やさぐれモードの私はもふもふ旦那様を溺愛中

ろいず

文字の大きさ
27 / 167
1章 

お誕生日 14歳

しおりを挟む
 十月五日、私、十四歳!!
おめでとう私!! ありがとう私!! と、心の中でパチパチと手を叩き、今日は少しだけ女の子らしい食事を用意した。

 誕生日くらいは、贅沢をしよう!!

 小麦粉と水で焼いたパンケーキを薄ーく伸ばして焼いて、クレープみたいにして、中にジャムを入れた物を作ってみた。
あと、紅茶!!
紅茶缶を紳士さんが入れてくれていたんだけど、茶葉のままどうやって飲むか……これが悩みだったんだよね。

 そこで、小さな四角い袋を布で作ってみた。
要は巾着のコップに入るサイズの物を縫って作り、中に茶葉を入れてお湯を注いで出来上がり!
一応、紐も通したからコップから引き上げて濃さも調節出来るし、そのまま外に干してまた使うという貧乏くさい事も出来るよ!
三回まではギリギリ色が出る!!
三回以上はほんのり、紅茶臭が微妙にあるかなー? っていうお湯だったよ。

 茶葉を捨てればまた使える、ティーパック。
紅茶に紳士さんがくれた蜂蜜を入れて、誕生日だから自重せずに甘い紅茶にした。

 クレープに紅茶!
誕生日にそれだけかー……って、なるかもしれないけど、今の私にはコレは凄い贅沢な事なので、口元がへらっとしてしまう。

「えへへ~。甘い物いっぱい~」

 贅沢を言うなら、ここにホイップクリームも添えて欲しいところかな?
牛、欲しいなぁ……でも、牛って妊娠中しかお乳が出ないから、最低でも二頭のメスとオスが必要なんだよねぇ……牛までは流石に面倒は見切れないかな。
草だけ食べさせればいいのかもしれないけど、秋になってから、草が段々無くなってきていて、この小屋近くで飼うとか無理だなぁ。
うーん、残念。 まっ、牛をここら辺では見たこと無いから、土台無理な話だけど。

 クレープを食べながら、ジャム甘ーい、美味ーい。と、一人で舌鼓を打っている。
デンちゃんは足元で鶏肉ジャーキーをガジガジ噛んでいるし、ゲッちゃんはコクリコクリと頭を上下に動かしてテーブルの上に置いた網籠の中で寝ている。

 網籠は、蔓で作った物ばかりだけど、不器用な私でも慣れてくると段々と作れるようになるんだから凄いよね。
 初めは本を片手に練習して、蔓が切れたりして、私も途中でキレて「うきゃーー!!」とか叫んでたけど、蔓の見分け方や、しなやかで曲がる蔓を集めるのが上手くなった。
なんでも自分でやらないといけないから、当然といえば当然で、積み重ねて上手くなっていく。

 あー、でも弓だけは、まだ全然ダメ。
指が痛くなって皮がずる剥けて、薬草使っちゃうので、冬越えの為にも無駄な怪我をして減らしたくないから、いざとなれば魔法の武器が火を噴くぜ! とか思っている。
武器から出るのは火では無いだろうけどね。
備蓄品は減らしたくないから弓の練習はまだまだ先かな? 冬が終わってから考える。

 この生活には慣れてきたけど、初めての冬を迎えるから、どんな冬になるのか想像がつかない。
備蓄は大事。三人分の食事を用意するから私のする事は、三人分の命を握っていると思っていい。
やれることは全部やって、後悔の無いようにしないとね。

 十月からが、本番だと思ってる。
十一月に入ったら食料探しはかなり厳しいだろうし、なるべく熱とかを出さない為にも、外に出るのは短時間だけとかにしないと、ここでは頼れるのは自分だけだから、自己管理も必要だ。

 毎日、明日は何をしようと決めながら動く生活。
ここに来る前は、学校に行って家に帰っての繰り返しで、明日はテストがあるなーとか少し心配したり、宿題が多いなぁとブツブツ文句を言う生活だった。
多少の不満はあったけど、今はそんな生活をもっと堪能しておけばよかったと思う。

「お母さんとお父さん、元気にしてるかな?」

 小さく呟いて、目を伏せる。
今年の私の誕生日には何が用意されていたんだろう?
毎年、ケーキとプレゼントがあって、去年はボン助とお揃いのパーカーだった。
お母さんの知り合いで、愛犬とお揃いの服を作ってくれる人が居て胸の所にはボン助の顔の刺繍がしてあって、ボン助には私の名前が刺繍してあるお揃いの黄色いパーカー。
ボン助とお散歩に行く時に羽織って出掛けてて、お気に入りだった。
今年も着るつもりだったんだけどな……

 もう私の捜索活動は打ち切られたころだろうか?
山で迷子になったりすると、ヘリコプターを飛ばすのに凄くお金がかかるって聞いたことがあるから、ヘリコプターとかは早めに打ち切られちゃって、ほぼ警察や山岳救助隊の足で探す事になるらしい。
 テレビとかで「迷子になるなら山に入らなきゃいいのに」とか言ってた自分が、今ココで暮らしているのだから、何とも言えない。

 私も初めの頃は精々、一週間もあれば確実に助けが来るって思っていたんだけど、こんな魔法のある世界じゃ私は見つけられないだろうし、帰れる日はいつになるのやら?
 これが漫画なら召喚した人や神様なんかが居て説明をしてくれるんだろうけど、そんな人も神様も現れない。
もしそんな人が目の前に来て「この世界に召喚はしたけど、帰ることはできない」って言ったら、魔法の武器でぶっ倒す所存である。

 まぁ、誰も私に説明なんかしてくれないから、全部想像しているだけだし、多分、ここに迷い込んでしまったのも偶然なんだろう。
だから、この世界の人も私が迷い込んだ事は知らないだろうし、助けも来ない。
いつか、ここを出て他の場所に行って、元の世界に戻る魔法を探す事を考えなきゃいけないのかもしれない。
でも、今はまだ生きる為に精一杯で、そんな事を出来る余裕もない。

 今日から、十四歳。
私のここでの生活はまだ先が見えない。
今は甘いクレープと紅茶で自分をお祝いしつつ、冬越えだけを考えて生きていくしかない。
しおりを挟む
感想 99

あなたにおすすめの小説

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。

雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。 その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。 *相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。

【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。 彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。 自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。 「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」 異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。 異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

『番』という存在

恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。 *基本的に1日1話ずつの投稿です。  (カイン視点だけ2話投稿となります。)  書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。 ***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!

処理中です...