~マザー·ガーディアン~

ヒムネ

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      お腹の子

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 ――十月十三日、月曜日、今日からまたマザー·クリエイトに通う。実は先週の土日は何処にも行かなかった。徹の顔もやつれてたし私も無理せずに二人で過ごしたの。
「おはよう、チャイルド」
「おはようございます。未来さん実は」
「なに?」

「今日から一週間は同調は止めときましょう」

「無理は禁物ってこと?」
「はい」
「わかったわ」
 仕方のない事と思いイメージトレーニングで済ます······。

 お昼、生月先生にどれどれと見てもらう妊娠十二周目、特に問題はなかったけど、
「無理はダメよ、未来さん」
「はい······」
 相変わらずの注意······。
 そして、
「未来さん台風が発生しました。金曜日には日本に上陸すると思われます」
 しかしこの台風が上陸する事はなかった······。

 ――土曜の日私達二人は、私の実家に向かっていたの。それは私がずっと眠ってしまった時、徹が記憶を失った時に深心域の私の実家で二人は元に戻ったから······。

「お母さん」
「ああ、未来。待ってたわ~」
「スカイカー置かせてもらうね」
「お母さんこんにちは、置かせて貰いますね」
「どうぞどうぞ」
 そのあとすぐ実家の周りを散歩する。十月だから当然暑くない、紅葉に変わりかけの葉を手に取り赤から黄へとグラデーションになっているのを見てニッコリと微笑み私の心をほっこりさせる。

「ここら辺だったよね、未来と深心域で会ったの」
「うん、そうね」
 都会から離れた普通の田舎道だけど、
「······オレ、未来が言ってた真っ白い世界がホントにあって驚いたけど」
「けど?」
「何か小さな子を見かけてさ、その子に引っ張られて深心域に着いたんだ」

「え? あたしも······」
「え、ホントに?」
「うん」
「――不思議だね」
 話してて私はお腹を触りながら思った。
「······もしかして、この子だったりして」
「まさか······でも、そうかもしれないな」
 深心域の事だし解らないけど、そう想いたいの。それと、家族で早くこの子に会いたい気持ちになる······。

 実家周りを終えて、
「ただいま」
「お邪魔します」
「入って入って」
 リビングに向かい、
「電話してきて驚いたけど――とうとう?」
「ごめん、お母さん違うの」
「え~、残念ね、そう思ったのに」
「すいません、実はあの後自分、記憶無くしてしまって」
「はあ?」
「ちょっとお母さん」
 麦茶をこぼす。
「······あんた達、ホンット大変ね~、で、今は?」
「この通り、大丈夫です!」
「そう、良かったわーー」
 他にも愛や霞さん、創造さんの事も話してちょっと早めの午後三時には、
「じゃあ、あたし達そろそろ」
「え、そうなの~?」
「ごめんね」
「すいません」

「しょうがないわね、次に期待してるわ」

「うん」「はい」
 こうして私の実家を後に······。

 そして私は、来週霞さんに結婚の事を訊いてみようと思っていた······。

 ――月曜日、私は早速霞さんに結婚の事を訊こうと社長室に行ったけどそこに社員の人が、
「あ、未来さんもしかして社長に?」
「はい、社長居ますか?」
「ごめんなさい、誰も入れるなって言われてるの」
「え、そうなんだ、わかりました」
「すいません」
 仕方ないので生月先生に診てもらいに行った······。

「――そう、霞に会えなかったの~」
「はい、またお昼に会いに行ってみますけど」
「妊娠十三周目、妊娠も中期よー」
「もうそんなに」
「薬も減らすわ」
「はい」
 妊娠も中期になってお昼にも霞さんに会おうと行ってみたけど、結局会えず······。


 ――そしてまた土曜日、あれから一度も霞さんには会えない事を徹に話していた。
「ねえ徹、お義母さんに一度も会えなかったんだけど」
「母さんに?」
「そうなの」
「そういえばオレもあれから会ってなかったな~」
「お義母さんに結婚の事、許して貰おうと思ったのに······」
「未来」
「もう妊娠中期だし」

「未来!」

「あ、ごめんなさい」
「また焦ってるよ」
「······でも」

「教えてくれてありがとう。でも未来はもう、妊娠中期なら少しは気持ちに余裕持ってよ」

「え、うん~······」
 確かに焦ってる。だって何も進展してないから――でも徹のいう通り、もうちょっと様子をみてみよう······。

 それから妊娠十四周目、一回だけ霞さんに会いに行くが会っては貰えず気候獣も現れなくて、私はマザー·ガーディアンに乗る前の日常に戻った感じがしていた······。


 カレンダーを捲り、十一月の二日、私は久しぶりに愛と二人でバタフライで話をしていたの。
「何か久しぶりね、二人でここに来るの」
「ずっと未来は道長君とデートばかりしてたからね~」
「ハハッ、そうでした~」
「お腹の子はどう?」
「順調よ、特に問題ないみたい」
「何か楽しそう、見ててそう思うわ」
「そう? でも薬忘れた時とか大変だったのよ~」
「未来がそう言うなんて、一体どんな感じだったのよ」
「あのね――」愛に八月に薬を忘れた事を話すと。

「――やっぱり大変そうね~·····って、お~い、未来テンション落ちてるわよ」
「うん~、ちょっとお義母さんの事考えちゃって······」
「ホントに社長は、社員の人とかには普通に優しいのにね」
 霞さんが社員の人に好かれてて、リーダーシップとか、時には注意しながらもアドバイスする凄い人なのは分かってるけど······。
 私じゃなかったら、他の人だったら、“結婚を許すんじゃないか”さえ考えてしまう。
「愛はどう?」
「私は心配ないわ、仕事も大分なれたしね」

「そっちじゃなくて恋愛よ、れ·ん·あ·い」
 そう言ったら、愛の頬が赤くなって目が鋭く怖い顔に、
「わ、私の事はいいから、じ、自分の心配しなさいよ、バカッ!」
 愛は自分の恋バナの事になると頬が赤くなるのよねー、そういう姿が可愛いんだけど。
 こんな話を愛と目の前で喋ってる事が当たり前かもしれないけど、ふとそれが幸せなんだと感じる。

「ねえ愛、私明日また社会室に行ってみるわ」
「······会える見込みあるの?」
「見込みなんて――ない。でも、一度あって話したい」
「そう」
 愛は心配そうな顔してたけど、私は決めた······。
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