55 / 63
緊急事態
しおりを挟む
――徹が大地君のマンションに泊まった次の日、朝にLINE来ていて、
「八時頃に迎えに行く」とだけあり、『ごめん』の一言も無しという事は、きっとまだ反対なのね。そう思うとため息が出る。そんなわけで八時に外で待っていた五分後に、
「お待たせ」
「別に······」
言いかけてスカイカーの助手席に乗った。
お互い無言のままでいたら、
「あ~頭痛っ」
そう言っていたのでそっぽ向きながら、
「飲みすぎるからよ、身から出た錆でしょ」
心配だけど。
「もー、分かってるよ······気持ち、変わってないの?」
「うん、変わってない」
「そっかー、今日も飲もうかな~」
「はあ?」
こんな感じで仲悪いまま会社に向かった。
しかし、お昼の時間に試練が訪れる。
――朝の訓練もお昼になった事で一旦休憩し、食堂に行く。
食堂の中を見渡すが、
「愛は~······居ないか~、少し待つかな~」
とその時走る音がして、
「ハァ、ハァ、未来、ここに居たのね!」
「あ、愛っ、どうしたの?」
「社長が呼んでるのっ、しかも緊急でっ」
「分かった!」
また大変な事が起きたのか、私達は急いで社長室に足を運んだ。
「失礼します」
「来たか」
「一体何が? 社長」
「お前を呼んだのは、今大変な事になってしまったからだ」
霞さんの顔は険しく、声がいつもより暗い。
だから私も心して、
「どんな、事ですか?」
「一昨日の会見で一週間後に台風が二つ来るはずだった。だがその後、何故か急激にスピードを上げて······二つの台風は、明日の午前二時頃には日本の神奈川に上陸しちまうんだ!」
「え、そんなっ」愛は驚き、
「あ、あっあっ」私は言葉が出なかった。
そこに走ってきた徹が、
「未来、ハァ、ハァ」
「徹······」
更に創造さんも、
「徹、未来君」
皆その場でどうしようもない事を悟ったかのように静まり、地球の偉大さと恐ろしさ、人間の無力さを感じとっていた。
でも、
「社長、私は行きます!」
「未来?」
「予定通り、私はマザー·ガーディアンで止めます」
「未来君」
「未来っ、まだわからないのかっ!」
「わからないのは徹よ、なに、またやめろって言うの? 言ったでしょっ、私が退けば沢山の被害が出るって、だからやめるつもりはないっ!」
「何でだよ、どうして分かってくれないんだよっ!」
「ちょっと待て徹!」
「未来も!」
創造さんと愛が二人を止めに入る。
「オレに自分の好きな人と······子供を同時に失えって言うのかよ」
私は居ても立っても居られなくなり、
「未来、どこ行くの?」
「トレーニング室に戻る。私はそこに居るので準備出来たら呼んで下さい」
「分かった」
霞さんの声を聞いた後社長室を出た。
「ハァ、ハァ、どうしてわかってくれないの」
そう言いながらトレーニング室まで歩く······。
トレーニング室でシミュレーションマシンの中に入る。
「はぁ~······」
「どうしました未来さん、もしかして徹さんの事ですか?」
「聞いてたの?」
「いえ、そう思いました」
「AIにも勘とかあるのね」
「いえそういう訳では、お辛そうですね」
「······辛いけど、これ終わったらまた仲良くなるわよ······多分」
「そうですか······仮眠でもしますか?」
「えー、どうしようかな~」
「頭の中がスッキリしますよ」
今よりはマシかもと思い、
「ん~じゃあ、そうするわ」仮眠する······。
「――オレに自分の好きな人と子供を同時に失えって言うのかよ!」
「トレーニング室に戻る。私はそこに居るので準備出来たら呼んで下さい······」
未来は止めるつもりはない。どんなに言っても······どうして。
「未来!」
「心拠君、今は未来君を一人にした方が良い」
「······はい」
「よし、準備をするぞ」
「ちょっと待てよっ!」
「道長君」
「徹っ?」
オレは母さんの胸ぐらを掴む。
「母さんは本気で未来をマザー·ガーディアンに!」
「アイツが言ったろ。準備出来たら呼べってな」
「母さん!」
「離せっ」
左手で払い、右手でオレの肩をどかす。
「心拠」
「はい!」
「仕事に戻れ」
「でも······」
「こんなバカに関わるだけ時間の無駄だからな」
「なんだと!」
「よせ徹!」
「父さんっ」
母さんはオレに背中を向けて言う、
「変わったな徹、とても今のお前からはあたしの知ってる徹とは思えないよ。それじゃあ、あたしに結婚の許しは出ないし、アイツにも愛想を尽かされちまうさ」
「······未来から?」
「行くぞ心拠」
「はい」
「それと創造、ソイツはあんたの好きにしな。なんなら連れていっても一向に構わないよ」
そう言い捨て、母さんと心拠さんは出て行ってしまった。
「徹······」
父さんが声を掛けてきたが返事をせずにいると続ける。
「今のお前に何を言ってもダメだろうから私も霞達の手伝いに行くが、落ち着いたらまた話そう」
そして父さんも出て行って、オレは社長室に一人になった······。
一時間、二時間とず~っと地べたに座り、壁に背をつけて未来の事を思うと眠っている彼女が見えては、何が悪いのか考えていた。
そんな状態で居た時に扉が開き、
「徹、まだここに居たのか」
「父さん······どうすれば良いのか、分からなくて」
「屋上に行って気分でも変えないか?」
ずっと社長室に居たからと、屋上に父さんと足を運ぶ······。
「八時頃に迎えに行く」とだけあり、『ごめん』の一言も無しという事は、きっとまだ反対なのね。そう思うとため息が出る。そんなわけで八時に外で待っていた五分後に、
「お待たせ」
「別に······」
言いかけてスカイカーの助手席に乗った。
お互い無言のままでいたら、
「あ~頭痛っ」
そう言っていたのでそっぽ向きながら、
「飲みすぎるからよ、身から出た錆でしょ」
心配だけど。
「もー、分かってるよ······気持ち、変わってないの?」
「うん、変わってない」
「そっかー、今日も飲もうかな~」
「はあ?」
こんな感じで仲悪いまま会社に向かった。
しかし、お昼の時間に試練が訪れる。
――朝の訓練もお昼になった事で一旦休憩し、食堂に行く。
食堂の中を見渡すが、
「愛は~······居ないか~、少し待つかな~」
とその時走る音がして、
「ハァ、ハァ、未来、ここに居たのね!」
「あ、愛っ、どうしたの?」
「社長が呼んでるのっ、しかも緊急でっ」
「分かった!」
また大変な事が起きたのか、私達は急いで社長室に足を運んだ。
「失礼します」
「来たか」
「一体何が? 社長」
「お前を呼んだのは、今大変な事になってしまったからだ」
霞さんの顔は険しく、声がいつもより暗い。
だから私も心して、
「どんな、事ですか?」
「一昨日の会見で一週間後に台風が二つ来るはずだった。だがその後、何故か急激にスピードを上げて······二つの台風は、明日の午前二時頃には日本の神奈川に上陸しちまうんだ!」
「え、そんなっ」愛は驚き、
「あ、あっあっ」私は言葉が出なかった。
そこに走ってきた徹が、
「未来、ハァ、ハァ」
「徹······」
更に創造さんも、
「徹、未来君」
皆その場でどうしようもない事を悟ったかのように静まり、地球の偉大さと恐ろしさ、人間の無力さを感じとっていた。
でも、
「社長、私は行きます!」
「未来?」
「予定通り、私はマザー·ガーディアンで止めます」
「未来君」
「未来っ、まだわからないのかっ!」
「わからないのは徹よ、なに、またやめろって言うの? 言ったでしょっ、私が退けば沢山の被害が出るって、だからやめるつもりはないっ!」
「何でだよ、どうして分かってくれないんだよっ!」
「ちょっと待て徹!」
「未来も!」
創造さんと愛が二人を止めに入る。
「オレに自分の好きな人と······子供を同時に失えって言うのかよ」
私は居ても立っても居られなくなり、
「未来、どこ行くの?」
「トレーニング室に戻る。私はそこに居るので準備出来たら呼んで下さい」
「分かった」
霞さんの声を聞いた後社長室を出た。
「ハァ、ハァ、どうしてわかってくれないの」
そう言いながらトレーニング室まで歩く······。
トレーニング室でシミュレーションマシンの中に入る。
「はぁ~······」
「どうしました未来さん、もしかして徹さんの事ですか?」
「聞いてたの?」
「いえ、そう思いました」
「AIにも勘とかあるのね」
「いえそういう訳では、お辛そうですね」
「······辛いけど、これ終わったらまた仲良くなるわよ······多分」
「そうですか······仮眠でもしますか?」
「えー、どうしようかな~」
「頭の中がスッキリしますよ」
今よりはマシかもと思い、
「ん~じゃあ、そうするわ」仮眠する······。
「――オレに自分の好きな人と子供を同時に失えって言うのかよ!」
「トレーニング室に戻る。私はそこに居るので準備出来たら呼んで下さい······」
未来は止めるつもりはない。どんなに言っても······どうして。
「未来!」
「心拠君、今は未来君を一人にした方が良い」
「······はい」
「よし、準備をするぞ」
「ちょっと待てよっ!」
「道長君」
「徹っ?」
オレは母さんの胸ぐらを掴む。
「母さんは本気で未来をマザー·ガーディアンに!」
「アイツが言ったろ。準備出来たら呼べってな」
「母さん!」
「離せっ」
左手で払い、右手でオレの肩をどかす。
「心拠」
「はい!」
「仕事に戻れ」
「でも······」
「こんなバカに関わるだけ時間の無駄だからな」
「なんだと!」
「よせ徹!」
「父さんっ」
母さんはオレに背中を向けて言う、
「変わったな徹、とても今のお前からはあたしの知ってる徹とは思えないよ。それじゃあ、あたしに結婚の許しは出ないし、アイツにも愛想を尽かされちまうさ」
「······未来から?」
「行くぞ心拠」
「はい」
「それと創造、ソイツはあんたの好きにしな。なんなら連れていっても一向に構わないよ」
そう言い捨て、母さんと心拠さんは出て行ってしまった。
「徹······」
父さんが声を掛けてきたが返事をせずにいると続ける。
「今のお前に何を言ってもダメだろうから私も霞達の手伝いに行くが、落ち着いたらまた話そう」
そして父さんも出て行って、オレは社長室に一人になった······。
一時間、二時間とず~っと地べたに座り、壁に背をつけて未来の事を思うと眠っている彼女が見えては、何が悪いのか考えていた。
そんな状態で居た時に扉が開き、
「徹、まだここに居たのか」
「父さん······どうすれば良いのか、分からなくて」
「屋上に行って気分でも変えないか?」
ずっと社長室に居たからと、屋上に父さんと足を運ぶ······。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる