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おまけ編
【おまけ】もし祈里に猫耳しっぽが生えたら
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こちらは猫の日にツイッターに投稿した小ネタ「もしうちの子が猫化したら」が萌え広がった掌編です。
本編時空とは違うIF話としてお楽しみください。
~祈里に猫耳尻尾が生えたら~
目の前に宝箱があったら、開けてみたくなるじゃないか。
「猫化したぞー!!」
猫耳と尻尾が生えた私が仁王立ちしてみせれば、部屋の扉を開けたライゼンはものすごい顔で固まっていた。
さっき触った感じだと生えたのは猫だな。いつもと違う感覚がおもしろくて尻尾をふよすよと動かして見せれば、なんとか扉を閉めたライゼンはものすごく頭が痛そうな顔で聞いてきた。
「まったくわからん。一から十まで説明してくれないか」
「この街に来る前にさ、朽ちた屋敷あったじゃない」
「ああ、アンデットやらゴーストがうろついていたな」
「あんたに言ってなかったけど、私そこで宝箱を見つけたのよ」
「たからばこ」
ライゼンの顔がすんごくひん曲がっていたけれども私はかまわず続けた。
「おもしろそうだな、と思って開けたらどぎつい煙に包まれてさ。本当は獣化する呪いだったんだろうけど、私の魔力抵抗値が馬鹿に高かったおかげで猫耳尻尾ですんだっぽいよ! やったね!」
「とりあえず怒って良いか」
いやもう怒ってるじゃん。道ばたに落ちてる宝箱はむやみに開けてはいけません、と一通りライゼンのお説教を受けた。
「魔法医の所へ行くぞ」
「そこまでしなくて大丈夫。この感覚だと一晩寝れば解けるくらいだから」
「そう、か」
まったく、心配性なんだから。
ほっとした顔をするライゼンにちょっと照れくさくなった私は、にんまりと笑って手をちょっと丸めてポーズを取ってみせた。
「ただでさえ美少女だったのに萌え要素まで加わって最かわ美少女になるなんて……自分の可能性が末恐ろしいわ。かわいかろ。かわいかろ?」
アラフォーのままやったらただの痛い人だが、今の私は推定12歳の銀髪碧眼美少女。華奢な手足と儚げな美貌に銀色の猫耳尻尾が超絶映えるのである。
小さいものや小動物が大好きなライゼンなら、かなり良い反応が見れるのではと期待していたのだが。
「まあそうだな」
ライゼンは気のない風で言うなり床に座ったのだ。
あのライゼンが。もふもふも小さいのもかわいいものも、ついでに私のことも結構好きなライゼンが!
「なんかうっすい反応だな? どうしたのもしかしてあんたも変な宝箱開けて呪いにかかった!?」
「君と一緒にしないでくれ。……いや、別に。今の君は状態異常のようなものだろう。早く解けるように寝とけ」
ライゼンはそんな風に言ってこっちの見向きもせずに剣の手入れなんてはじめる。
むう、怒ってはいないようだし調子が悪そうにも見えない。
けど大いに不満な私は、邪魔にならない程度にライゼンの傍らに近づいて、アピールしてみた。
「全力で愛でても大丈夫な猫だぞ? 石城迷宮のときのスライム並みにテンション上がっても良いんだぞ? なんならあざとくごろにゃごするよ?」
「あざとくは余計じゃないか」
「いや自覚がある時点であざとい以外ないじゃないか」
「いえてる」
私が素で答えれば、ライゼンは思わずといった雰囲気でこちらを見てぐっと息を詰める。
ふふん、四つん這いの上、うわ目使いで見てやってるからな。
銀色の尻尾がくねるのはさぞや見応えがあるだろう。
……ここまで無反応だと寂しいぞ。
じーっと私が見つめていれば、ライゼンは根負けしたようにため息をつく。
「今の君は正直かわいいと思う」
「やったぜ!」
「ただやり始めると小一時間ほどもふもふするがいいか」
そういったライゼンの顔は本気と書いてマジだった。
……もしかしてもしかしなくても、すんげえこらえてたけど私に迷惑だと思って我慢していたやつか。
あーそれは嬉しいなあありがたいなあ。
そうかなるほど、ライゼンが小動物に嫌われるのって、魔王の微量な魔力を本能的に悟って以外にも、この異様な熱量を察知してというのも多少はあるな、と言うかそれがすべてだな。
「え、遠慮もうしあげますにゃあ」
「もう遅い」
「うにゃあ!?」
冷や汗を掻きつつにっこり笑って後ずさったが、ライゼンに腕を引かれる。
くっいつの間にか剣の手入れ道具を綺麗に片付けてやがる!
ぽすん、と落ち着いたのはライゼンの胡座の真ん中である。
私は背中にライゼンの体温を感じつつ抗議しようと見上げれば、ライゼンと目が合った。
「たきつけたんだ責任取れ……それとも、俺は嫌か」
ほんの少し不安そうな緑の目を見てしまったら、なにも言えないではないか。
ぐ、と飲み込んであきらめた私は、返事の代わりに座りが悪かった尻尾を外に出して、背中を預けてやる。
「や、優しくだからね」
「もちろんだ。絶対傷つけない」
うあーくっそう。そんな嬉しそうな顔するんじゃねえ!
よーし私だって言ったことくらいの責任は取ってやる!王様だし!
覚悟を決めた私だったが、猫耳にライゼンの手が這う感触に思わず声を上げかけた。
「……っ!」
「痛かったか」
「い、いや平気」
いや、耳が敏感だってことに気づかなかったと言うか、ものすごく優しい手つきで逆にそわそわすると言うか、ライゼンのかつてない真剣な顔に不覚にもきゅんときたと言うか。
うわこれ最後まで心臓持つかな。
かあと頬が熱くなるのを感じながら、私の耐久レースが始まった。
ちなみにきっかり一時間だった。
終わった後のライゼンは、おっそろしく幸せそうで、対照的に私はぐったりしていたことだけは付け足しておこう。
……今度からむやみやたらと宝箱はあけません。
本編時空とは違うIF話としてお楽しみください。
~祈里に猫耳尻尾が生えたら~
目の前に宝箱があったら、開けてみたくなるじゃないか。
「猫化したぞー!!」
猫耳と尻尾が生えた私が仁王立ちしてみせれば、部屋の扉を開けたライゼンはものすごい顔で固まっていた。
さっき触った感じだと生えたのは猫だな。いつもと違う感覚がおもしろくて尻尾をふよすよと動かして見せれば、なんとか扉を閉めたライゼンはものすごく頭が痛そうな顔で聞いてきた。
「まったくわからん。一から十まで説明してくれないか」
「この街に来る前にさ、朽ちた屋敷あったじゃない」
「ああ、アンデットやらゴーストがうろついていたな」
「あんたに言ってなかったけど、私そこで宝箱を見つけたのよ」
「たからばこ」
ライゼンの顔がすんごくひん曲がっていたけれども私はかまわず続けた。
「おもしろそうだな、と思って開けたらどぎつい煙に包まれてさ。本当は獣化する呪いだったんだろうけど、私の魔力抵抗値が馬鹿に高かったおかげで猫耳尻尾ですんだっぽいよ! やったね!」
「とりあえず怒って良いか」
いやもう怒ってるじゃん。道ばたに落ちてる宝箱はむやみに開けてはいけません、と一通りライゼンのお説教を受けた。
「魔法医の所へ行くぞ」
「そこまでしなくて大丈夫。この感覚だと一晩寝れば解けるくらいだから」
「そう、か」
まったく、心配性なんだから。
ほっとした顔をするライゼンにちょっと照れくさくなった私は、にんまりと笑って手をちょっと丸めてポーズを取ってみせた。
「ただでさえ美少女だったのに萌え要素まで加わって最かわ美少女になるなんて……自分の可能性が末恐ろしいわ。かわいかろ。かわいかろ?」
アラフォーのままやったらただの痛い人だが、今の私は推定12歳の銀髪碧眼美少女。華奢な手足と儚げな美貌に銀色の猫耳尻尾が超絶映えるのである。
小さいものや小動物が大好きなライゼンなら、かなり良い反応が見れるのではと期待していたのだが。
「まあそうだな」
ライゼンは気のない風で言うなり床に座ったのだ。
あのライゼンが。もふもふも小さいのもかわいいものも、ついでに私のことも結構好きなライゼンが!
「なんかうっすい反応だな? どうしたのもしかしてあんたも変な宝箱開けて呪いにかかった!?」
「君と一緒にしないでくれ。……いや、別に。今の君は状態異常のようなものだろう。早く解けるように寝とけ」
ライゼンはそんな風に言ってこっちの見向きもせずに剣の手入れなんてはじめる。
むう、怒ってはいないようだし調子が悪そうにも見えない。
けど大いに不満な私は、邪魔にならない程度にライゼンの傍らに近づいて、アピールしてみた。
「全力で愛でても大丈夫な猫だぞ? 石城迷宮のときのスライム並みにテンション上がっても良いんだぞ? なんならあざとくごろにゃごするよ?」
「あざとくは余計じゃないか」
「いや自覚がある時点であざとい以外ないじゃないか」
「いえてる」
私が素で答えれば、ライゼンは思わずといった雰囲気でこちらを見てぐっと息を詰める。
ふふん、四つん這いの上、うわ目使いで見てやってるからな。
銀色の尻尾がくねるのはさぞや見応えがあるだろう。
……ここまで無反応だと寂しいぞ。
じーっと私が見つめていれば、ライゼンは根負けしたようにため息をつく。
「今の君は正直かわいいと思う」
「やったぜ!」
「ただやり始めると小一時間ほどもふもふするがいいか」
そういったライゼンの顔は本気と書いてマジだった。
……もしかしてもしかしなくても、すんげえこらえてたけど私に迷惑だと思って我慢していたやつか。
あーそれは嬉しいなあありがたいなあ。
そうかなるほど、ライゼンが小動物に嫌われるのって、魔王の微量な魔力を本能的に悟って以外にも、この異様な熱量を察知してというのも多少はあるな、と言うかそれがすべてだな。
「え、遠慮もうしあげますにゃあ」
「もう遅い」
「うにゃあ!?」
冷や汗を掻きつつにっこり笑って後ずさったが、ライゼンに腕を引かれる。
くっいつの間にか剣の手入れ道具を綺麗に片付けてやがる!
ぽすん、と落ち着いたのはライゼンの胡座の真ん中である。
私は背中にライゼンの体温を感じつつ抗議しようと見上げれば、ライゼンと目が合った。
「たきつけたんだ責任取れ……それとも、俺は嫌か」
ほんの少し不安そうな緑の目を見てしまったら、なにも言えないではないか。
ぐ、と飲み込んであきらめた私は、返事の代わりに座りが悪かった尻尾を外に出して、背中を預けてやる。
「や、優しくだからね」
「もちろんだ。絶対傷つけない」
うあーくっそう。そんな嬉しそうな顔するんじゃねえ!
よーし私だって言ったことくらいの責任は取ってやる!王様だし!
覚悟を決めた私だったが、猫耳にライゼンの手が這う感触に思わず声を上げかけた。
「……っ!」
「痛かったか」
「い、いや平気」
いや、耳が敏感だってことに気づかなかったと言うか、ものすごく優しい手つきで逆にそわそわすると言うか、ライゼンのかつてない真剣な顔に不覚にもきゅんときたと言うか。
うわこれ最後まで心臓持つかな。
かあと頬が熱くなるのを感じながら、私の耐久レースが始まった。
ちなみにきっかり一時間だった。
終わった後のライゼンは、おっそろしく幸せそうで、対照的に私はぐったりしていたことだけは付け足しておこう。
……今度からむやみやたらと宝箱はあけません。
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