勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

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竜神

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 ん……。


「ん……んっ、ここは……うわぁぁぁっ!」


 目を見開らくといきなり驚いた。それは竜が、こちらを見ていたんだ。あたい3人分くらいの大きさに強靭な鱗と正真正銘の竜が5匹。これではとても勝ち目がない。殺されるかも、本当にまずい。


「あ……あっ……」


 モントやエメール、カーゼ先生も口が開いたままで震えている。ブリーズはあまりにも恐怖で気絶してしまった。蛇に睨まれた蛙のようになっても両手の爪を伸ばす。生き残るには戦うしかない。


「……待て、魔族の娘よ」

 真ん中の1匹だけが周りの黒い竜より大きくあたいに話しかけきた。言葉はわかるみたいだ。

「ハァ、ハァ……あんたは……」

「我は竜神、この世界の神だ」

「竜神で神様、悪いやつじゃない、か……」

「ま、まってっ、この世界の神は女神フラデーアでは」

 汗をかきながらも勇気を出して問いただすモント、すると僅かに顔が動いてモントの方に向く。

「女神フラデーアはツオーゴの神、この世界の神ではない」

「え、どういうこと」

「お前たちは竜の指輪ドラゴン・リングとブラック・オーブの力でこのトアースにやってきたのだ」

「トアースだって……」

 どうやらブラック・オーブの力とは、竜神がおさめる世界トアースに行くための物だったみたい。


「なんのために……」

「いろいろと言葉にしたい事があるだろうが、まずは挨拶をさせてもらう。よくこのドラゴン・タワーへと来た、女神フラデーアが管理する異世界ツオーゴの者たちよ。我は竜神ブラック・ドラゴン、先も答えたがこの世界を管理する神」

 落ち着いて丁寧にあいさつしてくれた竜神ブラック・ドラゴン、その威厳も半端じゃない。まるで全てを見透かされるような鋭く黄色い眼光であたいらをジッと見るさまは本当に神様だ。

「ワシはカーゼ・ジェント、考古学者じゃ……竜神ブラック・ドラゴン殿、なんのためにこちらの世界にやってこれるブラック・オーブがツオーゴに?」

 緊張してるカーゼ先生は助手のブリーズを抱えつつ質問をする。

「……希望を残すため、だ」

「希望?」

「そうだ……」

「私はグランジウムの騎士で名はモント・オーランジ。希望とはどういう事ですか? 竜神ブラック・ドラゴン」

 またモントが、言葉が僅かに震えてるけどしっか竜神ブラック・ドラゴンを見て問う。

「……ブラック・オーブでこちらに来るのは大変だったであろう。さまざまな試練がお主たちを困らせ、時には諦めさせたはず。だが自身を信じ、出会った者を信じ、時には衝突しても、それらを乗り越え正しき者たちがここにへ辿り着いたとき、希望をあたえるためのブラック・オーブなのだ」

 希望、あたいにとっての希望とは、胸がドクンッてなって暖かくて、そんな彼のためなら命をかけられる。ホントに一度死んじゃったんけど。

「希望をあたえるため……竜神様、お願いがあるっ」

「お主はツオーゴの人間ではないな、魔族の娘」

「あたいはネモネア……魔界生まれの、元魔王ルモールの配下だった」

「あわわわっ、なっ、なんじゃとっ?」

「落ち着いてっ……ネモネアが悪いやつじゃないって、わかるでしょ」

「モント……ありがとう」

「かまわぬ、悪でないのは初めからわかっていた……して、その願いとはなんだ」

「あたいを魔界におくってくれ」

 アヴエロに会うにはそれが一番早い……いや、はやく会いたいんだ。そのためにブラック・オーブを手に入れて、試練を乗り越えてきたんだから。


「ふざけるなネモネアッ!」

「モント……ごめん、でもあたいはアヴエロに」

「あたしだって、ソレイル姉さんを探していた……会えるならあいたいに決まってるだろ」

 あたいがアヴエロに会いたいように、モントだってソレイルに会いたい。どっちが行くかで揉めていたら、

「プリンセスたち」

「「なんだよっ、エメールッ!」」

「うわっ、エネルギッシュッ……戦えない先生と助手の方は戻ってもらい、私も含めて3人で魔界に送ってもらえば良いんですよ」

「「あっ……そっか」」

 エメールの言う通り、何も1人で送ってもらう必要はそもそもなかったとつい熱くなっちゃったあたいとモント。

「ごめんモント、気持ちが先走ったりして」

「あたしもソレイル姉さんにすぐ会えると、焦って悪かったよ」

 そんな仲間揉めしている間にも竜神ブラック・ドラゴンは顔をやや上げ空のを見ていた。

「竜神様、あたいと2人も一緒に送ることはできないか?」

「……可能だが」

「じゃあ頼む!」

「可能であるが……勇者アヴエロとその仲間達は、もう魔界に存在していない」

「なっ、なんだって……そんな……」

 ガクッと膝を落とす。存在していないって、それはつまり死んだって事じゃないか。すべてが遅かったのか……。


「ネモネア、どういう事なんだ竜神ブラック・ドラゴン、勇者アヴエロの事を知っているのか」

「……魔王ルモールを倒したのは勇者アヴエロだということは知っている」

「私は旅の魔法剣エメール・ブラウン。竜神様、ではどうして魔界に勇者アヴエロと仲間がいないと?」

 あたいの代わりに質問をしてくれたけど竜神ブラック・ドラゴンはしばらく黙っていた。

「……聞こえるか、
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