~マザー·ガーディアン~

ヒムネ

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      何となく

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 次の日、私は休日なので一人昨日の徹の話を思い出していた。
「お義母さん凄いな~······そうだっ」
 私は何となくという気持ちでLINE電話を掛ける。

「もしもし―っ」
 相変わらずの明るい声、
「もしもし、お母さん」
「うっそ~、未来ぃ~。久しぶりに声聞けてママ嬉しいーわ~」
「ママ······じゃなかった。お母さん、相変わらず元気なんだから」
「いいじゃないのママで~、家にいる時はいつもママだったじゃな~い」
「そうだけど······」
「それで、どうしたの?」

「何となく声聞きたかっただけよ」

「なんか元気ないわね。徹君とケンカでもしたー?」
「ううん、徹とは上手くいってるよ――徹とはね」
「ホントッ、それはよかった~」
「だから、声聞きたかっただけだから、じゃあね」
 LINE電話を切った。
「何やってるんだろ私······」
 自分の親に電話しても解決する訳じゃないのに。この時、日増しに不安になっていたのかもしれない······。

「大丈夫?」
 私は昨日の事を生月先生に話していた。
「お義母さんは凄いなって思って」
「······自身がなくなったのね」
「そう、かもしれないです」

 徹を一人で育て、会社を創るなんて――凄すぎて霞さんとの距離を感じてしまう。分かっていたはずなのに、認めてもらう隙があるのだろうかと。

「無理もないわ、妊娠しながら機械に乗って、更に霞に認めさせようなんて、あなたも十分凄いことしてる。自身を持って」
「はい」
「妊娠も七週目、体調はどう?」
「大丈夫です」
「そう、じゃあまた気持ちが病んだら来てね」
「ありがとうございます、生月先生」
 生月先生に感謝しながら保健室を後にした······。

 トレーニング室で訓練を開始し、いつものようにイメージトレーニングを行う。
 最近は、気候獣の事にも慣れてきたからチャイルドの注意やアドバイスも減ってきたの。

「······未来さん、お昼です」
「うん、わかった」
 チャイルドに言われ昼食に向かおうとドアを開けると、

「未~来」
「わっ、愛~」
 私がびっくりしたのは愛だった。
「どうしたの?」
「未来とお昼食べようと思って」
 愛がマザー·クリエイトに勤めて一週間くらい経つ、私はまだ彼女がこの会社にいることになれてないけど。
「そうだったのね、っで、ここはどう?」
「前の会社よりやりがいあって楽しいわっ」
「じゃあ続けられるね」

「ちょっと未来。あたしがここで働くの、まだ納得してないでしょっ」

「え~、そんなこと······あるような、ないような~」
「未来っ、あたしに嘘付いたこと、忘れてるんじゃないの?」
「うっ、それは~」
「自分の事、棚に上げないでよねっ」
 愛の言う通り先に嘘ついたのは私、間違ってたのかなと思わせられる。
「ほら、ここで喋ってないで、食堂行こう」
 そしてお昼に向かった。それと、この時の会話をチャイルドは聞いてたみたい······。

 食堂に着き私が食事を並べていた。そしたら、
「あら、意外と少ないのね」
 茶碗一杯のご飯、お味噌汁、ハンバーグと野菜、ひじき、パイナップル、
「少ない?」
「いやっ、妊娠してる人ってもっと食べると思って」
「沢山食べる人もいると思うけど、私はいつもこんな感じよ」
 と言いつつ愛のメニューは、茶碗一杯のご飯、豚カツと野菜、唐揚げ、
「愛は脂質取りすぎなんじゃないの?」
「食べたい物は食べるの、大丈夫、夜たくさん食べる訳じゃないし」
「しっかりしてるわね」
「未来はさー、社長とどうなったの、あれから」

 私は細目で口を尖らせて、

「特に進展なしよ」
「そっか······まぁ、焦らない事ね」
「分かってるわよ」
 何か耳にタコができるほど言われる。だって結婚出来ると思ってたんだもん、ホントにさ······。

 お昼を食べたあと、愛と別れて訓練を再び開始する。
「チャイルドよろしく!」

「······未来さん、妊娠とは、どんな気持ちですか?」

「何、急に?」
「妊娠とは、どんな気持ちなんですか?」
「凄く嬉しいよ」
 これ以降チャイルドが質問することはなく、いつも通りに戻った······。
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