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好き、なのに······
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十一月三日、会議室で未来が、
「私、やります」
この一言でオレは頭の中が真っ白になった。
それと同時に、静かに眠る未来の姿だけが脳裏に過ぎる。あの悪夢が······。
会議が終わったあと、急いで未来のトレーニング室に入り彼女を説得するが、
『壊滅よ、いいの?』
『あたし達の故郷だって大変な事になるかも知れないって聴かされて退けって言うの?』
『お母さんに頭上がらないクセにっ!』
未来の言ってる事は正しい。本来自分にその力があるなら、その力がなければ救えないのなら身の危険も顧みずに人々のために――そうなのかもしれないけど、オレにとっては未来が······。
マンションに帰っても彼女は止めようとせず、とうとうこの日は別々に眠って終わった······。
十一月四日、朝から険悪ムードの中止めるように言うがダメ、で、会社に行く······。
あまりの辛さにお昼休み、守にLINEする。
「すまんが今日会いたい」と送ったら、
「急だな、いいけど」と返ってきて、
「仕事終わったら、守の近くに居酒屋あったよね。そこにしよう」
そして、
「分かった」
こうして仕事終わりに守と居酒屋に行く事になった······。
お互い仲悪い帰りに未来をマンションで降ろすと、
「オレ――」
「なに?」怖い目で見る未来。
「今日は守の所で夜食するから」
「え······どうぞお好きに」そう言われた。
この時オレは目の前の彼女ではなく、眠っている未来の姿しか見えていなかったのかもしれない。迷いなく守のマンションに向かった······。
蝶々駅から歩いて十五分、二十分位の所に守のマンションがある。スカイカーを近くに駐めた。インターホンを鳴らすと扉が開き、
「おお待ってたぜ、前に記憶無くしたとか驚いたが」
「ああ······」
オレは守にも、眠ってた事と記憶を無くした事をLINE電話で話していたんだ。
「元気ねえな~、またか?」
「――ああ、またかな」守に悟られ、
「とりあえず行こうぜ」居酒屋に歩いていく······。
「う、さむっ」
時間も六時過ぎなため既に日も沈んでる。なので思ったよりも寒かった。
「おい徹」
「んあ?」
「お前酒飲めねえじゃねえか」
「あ~、今日は飲んでみるかな······」
オレは精神的にいっぱいで、だから何もかも忘れてみたかったんだ。
話してると居酒屋に付き、
「いらっしゃ~」二人でカウンターに座る。
「じゃあ早速焼き鳥とビール」
「ちょっと待て~」
「ん、なんだ?」
「ここは『焼魚』って店だから、魚にしろよ」
「あ、そうなのか、じゃあ焼き魚で」
ここ『焼魚』に来たのは初めてだったから、次は気を付けよう。
「レトロな感じで落ち着くだろう」
「ああ、落ち着くな!」
何時も都会で仕事をしてるので何だか気持ちがいい。
「そうか――んで、どうしたんだよ」
笑顔が一気に暗くなり、
「未来がまたマザー·ガーディアンに乗るんだ」
「良いじゃねえか、今までそうだったんだから」そこにビールが来て、
「よし······プハーッ!」
「おいおい」
オレは一気にジョッキ一杯分のビールを飲んで、
「そうじゃねえんだ」
「ああ?」
「あいつ、また無茶するんだ」
「――そうなのか?」
「そしたらまた眠って、いや今度は死ぬかも······」
「大げさじゃあねえのか」
「大げさなもんかっ!」
つい酒の勢いで大声をだしてしまう。
「おい、静かに。すいません~」
守は店長に謝る。
「あいつはこっちが我慢してるのに、輪をかけて無茶すんだよ」
「まあ······」守もビールを一口飲み、
「隅野さんはそういう所あるわな~」
「いっつも、いっつも、いっつも、いっつもっ!」
「でも彼女の事は好きなんだろ?」
「ああ、大っ好きさっ、愛してる」
「はは、酒の力で何でも言うなお前は」
秋刀魚の焼き魚が置かれ食べると、
「うまい······ううっうっ、うっ」
今度は泣いてしまう。
「おいおい泣くなっ」
「未来ぃ、未来に会いたいよ~」
「なら会えば良いじゃねえかよ。帰るか?」
「未来の顔見ると思いだしちまうんだ」
「なにを?」
「あいつのずっと目覚めなかったあの眠った顔を、消えちまうんじゃねえかって、ううっ、うっ、二度と会えなくなるんじゃないかってよ」
守は言葉に詰まる。
そして、オレは未来を失うのが怖く、一度失いかけた事が何よりも一番深く傷を負っていたのだった。
このあともビールを飲み焼き魚を食い、守に打ち明ける。これの繰り返して、しばらくしてオレは眠ってしまい仕方なく守は未来に連絡する。そしてオレは守のマンションで爆睡するのだった······。
「私、やります」
この一言でオレは頭の中が真っ白になった。
それと同時に、静かに眠る未来の姿だけが脳裏に過ぎる。あの悪夢が······。
会議が終わったあと、急いで未来のトレーニング室に入り彼女を説得するが、
『壊滅よ、いいの?』
『あたし達の故郷だって大変な事になるかも知れないって聴かされて退けって言うの?』
『お母さんに頭上がらないクセにっ!』
未来の言ってる事は正しい。本来自分にその力があるなら、その力がなければ救えないのなら身の危険も顧みずに人々のために――そうなのかもしれないけど、オレにとっては未来が······。
マンションに帰っても彼女は止めようとせず、とうとうこの日は別々に眠って終わった······。
十一月四日、朝から険悪ムードの中止めるように言うがダメ、で、会社に行く······。
あまりの辛さにお昼休み、守にLINEする。
「すまんが今日会いたい」と送ったら、
「急だな、いいけど」と返ってきて、
「仕事終わったら、守の近くに居酒屋あったよね。そこにしよう」
そして、
「分かった」
こうして仕事終わりに守と居酒屋に行く事になった······。
お互い仲悪い帰りに未来をマンションで降ろすと、
「オレ――」
「なに?」怖い目で見る未来。
「今日は守の所で夜食するから」
「え······どうぞお好きに」そう言われた。
この時オレは目の前の彼女ではなく、眠っている未来の姿しか見えていなかったのかもしれない。迷いなく守のマンションに向かった······。
蝶々駅から歩いて十五分、二十分位の所に守のマンションがある。スカイカーを近くに駐めた。インターホンを鳴らすと扉が開き、
「おお待ってたぜ、前に記憶無くしたとか驚いたが」
「ああ······」
オレは守にも、眠ってた事と記憶を無くした事をLINE電話で話していたんだ。
「元気ねえな~、またか?」
「――ああ、またかな」守に悟られ、
「とりあえず行こうぜ」居酒屋に歩いていく······。
「う、さむっ」
時間も六時過ぎなため既に日も沈んでる。なので思ったよりも寒かった。
「おい徹」
「んあ?」
「お前酒飲めねえじゃねえか」
「あ~、今日は飲んでみるかな······」
オレは精神的にいっぱいで、だから何もかも忘れてみたかったんだ。
話してると居酒屋に付き、
「いらっしゃ~」二人でカウンターに座る。
「じゃあ早速焼き鳥とビール」
「ちょっと待て~」
「ん、なんだ?」
「ここは『焼魚』って店だから、魚にしろよ」
「あ、そうなのか、じゃあ焼き魚で」
ここ『焼魚』に来たのは初めてだったから、次は気を付けよう。
「レトロな感じで落ち着くだろう」
「ああ、落ち着くな!」
何時も都会で仕事をしてるので何だか気持ちがいい。
「そうか――んで、どうしたんだよ」
笑顔が一気に暗くなり、
「未来がまたマザー·ガーディアンに乗るんだ」
「良いじゃねえか、今までそうだったんだから」そこにビールが来て、
「よし······プハーッ!」
「おいおい」
オレは一気にジョッキ一杯分のビールを飲んで、
「そうじゃねえんだ」
「ああ?」
「あいつ、また無茶するんだ」
「――そうなのか?」
「そしたらまた眠って、いや今度は死ぬかも······」
「大げさじゃあねえのか」
「大げさなもんかっ!」
つい酒の勢いで大声をだしてしまう。
「おい、静かに。すいません~」
守は店長に謝る。
「あいつはこっちが我慢してるのに、輪をかけて無茶すんだよ」
「まあ······」守もビールを一口飲み、
「隅野さんはそういう所あるわな~」
「いっつも、いっつも、いっつも、いっつもっ!」
「でも彼女の事は好きなんだろ?」
「ああ、大っ好きさっ、愛してる」
「はは、酒の力で何でも言うなお前は」
秋刀魚の焼き魚が置かれ食べると、
「うまい······ううっうっ、うっ」
今度は泣いてしまう。
「おいおい泣くなっ」
「未来ぃ、未来に会いたいよ~」
「なら会えば良いじゃねえかよ。帰るか?」
「未来の顔見ると思いだしちまうんだ」
「なにを?」
「あいつのずっと目覚めなかったあの眠った顔を、消えちまうんじゃねえかって、ううっ、うっ、二度と会えなくなるんじゃないかってよ」
守は言葉に詰まる。
そして、オレは未来を失うのが怖く、一度失いかけた事が何よりも一番深く傷を負っていたのだった。
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