので」
大井先生の考えを理解したロボット先生は、
「そうですね、ではお願いします」
秋への合格メッセージを撮り始めた――。
「撮り終わりです······ロボット先生」
「ご協力ありがとうございました。大井先生」
そのいつもの優しい声に、
「ホントに、何も出来なくて、すいません、ロボット先生」
下を向き助けられない悔しさで涙を見せる。
「泣かないでください、大井先生」
「でも、でもやっぱり納得いかなくて······こんな、酷い事」
「大井先生が言いたいことが沢山あるのは、分かります。でも前を向いて下さい、生徒たちにはあなたのような方が必要です」
「ロボット先生」
今の状況に絶望し人の残酷さしか見えない彼女、教師を辞めようとさえ思ってしまう。
それでも彼の言葉が心に染みる。今の生徒達にロボット先生の事を少しでも記憶に残してほしい。
「大井先生、時間がないですが今度は皆に向けてムービーを撮りたいのですが」
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「――そのあと、ロボット先生は処分されに行きました」
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