~マザー·ガーディアン~

ヒムネ

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       告白

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 ――午後十時十六分、渋滞も越えて神奈川県に着いたが、
「霞、他の社員達はいないようだが」
「どういう事母さん」
「······多分波が強くなってきて移動したはず」
 すると母さんは会社用の携帯をポケットから出して、
「ちょっと母さん携帯」
「ああ、会社用で未来には掛からない······もしもし」

「社長」

「今どこにいる?」
「はい、私達は大磯町役場近くに避難しています」
「そうか、おい創造」
「うむ、徹、スマホで道案内頼む」
「ああ」
 父さんが運転し、オレが道を指示しながら進み······。

「見えた、あれか」
 社員のキャンピングカーがありすぐドアを開けて、
「おい徹!」
「道長君!」
 外は台風による強風と大雨、なのであっという間に濡れたが、社員のキャンピングカーに何とか入り、
「未来は?」
「隅野さんは、もうマザー·ガーディアンに乗って気候獣を待っています」
 そこに、

「コラッ、徹!」

 同じく濡れた母さんが、
「ったく」
「社長」
「どうなんだ?」
「未来がマザー·ガーディアンに乗ってて、通信ですぐ」
「待てっ」
「え、何で??」
「アイツが集中してるんだろ。邪魔するな」
「でも」
「様子見だ、わかったか」
「ああ」
 落ち着いて見守る事にした。

 その五分後に、
「おい開けろ徹!」
「え?」
 すぐ開けた。
「だー、濡れたー」
「もう最悪なんですけど」
「ハァハァ、皆すまんな」

「徹、俺達でコイツ持ってきといたぞ」

「あ、ごめん」
 父さんと守、心拠さんがH·T·Mを、父さんの研究用白衣で被せて台風の中を持ってきてくれた。
「それで未来は?」
「もう気候獣に構えてる」
 そう言って五人と社員の人とでモニターを見守る······。

 十時五十分、
「······気候獣だ!」
「でも、何か変じゃない?」
 その気候獣は今までとは違って大人しい。

 でも何事もなく同調は成功したようだ。

「よかった······」
「でも、もう一つ来るわよ」
 心拠さんの言う通り、まだ油断は禁物だ。

 そしてその言葉が現実になる。

 次の気候獣が現れて、
「何だあの気候獣は、早い!」
 それでも未来のマザー·ガーディアンが触れようとした時、

「手が、マザー·ガーディアンの右の手が消えたよ、母さん!」

「消えるとすればそれは――」
「それは?」

「恐らく奴の精神が錯乱しているのかもしれん」

「錯乱だってっ!」


  オレのせいだ。


「母さん!」

「何だっ」

「すぐチャイルドにH·T·Mの周波数を合わすように言ってくれっ」
「道長君、一体」
「ごめん、説明してる暇はないんだっ」

「徹······」

「守、スイッチ押す準備しといて!」
「お、おう」
 言われた通りにスイッチを構える。

「チャイルド、聞こえるかっ?」

「······はい」
「すぐに」
 その時、

「そんな、これじゃ、うわっ!」
「避けて!」

 未来の声が、
「母さん、早く!」

「チャイルド、マザー·ガーディアンにH·T·Mの周波数を合わせろ」

「分かりました」
 その間にも、

「ううっ······く、うっ······」

「何だよ、この声――」
「未来っ、泣いてるの? 未来っ!」
「くっ、未来君」

「母さん、まだかっ!」
「ああ、まだだ!」

「ご······なさい······おる······たし、ううっ」

「まずい、マザー·ガーディアンへのダメージが、徹っ!」
「わかってるっ!」
 オレはH·T·Mのゴーグルを被る。

「母さん!」
「行け、徹!」
「守、スイッチを!」
「オラッ」

 H·T·Mが起動した·····。


「とおる、助けて」

 ――白い空間に着いて、
「未来、どこだ······あ、君は!」
 小さな子が、
「もしかして」
 オレはその子に付いていったら。

「ううっ、助けて徹ぅ······」

「未来」
 体育座りで泣いている。
「とお、る?」

 彼女に安心し近づくと、

「ぐすっ、あたしを怒りに来たんでしょっ!」

「そんな」

「あなたの言う通りにしないせいで、あたしがこうなったって言いたいんでしょ。あたしの、あたしの頑張りが足りないって······そう言いたいんでしょっ、ううっ」

 「違うよ」

「それとも、ぐすっ、別れる、きなんでしょ······ううっ」

 こんなに弱っている彼女を、未来を初めて見た。ずっと耐えて我慢していたんだ、オレや子供のために、こんなになるまでずっと。

 なら、オレが君に言えるのは、

「未来······改めて君に言いたい事がある」

「ぐすっ、何よ」


「結婚してください」


「えっ······何よ急に······」

「何かさっ、勝手に話が進んじゃったけど、ちゃんと告白してないから」

「怒ってないの? 別れる、とか······」


「だからちゃんと目の前で言ってるだろ、君を愛してる。結婚して下さいって」


「バ、バカじゃないの······こんな、大変な時に」

 オレは彼女に近づき抱きしめる。

「ごめんな、全部オレが悪かったんだ。未来をこんなに追いつめて」

「徹、泣いてるの?」

「ううっ、目の前でいつも君が居たのに······眠ってしまった未来の事ばかり見て、今の未来をちゃんと見なかったから、だからっ」

「知ってるよ」
「え?」

「知ってたから、あたしが頑張らなきゃって思ったの、あたしのせいだったから······でも無理だった、ぐすっ、この仕事終わらせてあなたに会うはずだったのに」

「もういいんだ未来。君はもう一人じゃない、ずっとオレが君のそばにいるから、未来」

「何か、悲しいじゃなくて、嬉しくて涙でる、ぐすっ」

 彼女の辛さと嬉しさが伝わるこの空間。そしてそれは、未来も一緒なんだ。

「未来」

「ううっ······徹、ありがとね」
 戦いはまだ終わっていないから、
「また徹が記憶を失っちゃうかも知れないし」

「そうだった。あれ、未来そのイヤリング」

「きっとまた、笑えるって信じたかったから」

「そっか、信じてくれてありがとな、未来」

「効果あったね」

「そうだね」

「じゃあ、戻ろう!」

「その前に未来の答え訊きたい」

「フフッ、結婚は······しますっ!」

 笑顔で答え二人は手を重ねる······。
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