家出迷子のお兄ちゃん

ヒムネ

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家出

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「――ごちそうさま」

「ごちそうさま、もう部屋に?」

 不思議がる母さんしかしオレはプイッと無視して自分の部屋の扉を開けて準備していた物を確認する。


 それはリュックサックその中にはお菓子や携帯ゲームに漫画とこっそり押し入れにしまってあったホコリまみれのブルーシート、あと水筒に懐中電灯と完璧な家出装備。


「おおめにご飯も食べたし、よ~しこれで、ニシシシッ」


 これからすることは全国の弟を持つ兄と言われている人たちが『お兄ちゃんなんだから』という言葉で傷ついた兄たちを代表して家出するという大きな使命に違いない。


 準備が整いワクワクする気持ちをおさえては黙って階段を下り玄関に置き手紙、するとそこに、


「兄いちゃん、どこいくの?」


「・・・陽之丸ひのまる・・・止めるな!」


「兄ちゃんっ!」


 気になったであろう弟を背に颯爽と家を出たのであった。


 家を出てそう遠くないほどの道を進んでいくと田舎特有の木々と草ぼうぼうの森。実はもうすでに中は調査済みで真っ直ぐ進んでいけば壊れて錆びれているビニールハウスがあるだけのそこで家出のスタートだ。

「よ~っしっ、なにやろうかな~・・・まずは漫画かな~」

 古びた仕事用のテーブルにブルーシートを敷いて寝っ転がる。

 木々が風でなびくとなんていい気持ちだろう、騒がしい声も聞こえないし『勉強しなさい』の声も聞こえない。スマホが無いのがちょっと不安だけどまぁ持ってれば居るところがバレちゃうしすぐなれるだろう。


 こうしてオレは午後から一人の気持ちのよい自由を満喫する・・・。


「お母さん、これ」

「陽之丸どうしたの・・・ハアッ? 家出って――」


 1時間、オレが遊んだ時間。漫画も読み終わって気持ちを清らかにしているとそのまま自然に寝てしまった。


 目が覚めた頃には時間が午後の4時半すぎ、


「ふぁ~あ、ねすぎたかな~」

 11月の午後4時頃は日も山に落ちかけて暗くなるのが早い。


「う~ん何しよう・・・」


 持ってきたもの全部遊んだしと悩んでいるとオレの顔はつられるように太陽に。


 オレンジ色、よく考えたら太陽をジッと見つめたのは久しぶりかもしんない・・・家族の顔が浮かぶきっと怒ってるだろうな家出してるんだから・・・さみしい・・・そんなわけない、これはオレがしたかったこと。


 頭を切りかえようリュックをチェック、肌のあたる風が冷たいと思ったとき、


「やべっ、毛布わすれた!」


 家出をすることに気持ちが上って忘れ物、これじゃあ夜は過ごせない。

「あちゃ~・・・しかたない、帰るか」

 オレは非常に家出をしたいが毛布を忘れたのであればしょうがないと、ほんとうはここで過ごしていたいのだが帰るという苦渋の決断をした。
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