~マザー·ガーディアン~

ヒムネ

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      家族の協力

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 オレが小学三年生の時だ。この頃母さんは仕事で忙しく帰りが遅いので、オレは一人で出来ることはほとんどやっていた。
 母さんが辛そうにしていたから苦ではなかったんだ。
 そうして独りぼっちだった自分だけど、嬉しい事があった。
「お母さんホント?」

「ええ、本当よ、授業参観楽しみにしてるわ」

「うんっ!」
 他の生徒は、恥ずかしいとか来てほしくないって言うけど、オレは喜んだ。母さんと二人で居ることはあまりなくて、オレが眠ってる時に帰って来てたから・・・・・・。

 そして授業参観、
「あ、す、すいません」
 母さんは顔が赤くなっていた。
 ほとんど来たことないから、慣れなくて······。

 授業が始まり、オレは気合いを出した。
「よ~し、頑張るぞ~ーー」


 ······授業が終わり、
「お母さんどうだった?」

「よかったわっ、徹は勉強も出来て偉いわよ!」

「へへっ······お母さんはこのあと」
「ーー仕事行くの、ごめんね徹」
「いいよ、一人で出来るし」

 そう言ったとき、母さんは抱き締めてくれた。

「何? お母さん」

「徹、ごめんね、一人で寂しい思いをさせて」

「わ、わかってるよ~」
 そう言うとオレの顔を見ながら、
「徹、でもね、一人で何でも出来るとは思わないで」
「え、どういうこと?」

「えっーーとね、一人じゃ出来ない事もあるって事よ」

「だってお母さん居ないし他に人いないよ?」

「そ、そうだけどね。何でも一人でやろう、から始めちゃダメ。まず皆でやれるようにするよ」

「う~ん、よくわかんない」

「え~っと~」

「お母さん仕事遅れるよ」

「あ、そうだったーー」


「······よくそんな昔の事覚えてたな」

「母さんはオレに、何でも一人で解決して周りの人を寄せ付けない子になってほしくなかったんでしょ?」

「······ああ」

「母さんみたいに会社の社長は、従業員の人達が大切だからね」
「はぁ~っ、その通りだ」
 母さんはため息をつく。
「だからオレは父さんにも協力してもらう。昔の父さんじゃないっ、今の父さんにっ!」

 オレの話を聞いて、少しの間沈黙した。

「······ちょっとでも役に立たないと思ったら追い出すからな」

「母さんーー良かったっ!」

「徹っ、すまんっ!」

「父さん、あと母さんっ。未来のために力を貸してくれっ!」

「フンッ」

「ああ」

 何かが解決した訳じゃないけれど、ようやく未来を救うために行動を開始する······。


 三人はエレベーターで再び保健室に向かう。
「······ねえ、さっき母さんは何しに保健室に?」
「ーーもう六日も眠ってる。誰だって普通じゃないと思うだろう」
「母さん······」
 どうやら、母さんは母さんなりに未来の事を何とかしようと思ったのかもしれない。
「その話なんだが」
 父さんが話すと、
「フンッ」
「母さん、協力するんだろ」
「なんだ、話せっ」

「徹から話を聴いて、未来君が六日も目覚めないとすると、“心域”の更に奥の場所に入ってしまったのかもしれない」

「“心域”の奥って?」
「いや、まだそんな研究は聞いた事はない、恐らくっーー感じでしかないが」
 オレは助けたい気持ちを落ち着かせ冷静に、
「どうして、そう思うの?」
「気候獣二匹が襲う、のではなく、融合したというのが気になってな」
「ふ~······」
 オレは背もたれしながら、

「未来が二匹の気候獣を乗り越えたから、次は融合して、未来を“心域”の更に奥に連れていった、か」
「だとするとまずいな」
「どうして、母さん」

「今の人類にそんな技術やーー手がかりもない」

「そんな······」
 絶対諦めたくはない、けど何一つ手がないのも事実······。

 エレベーターから降りて保健室に、
「話は終わったのね」
「はい、生月先生」
「······顔色一つ変えずに眠ってる、やはり普通じゃないな」
「うむ、確かにそうだな」
 すると確認したかのように出ようとする母さん、
「調べる事があるから、徹は昼を食べろっ」
「昼?」
 そういえば長い話をしていて昼食を取るのを忘れてた。
「でも、父さんは?」
「私は霞に付いていくよ」
「ーーわかった」
 父さんは母さんに付いて行く。少し心配だけどもう大丈夫だろう······。

「何故付いてきた」
「ーー君と同じ考えだろう」
「フンッ······」

 オレは食事をしながら考えていた。
「未来······どうして父さんは母さんと一緒に······」
 色々な事を思ってしまう。
 いかんいかんと頭を冷してると、
「······“心域”の奥······未来に会いたいよ······はぁ~」
 その時、
「あっ」
 ふと閃いてチャイルドの所に行くことにした······。

 午後二時半、オレはトレーニング室に向かう。そこに、

「母さん、父さん!」
「徹、お前も考えは一緒か」

「オレは、未来の精神の中に入れないかとチャイルドに訊こうと思って」

「お前もそう思ったか徹」
「母さんも?」
「ああ、だがーーチャイルド話してみろ」

「はい、まず未来と同調するには人と同調出来る専用の機械が必要です」

「機械か」

「そして人と、未来さんと同調するには、未来さんが“心を開いた人間”でなくてはいけません」

「それって······」

「フンッ、顔を赤くして、お前しかいないだろっ」
「そうだ徹」
「じゃあ、あとは人専用の同調する機会か······」

「はぁ~っ、その機会ならあたしが計画していた」

「えっ、母さんが何故?」
「······気候獣が初めて二匹現れた時ーー何となくだ」

「母さんーー未来のためにーー?」
「バカいうな、それよりも物は出来てないんだーーあんたも手伝うんだろ?」
「ああ、もちろんだ手伝わせてくれ!」
「よしっ、やろうっ、父さん母さんっ!」
「ーー調子に乗るな」
 そして作業が始まった······。
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