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答えがほしい
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「――これがっ、ブラック・オーブ……でもヴィゴーレ」
「そうよ、この硝子の中にあるのは紛れもないブラック・オーブ」
四角い硝子の中の中心に黒い光を放つブラック・オーブがあるも、どうやらこの中から取り出すことは出来ないようだ。爪で引っ掻こうともこの分厚さは流石に無理だし。
「エメール、魔法剣で何とかならないかな」
「無理だと思いますが」
「無理よネモネア、この硝子は並大抵の武器や魔法じゃどうにもならないわ。おまけに伝説のナンチャラとかで無理に壊そうとすればブラック・オーブが割れてしまうかもしれない」
「えー……そんな~、何とかならないの?」
「それが出来たらとっくにオーブを取ってるわ」
せっかくブラック・オーブにたどり着いたのに打つ手なし。あたいはその場でしょぼくれてしまう。
「このくらいのことで情けない……ところで先程おっしゃった魔王と女神の事を訪ねたいのですが」
「うむ、まずあれを見よ」
シスター・ファスが杖で窓の外を指すのは、空ではなく光る謎の壁。
「あれは紛れもなく女神フラデーアの光の壁」
「なにっ、本当ですかシスター・ファスッ」
「女神、是非お目にかかりたい!」
「女神フラデーア……おとぎ話と思ってたのに、おいネモネア聞いていたかっ?」
「うん……」
「ではシスター・ファス、この世界に魔獣をもたらしたのは」
今度はエメールが訪ねるとシスター・ファスはゆっくりと頷く。
「魔王の仕業じゃ」
やっぱり魔王がもたらしていたこの事態、だけどどういうことなんだろうか。あたいの気持ちは沈みながらも頭の中には魔王ルモールではなくもう1人の魔王が実在すると考えていた。ならなおさらブラック・オーブを解かないと。
「あの、シスター・ファス、ブラック・オーブの封印を解くにはどうすればいいんですか?」
「ネモネア、お前まだ」
「もう1人の魔王が存在するなら……だからこそ必要だろ? モント」
「あのな、それが分かれば」
「封印を解く方法はある」
「「え?」」
「四角い硝子の上に窪みがあるの、それよ」
ヴィゴーレに言われて硝子の上を調べるとたしかにある4つの窪み。なんか凸凹して変な感じ。
「そこに必要なのが幻の結晶花よ」
「ネモネア・プリンセスッ……もしかして」
「え、あれかっ!」
青い薔薇ならあたいとエメールは知っている。すぐさまあたいは胸の間から『青い薔薇』を出す。
「ふおっ、これはまさしく『青い薔薇』! ヴィゴーレ、付けて見るんじゃ」
『青い薔薇』を受けとったヴィゴーレが硝子の上からセットするとしっかりとはまる。
「お前さんたち、何処でこれを」
シスター・ファスに説明する。それはグランジウム南東の草むらで、そこであたいは一度は死を覚悟した場所だと。
「――ネモネアとエメール、そんなことが」
「うん、エメールが助けてくれなかったらあたいは死んでた」
「プリンセスの為ならたとえ火のなか水の中、必ずお助けいたします」
「これを見つけたということは……お主達なら本当にブラック・オーブの封印を解けるかもしれん」
「ホントにっ? やった!」
シスター・ファスが続けて話してくれた。それはこの世界ツオーゴの丁度南にこの『青い薔薇』があった。なので残り3つは世界の地図から見て北、東、西にあるはずだとファスは語る。
「北と東と西、モント、エメールはやく行こう」
「おいちょっと待て、ネモネア」
「いいから……ヴィゴーレ」
あたいの目の前にはシスター・ヴィゴーレが眉尻を下げ不安そうにしていた。
「ネモネア……」
「ヴィゴーレ……」
「あたしは知らないことを色々と聞いて不安なの……ねえネモネア、もしブラック・オーブを手に入れても世界をどうこうするとかじゃないでしょ?」
「……この世界にはあたいが護りたい人たちが沢山いる、冒険で出会った人も、シスター・カルタの友だちのシスター・ヴィゴーレ、あなたも」
「あたしもって」
「あたいがブラック・オーブを求めるのは、力が欲しいとか世界をどうにかしたいとかじゃない」
「おしえてネモネア」
「……好きな人の、答えがほしいの」
「え、好きな、ひとって……あんたホントに想い人を探す乙女だったわけ?」
「ある戦いであたいはその人に告白したんだけど……よくわからないまま終わっちゃって。だから今度はちゃんと答えを聞きたい」
「……なによ、はぁ~っ、ロマンチックな乙女の顔をしてっ、よくわからない事もあるけどもうドキドキッ……何か安心したわ、いってらっしゃいネモネア」
「わかってくれて、ありがとうシスター・ヴィゴーレ」
身体は男性で心は女性のシスター・ヴィゴーレは分かってくれたらお姉さんの様な眼差しであたいを見送ってくれた。そんな彼女におじきをして、新たな水晶花を探しを始めるためラングネスを後にする……。
――そんなあたいらがラングネスを出た頃、この世界ツオーゴの青い空、のさらに上の宇宙。
「フッ、美しいな女神フラデーア」
「もうおやめなさい、魔王――」
「そうよ、この硝子の中にあるのは紛れもないブラック・オーブ」
四角い硝子の中の中心に黒い光を放つブラック・オーブがあるも、どうやらこの中から取り出すことは出来ないようだ。爪で引っ掻こうともこの分厚さは流石に無理だし。
「エメール、魔法剣で何とかならないかな」
「無理だと思いますが」
「無理よネモネア、この硝子は並大抵の武器や魔法じゃどうにもならないわ。おまけに伝説のナンチャラとかで無理に壊そうとすればブラック・オーブが割れてしまうかもしれない」
「えー……そんな~、何とかならないの?」
「それが出来たらとっくにオーブを取ってるわ」
せっかくブラック・オーブにたどり着いたのに打つ手なし。あたいはその場でしょぼくれてしまう。
「このくらいのことで情けない……ところで先程おっしゃった魔王と女神の事を訪ねたいのですが」
「うむ、まずあれを見よ」
シスター・ファスが杖で窓の外を指すのは、空ではなく光る謎の壁。
「あれは紛れもなく女神フラデーアの光の壁」
「なにっ、本当ですかシスター・ファスッ」
「女神、是非お目にかかりたい!」
「女神フラデーア……おとぎ話と思ってたのに、おいネモネア聞いていたかっ?」
「うん……」
「ではシスター・ファス、この世界に魔獣をもたらしたのは」
今度はエメールが訪ねるとシスター・ファスはゆっくりと頷く。
「魔王の仕業じゃ」
やっぱり魔王がもたらしていたこの事態、だけどどういうことなんだろうか。あたいの気持ちは沈みながらも頭の中には魔王ルモールではなくもう1人の魔王が実在すると考えていた。ならなおさらブラック・オーブを解かないと。
「あの、シスター・ファス、ブラック・オーブの封印を解くにはどうすればいいんですか?」
「ネモネア、お前まだ」
「もう1人の魔王が存在するなら……だからこそ必要だろ? モント」
「あのな、それが分かれば」
「封印を解く方法はある」
「「え?」」
「四角い硝子の上に窪みがあるの、それよ」
ヴィゴーレに言われて硝子の上を調べるとたしかにある4つの窪み。なんか凸凹して変な感じ。
「そこに必要なのが幻の結晶花よ」
「ネモネア・プリンセスッ……もしかして」
「え、あれかっ!」
青い薔薇ならあたいとエメールは知っている。すぐさまあたいは胸の間から『青い薔薇』を出す。
「ふおっ、これはまさしく『青い薔薇』! ヴィゴーレ、付けて見るんじゃ」
『青い薔薇』を受けとったヴィゴーレが硝子の上からセットするとしっかりとはまる。
「お前さんたち、何処でこれを」
シスター・ファスに説明する。それはグランジウム南東の草むらで、そこであたいは一度は死を覚悟した場所だと。
「――ネモネアとエメール、そんなことが」
「うん、エメールが助けてくれなかったらあたいは死んでた」
「プリンセスの為ならたとえ火のなか水の中、必ずお助けいたします」
「これを見つけたということは……お主達なら本当にブラック・オーブの封印を解けるかもしれん」
「ホントにっ? やった!」
シスター・ファスが続けて話してくれた。それはこの世界ツオーゴの丁度南にこの『青い薔薇』があった。なので残り3つは世界の地図から見て北、東、西にあるはずだとファスは語る。
「北と東と西、モント、エメールはやく行こう」
「おいちょっと待て、ネモネア」
「いいから……ヴィゴーレ」
あたいの目の前にはシスター・ヴィゴーレが眉尻を下げ不安そうにしていた。
「ネモネア……」
「ヴィゴーレ……」
「あたしは知らないことを色々と聞いて不安なの……ねえネモネア、もしブラック・オーブを手に入れても世界をどうこうするとかじゃないでしょ?」
「……この世界にはあたいが護りたい人たちが沢山いる、冒険で出会った人も、シスター・カルタの友だちのシスター・ヴィゴーレ、あなたも」
「あたしもって」
「あたいがブラック・オーブを求めるのは、力が欲しいとか世界をどうにかしたいとかじゃない」
「おしえてネモネア」
「……好きな人の、答えがほしいの」
「え、好きな、ひとって……あんたホントに想い人を探す乙女だったわけ?」
「ある戦いであたいはその人に告白したんだけど……よくわからないまま終わっちゃって。だから今度はちゃんと答えを聞きたい」
「……なによ、はぁ~っ、ロマンチックな乙女の顔をしてっ、よくわからない事もあるけどもうドキドキッ……何か安心したわ、いってらっしゃいネモネア」
「わかってくれて、ありがとうシスター・ヴィゴーレ」
身体は男性で心は女性のシスター・ヴィゴーレは分かってくれたらお姉さんの様な眼差しであたいを見送ってくれた。そんな彼女におじきをして、新たな水晶花を探しを始めるためラングネスを後にする……。
――そんなあたいらがラングネスを出た頃、この世界ツオーゴの青い空、のさらに上の宇宙。
「フッ、美しいな女神フラデーア」
「もうおやめなさい、魔王――」
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