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本章

101話:運命のパレード ③〜アルクSide〜

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   ~アルクSide~


「はぁ…カオルくん…可愛かったなぁ…」

輝くような笑顔で僕に向かって手を振るカオルくんは本当に可愛かった。
パレードは準備や当日の警備配置の変更などもあり大変な事も多かったけれど、カオルくんのあの笑顔で全てが吹き飛んだ。
今日はカオルくんとも会えるし…ふふふ~♪

「な~にニヤケた面してんだよ。こっちは疲れてんのに気持ち悪い顔すんな」
「あはは~ごめんねオドリ~」
「なんだよ…忙しすぎて狂ったのか?」

オドリーは僕があまりにもニヤニヤしているの見て若干引いている。

「今日はこの後カオルくんと会うんだよ~」
「カオルくんか…。あの事件の後も娼夫続けてんのか?」
「うん…。元々、あまりお客はとってないからね。僕とそれ以外に一人か二人くらいかな?でも、そろそろ…」

『僕と一緒になってほしい。』

カオルくんに会う度に僕はその台詞が頭に浮かぶ。
でも、今日こそは僕の気持ちを伝えたい…

「ねぇ。オドリー。好きな子にプロポーズする時って花束あった方がいいのかな?やっぱり指輪?」
「はっ?お前まさか…カオルくんにプロポーズする気か?」
「…うん。ダメかな?」

オドリーが「う~~ん…」と、考え込んでいるとカツカツと足音が僕達の方に近づいてきて声をかけられる。

「ジョワゼーレ騎士団長。少しお時間よろしいですか?」
「あ。はい…どうしました?」

僕に声をかけてきたのは王室近衛騎士のランス。
クリストファー王子直属の騎士で若いが剣の実力も高く、どんな時も冷静な判断ができ王子の右腕と言われている。

「今からジョワゼーレ騎士団長と手合わせをお願いしたい」
「え!?今からですか?それは…ちょっと…」

いきなり何を言ってくるかと思えば…。
今から僕は残りの仕事を片付けてカオルくんの元に行かないといけない。
はっきり言ってランスと手合わせなんてしてる時間はない。
ランスの無茶振りに僕は苦笑いしながら断りの言葉を並べる。

「そこをなんとかお願いします」

そう言って僕にしつこく言い寄ってくるランスにやんわりと断りをいれるが、まったく効果はなかった。

「私もまだ仕事が残っているので……」

チラッとオドリーに助けてくれと目線を送る。
オドリーはハァ…と、ため息をつきながら僕達の間をとりもってくれる。

「手合わせってどれくらいかかりそうなんですか?」
「……1時間くらいです」
「じゃあ…アルク付き合ってやれよ。」
「えぇ!?でも…」
「残りの仕事は俺がやってやるから。相手が終わったらそのまま帰れ」
「……オドリーごめん。この埋め合わせは必ずするから!」
「へいへい」

オドリーはヒラヒラと手を振りながら仕事へと戻り、僕とランスは訓練所で手合わせを行う。
1時間と言っていたのにランスは僕が止めるのも聞かず、結局3時間近く付き合わされた。

ランスは満足したのか「ありがとうございました」と、頭を下げて訓練所を去っていく。
僕もバタバタ帰る準備をしてカオルくんの宿へと向かった。

本当は花とか準備して行きたかったが…カオルくんを待たせているのでそのまま向かう。
日はすっかり落ち町は夜の顔になっていた。

随分と遅れてしまったな…。
途中で連絡もいれたがカオルくんにはつながらなかった。
以前も仕事で遅くなった時、待ちくたびれて眠ってしまっていた事もあったので、今回もパレードを楽しみすぎて寝てしまっているのかも…

そんな事を思いながら部屋へと辿り着くと部屋のドアをノックする。
いつもならカオルくんの可愛らしい笑顔がお出迎えしてくれるのだが…反応がない。

やはり眠っているのだろうか?

「カオルくん…?」

普段は鍵がかかっているドアへと手を伸ばすとカチャ…とドアが開く。
真っ暗で明かりの灯っていない部屋…

「カオルくん?寝てるの?」

暗闇の中、灯りをどうにかつけ部屋を見渡すが…
カオルくんの姿が見当たらない。

「え…?カオルくん…どこに…?」

もしかしたら、僕との約束を忘れて外に行ったのかな?
そう思い一階の受付へと向かいドルンさんへ声をかけるが、ドルンさんはカオルくんが宿を出て行く姿を見ていないと言う。

なんだか嫌な予感がする…
不安は徐々に大きくなり、いつもカオルくんが食事を食べにいく食堂へと向かう。
賑わう食堂の中、店員と思われる赤毛の少年に声をかける。

「すみません。黒髪のカオルという少年を探していて…よくこの食堂に来ているんですが、今日見かけませんでしたか?」
「カオルなら昼は来てましたけど…カオルに何かあったんですか?」
「いえ…今日会う予定だったのに部屋にいなかったので探しているだけなんです」
「そうですか…。カオルは会う約束を忘れたりする奴じゃないし…」

赤髪の少年のカオルくんの事をよく知っているようだ。
もしかして…カオルくんの友達のリオくん…?

「俺もう上がるんで一緒にカオルを探します。あいつの行く場所なら知ってるんで!」

リオくんと思われる少年は一旦奥へと引っ込み着替えを済ませると、カオルくん探しに協力してくれる。
カオルくんがよく行くお店や場所を回るが、カオルくんが立ち寄ったという情報は得られなかった。
一度宿にカオルくんが戻ってないか確認しに戻るとエルくんとちょうど宿前で鉢合わせる。

「エルくん!」

エルくんを見つけるなり僕達は駆け寄った。エルくんは僕達の組み合わせに少し驚いた表情を見せる。

「なぁエル。カオルが今日どこか行くって言ってなかった?」
「アルジ、キョウハ、アルクトアウッテ…」

エルくんはそう言うと俺の方をチラリと見る。

「僕が予定よりも遅れてしまって、部屋に行った時にはカオルくんはいなかったんだ…。部屋に鍵もかかっていなかったし、嫌な予感がして探しているんだけど…何か心当たりないかな?」
「アルジ…イナイ…?」

エルくんはキョトンとした顔で僕の話を聞いていた。だが、カオルくんがいない事が分かると興奮しだす。

「アルジ…ナンデイナイ?ドコ?」
「それが分からないんだ…。どこを探しても見当たらない…」
「ナンデ!?アルジ!ドコッ!!」

エルくんは、カオルくんがいない不安のせいか感情が昂りそれを僕にぶつけるように詰め寄ってくる。

「エル!落ち着けてって!」
「ダッテ…リオ…。アルジ…イナイ…ッテ…」

リオくんは僕達の間に入り、興奮するエルくんを宥めてくれる。エルくんは今にも泣き出しそうな顔で尻尾をダラリと下げる。

「エルくん。大丈夫…。きっとカオルくん見つかるから」
「うんうん。もしかしたらすぐに『ごめ~ん』とか、呑気な事言って戻ってくるかもしれないしさ」
「ウン…。ゴメンナサイ。オレモ、アルジサガス」

こうして僕達は三人でカオルくんを探しに夜の町を走り回った。
宿にヒョッコリ戻ってくるかもしれないので、ドルンさんにはカオルくんが戻ってきたら連絡をしてもらうように頼んだ。

僕達は店や路地裏…思い付く場所を手当たり次第探していく。


だが、その晩…そして次の日もカオルくんは宿へと帰ってくる事はなかった。
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