～マザー·ガーディアン～

うるさい

　チャイルドのタイミングは正確、でも『来ました！』のあとじゃどうしても間に合わない、
「よしっ、またお願いね、チャイルド」
「はい」

　手を振る、そして考えたフリをし、私はチャイルドの声に集中する。

「来ま」その瞬間に動き、

「した」触れた。

「やった――」


「やった、よしっと」
　これで三度目。変わらずの真っ白い空間。目の前に鳥はいたけど、すぐ飛んだ。
「あ、待ってよ――そうだ、ここならもしかして······やっぱり！」
　浮いて移動が出来たので、鳥を追いかける。彼の行くまま進むまま、進めど進めど真っ白で、不思議だけど悪い気はしなかった。体感的に２～3分くらいで気がすんだのか鳥が私の左肩に、

「ありがとね、鳥さん」

　胸の奥から湧き出る温かい感じがすると、

　――また謎の光景が見えた。巨大な木々が次々に生えている。
「何なんだろう、これは」
　前回とは違い今度は巨木、一体何やら······。


「うっ」
　うっすらと目を開く、
「気がつきましたか未来さん」
「チャイルド」
　どうやら気絶はしなかったけれど、
「大丈夫ですか？」
　この時はうつ状態だった。
　気分が落ち込み、虚しさや倦怠感が襲っていたの。
「気絶してた方が、良かったかも」
　太陽が出て、台風や気候獣も消え、清々しい空でも私はグッタリ。スタッフにマザー·ガーディアンから降ろしてもらい、肩を借りながらスカイカーに乗って、私は仮眠させてもらった······。

「失礼します。戻りました」
「······今回は倒れなかったようだな」
「はい、でもスカイカーの中」
「今日の訓練は無理そうだな、帰れっ、以上」
　私の話を最後まで聞いてはくれず、霞さんが出ようとしたのを見て、ここはめげすに、
「社長、今日は一緒にお食事どうですか、好きな物を言ってくれれば調べて······」
　やっぱり無視して行ってしまう。それでも食らいつき、
「しゃっ、社長、じゃあ私の」

「うるさいんだよっ！」

　怒らせてしまった。私が何とか気に入ってもらおうと焦ったことが、逆効果だと気付きすぐに謝罪する。
「すいません······」
　霞さんは、何も言わずに仕事に向かった。そこに徹が、
「未来っ、無事で良かったよ――未来？」
「徹······あたし、やっちゃった」
「なにを」

「お義母さん怒らせちゃった――うっうわ～」

「未来、落ち着いてっ」
　感情が溢れて泣いてしまったの。そんな私を頭に手を回し抱きしめてくれた徹。

「ごめんなさいうっ、うっ」
「落ち着いて、大丈夫だから」
「でも、でも、私はあなたと、ぐすっ」
「焦るな未来、焦りすぎだよ」
「うっ、うっ······」
「今日マザー·ガーディアン乗って、精神も使い果たしたんだろう、だから感情が溢れちゃったんだよ」
「かも、しんない、ぐすっ」
「一人で背負うなよ」
「うん」

　徹のお陰で少し落ち着いて、
「もう、大丈夫だな？」
「ごめんね、こんなところで泣いて」
「ううん」
「先に帰って待ってるね」
「うん、そうしててよ」
「ありがとう徹」
　このあと、着替えながら冷静に考えるとどうして泣いてしまったのか。徹の優しさで落ち着いた私は、疲れは恐ろしいと思い会社を後にした······。

「ただいまー」
「お帰りなさい」
「元気になった？」
「うん、徹のお陰でねっ」
　私は家に着いたあと、ゲームしたり、仮眠したり、とにかく精神を楽にしていたら徐々にやる気が戻ってきたの。
「そうかー、良かった。あのさー」
「何？」
「明日から土、日休みだよね？」
「私？　休みよ」

「じゃあ明日出かけようよ」

「ホントッ？」
「最近大変な事ばっかりだしっ」
「うん行こう、デートッ」
　このところ、ずっとマザー·ガーディアンの事ばかり考えてたから、徹の誘いは超嬉しい。
　だけど明日、楽しみにしていた私に、大変な事が起こるの······。