アラフォー少女の異世界ぶらり漫遊記

おまけ編

【おまけ】もしライゼンに猫耳しっぽが生えたら

　こちらは猫の日にツイッターに投稿した小ネタ「もしうちの子が猫化したら」が萌え広がった掌編です。
　本編時空とは違うＩＦ話としてお楽しみください。






～もしライゼンに猫耳尻尾が生えたら～

　私は今世紀最大の爆笑ネタを前に腹筋を崩壊させていた。

「ぶわははははは！！！！！　猫！　ライゼンが猫！！！！　猫耳尻尾！！！！」
「……」

　目の前には真っ赤に染まった仏頂面で黒い猫耳と尻尾を動かすライゼンがいる。
　日中に助けた行商のおじさんからお礼にと綺麗な装飾品をもらったのだが、呪いがかかっていたらしく、気がついたらライゼンに猫耳と尻尾が生えていたのだった。

「……どこぞの暇な魔法使いが作った遊びみたいだし、ほっとけば治るわよ」
「それだけが救いだ」

　魔王の魂を持っているとはいえ、人間の体を持つライゼンだから引っかかってしまったのだろう。
　効果は獣人風の耳が生えるだけだし、この手の魔法の効力は短いと相場が決まってる。もう腕輪に魔力は残ってないから一晩たてば消えてるだろう。
　本当にライゼンがおもしろいだけなので、私は遠慮なく笑ってやれば、彼の黒い猫耳がふてくされたようにぴくぴく動いた。
　へえ感情に合わせて動くんだ。よくできてるなあ。

「それにしたって笑いすぎじゃないか……にゃっ！？」
「ふむふむ神経も通ってるんだね。しかも語尾まで猫になってるし。獣人化というより特徴的な獣の属性が加わったって所なのかな」
「い、いきなり触らないでくれにゃ」

　気を抜くと出てしまうらしく、またこぼれた言葉にライゼンはしかめっ面になる。
　尻尾がふぉんふぉん揺らめいてるから、結構な警戒具合だ。
　尻尾動いてるのきっと気づいてないんだろうな、かわいい。
　にまにました私はふと思いついて、横座りした膝をとんとんと叩いてやった。

　完全に警戒マックスだった猫ライゼンの尻尾がぴたりと止まり、困惑に彩られる。

「……なんだその手は」
「いやあ、今のライゼンは猫っぽいから膝で丸くなるかなって。ほらおいでよ」
「完全に猫になったわけじゃないぞ俺は」
「えーでも猫獣人ってわけでもなさそうじゃないか。猫なら頭を撫でるくらい普通、じゃない？」

　にっこり笑って言ってみたのだが、ライゼンは目を丸くすると、深ーい深ーいため息をついて顔を覆った。
　尻尾の毛はぶわっと膨らんでるし、暗がりでもその顔が真っ赤になっているのが分かる。

「頼むから、そういうことは照れずに言ってくれ」
「あ、ばれた」

　私は今のライゼンと同じくらい火照る頬を掻いた。
　いやあ、たまにはそれっぽいスキンシップもやってみようかなあと思うけど、普段のおおざっぱなやりとりだとそう言う雰囲気になりにくいからさ。
　これを機会にやってみようと思ったんだけど、照れの方が勝ったわ。
　私の意図を察したライゼンが、やれやれとライゼンが尻尾を揺らめかせていたけど、試しに聞いてみる。

「で、来るの？　来ないの」
「…………変なことしないか」
「しないわよ」

　ぐうと眉を寄せていたライゼンは、ゆっくりと私の膝に頭を預けた。
　おおう、素直だ。でもなんかこそばゆい。

「大人の頭って案外重いのね」
「苦情は受け付けないぞ」
「分かってるって。あ、髪の毛と毛並みがちょっと違うのね」

　後頭部を私の腹に向けているから、ライゼンの顔はのぞき込まなきゃ見えない。
　けれども、真っ赤に染まった耳や、気持ちよさそうに緩んでいる尻尾から容易に想像が付いた私は、ゆっくりと頭と耳に手を滑らせたのだった。
　ほほが熱いのは気のせいだ気のせい！