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二人の祈り
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「えっ、今日行ったのに?」
「うん、行きたい場所があるのっ」
「ふ~ん――」
その夜スマートフォンに着信が、実家からだ。
「もしもし」
「あ、お母さん」
「大丈夫なの?」
「うん、ちょっと疲れてるけど大丈夫――言った通りだったでしょ?」
「でも観た感じ、やられてない?」
「う~ん······」
また心配をかけまいと嘘付きそうになったけれど、
「正直ヤバいとこだった」
「えっ?」
「でも、何とかなったの、ホントに――だから」
「分かってるわよ、ちょっと心配だけど」
「ありがとうお母さん、それとお父さんにもありがとうって伝えといて」
「わかった言っとくわ、じゃあ最後に」
「何?」
「あなたは一人じゃないの、だから少しは私達も頼りにしてね」
「うん、ありがとねママ、じゃあっ」
LINE電話を切った。
「どうだって?」
「最初は心配してたけど、正直に言ったら『分かってる』って、あと『あなたは一人じゃない』って」
「そうか」
正直に話したからなのか、この時ちょっと実家に戻りたくなった自分がいた······。
次の日、私達は東名高速道路をスカイカーで走っていた。
「ふ~ん『恋路ヶ浜』ね~」
「最近蝶都から出てなかったしさっ」
「いや、未来は色々行ってると思うんだけど」
「しーごーとーでーねっ、あ~楽しみだわ」
蝶都から愛知まで大体四時間くらい、なのでお昼に着くように朝八時にはマンションを出てたの。
スカイカーを走らせ十二時頃······。
「着いたーっ、ここ、ここっ!」
「未来、お昼は?」
「あとでいいよ!」
そこには、美しいエメラルドグリーンの海と砂浜の景色が、
「ここか~、綺麗だね~、空も青いし」
更に少し、スカイカー進んだ距離に、
「あーっ、あれよあれ」
「ちょっと待って、駐車するから」
スカイカーを駐車場に止めた。
「行こー行こーっ、徹!」
「ちょっと興奮し過ぎだよ」
「いいじゃん!」
行った先には、石の門のような感じで上に鐘が付いている、『幸せの鐘』。
「それで、どうするの?」
「え~っとね······恋人達が祈りを込めて鐘を鳴らす、だって」
「うん分かった、やろう」
両手を合わせ二人で祈り、
「鳴らすよ」
「うん」
鐘がなり響く······。
「ふ~、徹は何祈ったの?」
「未来と同じだよ」
「ちょっと知りたいな~」
「次は何だろう」
教えてくれなかったけど、とりあえず次は、『願いの叶う鍵』に向かう。といっても、すぐ後ろにあるんだけど、
「あ、鍵が掛けてある」
愛のメッセージを書いて、願いながら掛けるみたい。なので、近くのお店で『しあわせの鍵』を2つ買い、
「何て書こうか」
「う~ん」
二人で考え、私達の願いはこれしかないと思った。
――結婚出来ますように······。
時間も午後一になり、スカイカーで飲食店を探して食事を取ったとき徹から、
「なぁ未来、夕日みたいんだけど、いいかな?」
「うん、付き合うわよ!」
――ドライブして、途中で寄り道したりなんかして午後六時になった頃。
「あー、これだよ」
「へ~――何か心奪われる感じね。徹はこれが観たかったんだ~」
二人砂浜でオレンジ色の夕焼けを眺めていると隣に徹が来て、
「さっき、『恋路ヶ浜』の由来、読んだんだ」
「由来?」
恋ゆえに都を追われた高貴な男女。女は『恋路ヶ浜』に、男は裏浜に人目をさけて住み、二人は逢瀬もままならないまま病に倒れ、お互いの名前を呼びながら亡くなった。その女の心は女貝に、男の心はミル貝になった。
「······悲しいね、その二人」
話を聞いたあとの黄昏る海が切なく観える。
「でも、この二人は亡くなるまで諦めなかったはず」
「うん、きっと――そう思う」
「だからオレ達二人へのメッセージなんだよ」
「どんな?」
「絶対に、結婚を諦めるなってさ」
「······うん、そうね!」
話の終わりと共に日は沈んでいった······。
「帰ろうか」
「ええ、そういえば徹、『幸せの鐘』で何祈ったの? もう教えてよ」
「それは――『未来と幸せに暮らせますように』ってね、未来は?」
「私は······」
ーー徹と一生幸せになりますように······。
「うん、行きたい場所があるのっ」
「ふ~ん――」
その夜スマートフォンに着信が、実家からだ。
「もしもし」
「あ、お母さん」
「大丈夫なの?」
「うん、ちょっと疲れてるけど大丈夫――言った通りだったでしょ?」
「でも観た感じ、やられてない?」
「う~ん······」
また心配をかけまいと嘘付きそうになったけれど、
「正直ヤバいとこだった」
「えっ?」
「でも、何とかなったの、ホントに――だから」
「分かってるわよ、ちょっと心配だけど」
「ありがとうお母さん、それとお父さんにもありがとうって伝えといて」
「わかった言っとくわ、じゃあ最後に」
「何?」
「あなたは一人じゃないの、だから少しは私達も頼りにしてね」
「うん、ありがとねママ、じゃあっ」
LINE電話を切った。
「どうだって?」
「最初は心配してたけど、正直に言ったら『分かってる』って、あと『あなたは一人じゃない』って」
「そうか」
正直に話したからなのか、この時ちょっと実家に戻りたくなった自分がいた······。
次の日、私達は東名高速道路をスカイカーで走っていた。
「ふ~ん『恋路ヶ浜』ね~」
「最近蝶都から出てなかったしさっ」
「いや、未来は色々行ってると思うんだけど」
「しーごーとーでーねっ、あ~楽しみだわ」
蝶都から愛知まで大体四時間くらい、なのでお昼に着くように朝八時にはマンションを出てたの。
スカイカーを走らせ十二時頃······。
「着いたーっ、ここ、ここっ!」
「未来、お昼は?」
「あとでいいよ!」
そこには、美しいエメラルドグリーンの海と砂浜の景色が、
「ここか~、綺麗だね~、空も青いし」
更に少し、スカイカー進んだ距離に、
「あーっ、あれよあれ」
「ちょっと待って、駐車するから」
スカイカーを駐車場に止めた。
「行こー行こーっ、徹!」
「ちょっと興奮し過ぎだよ」
「いいじゃん!」
行った先には、石の門のような感じで上に鐘が付いている、『幸せの鐘』。
「それで、どうするの?」
「え~っとね······恋人達が祈りを込めて鐘を鳴らす、だって」
「うん分かった、やろう」
両手を合わせ二人で祈り、
「鳴らすよ」
「うん」
鐘がなり響く······。
「ふ~、徹は何祈ったの?」
「未来と同じだよ」
「ちょっと知りたいな~」
「次は何だろう」
教えてくれなかったけど、とりあえず次は、『願いの叶う鍵』に向かう。といっても、すぐ後ろにあるんだけど、
「あ、鍵が掛けてある」
愛のメッセージを書いて、願いながら掛けるみたい。なので、近くのお店で『しあわせの鍵』を2つ買い、
「何て書こうか」
「う~ん」
二人で考え、私達の願いはこれしかないと思った。
――結婚出来ますように······。
時間も午後一になり、スカイカーで飲食店を探して食事を取ったとき徹から、
「なぁ未来、夕日みたいんだけど、いいかな?」
「うん、付き合うわよ!」
――ドライブして、途中で寄り道したりなんかして午後六時になった頃。
「あー、これだよ」
「へ~――何か心奪われる感じね。徹はこれが観たかったんだ~」
二人砂浜でオレンジ色の夕焼けを眺めていると隣に徹が来て、
「さっき、『恋路ヶ浜』の由来、読んだんだ」
「由来?」
恋ゆえに都を追われた高貴な男女。女は『恋路ヶ浜』に、男は裏浜に人目をさけて住み、二人は逢瀬もままならないまま病に倒れ、お互いの名前を呼びながら亡くなった。その女の心は女貝に、男の心はミル貝になった。
「······悲しいね、その二人」
話を聞いたあとの黄昏る海が切なく観える。
「でも、この二人は亡くなるまで諦めなかったはず」
「うん、きっと――そう思う」
「だからオレ達二人へのメッセージなんだよ」
「どんな?」
「絶対に、結婚を諦めるなってさ」
「······うん、そうね!」
話の終わりと共に日は沈んでいった······。
「帰ろうか」
「ええ、そういえば徹、『幸せの鐘』で何祈ったの? もう教えてよ」
「それは――『未来と幸せに暮らせますように』ってね、未来は?」
「私は······」
ーー徹と一生幸せになりますように······。
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