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17章
氷竜と遊園地
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移動遊園地は朱里の元居た日本では馴染みのない物ではあるけれど海外などでは割りとある。観覧車やジェットコースターまであるというのだから日本では土地の確保の面で移動して興行を行うのは難しそうではある。
精々サーカスくらいが日本における移動遊園地に近い物ではないかと朱里は思う。
朱里がティルナール達くらいの子供の頃に両親と見に行ったサーカスは、虎と一緒に丸い球体の様な檻の中で人間がバイクに乗ってぐるぐると走り回っていたのをうっすらと覚えている。
遊園地自体は数ヵ所行った事がある。それは移動しない遊園地で有名な所もあれば、動物園と隣り合わせの所だったり、小学校の遠足で山に登るはずが雨で行けず遊園地に急遽行く事になった所だったりと、遊園地だけならそれなりに行った気がする。
まぁ、遊園地には家族との思い出が付きもので遊園地自体思い出す事はほとんどなかった。
まさか異世界で遊園地に来るとは少し驚きである。
朱里が想像していた遊園地と少しだけ似通った遊園地が目の前にある。
多少の違いは異世界なのだから仕方がない。メリーゴーラウンドの馬がペガサスやユニコーンだったり、大きな船が揺れる乗り物は魔法で浮いていたりするのは許容範囲というところだろうか?
遊園地に付きもののお菓子売り場の売店もそこかしこにあり、ミルアとナルアが早速「スイーツですわ!」と売店に走って行ってしまった。
「もう!2人共人が多いんだから勝手に動かないで!」
「大丈夫ですわー!」
「何かあれば腕輪しますわー!」
電話しますわではなく、腕輪しますわな所が何とも言えない所でもある。
2人はチュロスに似た長い砂糖にまぶした揚げ菓子を持って戻るとサクサクと食べながら遊園地の乗り物を見て「あれが良いですわ!」と指をさしていく。
「ミルアとナルアは元気が良いな」
「ちょうど楽しいお年頃ですからね」
「チビッ子達は遊ばんのか?」
ミルアとナルアが高速回転するという乗り物に乗ると言って列に並んでいて、三つ子達は乗り物がブンブン回っているのを見ただけで首を振って怖がるので、ルーファスと朱里とグリムレインが1人に1人付き添う形で面倒を見ている。
「あれはどう?ティーカップ」
小さな子供でも親が一緒で尚且つ自分達で速度を替えられるティーカップの形をした乗り物ならば安全かと朱里が指さすと三つ子は困った顔をしている。
「ごくごく?」
「お茶のティーカップに見えるけど、飲み物じゃなくて乗り物だよ」
「とりあえず乗ってみればいい。気に居るかどうかはその後だ!」
グリムレインがエルシオンを持ち上げるとティーカップの列に並び、早く来いとルーファスと朱里を促す。
「仕方がない。行くかティル」
「あい!」
「よーし!ルーシーも一緒に行こう!」
「あい!」
グリムレインと一緒に列に並び、ミルアとナルアが高速回転で回る乗り物『フリスビー』に乗れたらしく遠くから2人の「キャー!」という声が聞こえ、ルーファスの耳がピクピク動きながらも恐怖の悲鳴では無いので気になる程度なのだろうが少しだけ眉が下がっている。
ティーカップは最大6人乗れるが、今回は2人ずつに別れた。
理由としては個々の回転の速さの好き嫌いがあるだろうという事で回転させる大人が調整してあげて行かなくてはいけない。
順番が来て大きなティーカップの中に入るとゆっくりと中心の回転盤を手に握り動かしていく。
「ルーシーはどのくらいの速さがいいかなー?」
「あれー」
ルーシーがグリムレインの乗ったティーカップを見るとかなりの速さで回っていてエルシオンが涙目で口をパクパクさせている。
「アッチャー・・・グリムレインやりすぎだわ」
「エルないちゃちゃ」
「あー、うん。泣いちゃたねぇ」
あの組み合わせは駄目だったかも?と思いながら、グリムレインが楽しそうにエルシオンの頭をぐしゃぐしゃと撫でている。
ルーファスの方はティルナールと回転盤を持って一緒に動かしているので結構のんびりと回っていたが、グリムレインの回転の速さにティルナールが気付き、ルーファスに回せと言ったのか徐々に早くなっていっている。
楽しそうではあるが、これはティルナールとエルシオンを逆にすべきだったとつくづく思いながら朱里が苦笑いする。
「ルーシーいくよー!」
「あい!」
ぐんっと回すと少し速く回り、次第に弱くなるという感じを繰り返してティーカップがくるくる回っていく。
「ルーもやるー!」
「はい。どうぞ」
ルーシーが回転盤を持ってグイグイ回しながら回転させ、朱里よりもパワフルに回って2人で「きゃー」と言いながら笑い声をあげて楽しんだ。
ティーカップから降りるとティルナールとルーシーは満足そうだが、エルシオンは泣きながらルーファスの足に抱きついていて、ティルナールの面倒をグリムレインが見る事になった。
ミルアとナルアも合流して大きな船の乗り物に全員で乗ったり、射的や輪投げのゲームをしたり、メリーゴーラウンドも乗ったりもした。
「『鏡の国のメノン』?」
不思議の国みたいなネーミングだと思いながら朱里は首を傾げる。
移動遊園地の中にあるレストランで昼食をとりながらミルアとナルアが楽しそうに話す。
「この移動遊園地にある鏡を使ったアトラクションがあるらしいのですわ」
「絵本のメノンの途切れた場所なのですわ」
「途切れた場所?」
昼食のちょっと塩辛いオムライスを食べながら目をパチパチと瞬かせる。
メノンと聞いてルーシーも2人の姉を交互に興味深げに見上げる。
「絵本のメノンシリーズは丁度11冊目、でも12冊目以降は何故か出ていない。取材はこの移動遊園地の鏡を使ったアトラクションで途切れ、話は進まなくなっているのですわ」
「わたくし達気になったので鏡を使ったアトラクションを探したのですけど見当たりませんの」
「・・・ミラーハウスかなぁ?」
2人がテーブルを乗り出し、朱里に「母上知っているのですか?!」と詰め寄り、ルーファスに行儀が悪いとペシッと頭を叩かれる。
「知ってるわけじゃないよ?ただ、鏡を使ったアトラクションって合わせ鏡で作ったミラーハウスくらいしか思い浮かばないだけで」
「わたくし達、鏡を使ったアトラクションというので何か乗り物の様な物だと思ってましたわ」
「1から探しませんといけませんわね」
「ルーも!ルーもさがすー!!」
ルーシーがピョンピョンと椅子の上でジャンプしてルーファスに「ルーシー行儀が悪いぞ」と怒られ耳をぺしゃっと下げながらも上目遣いでミルアとナルアを見て2人が「ルーシーも一緒に探しましょう」と3姉妹で仲良く探す事を提案して笑い合う。
「もう、そんな噂話で遊園地を楽しまない気なの?」
「楽しみつつ探すのですわ」
「ちゃんと押さえるところは押さえて遊びと探究心を満たすのですわ」
「うー!ルーもさがすぅー!」
トリニア家の3姉妹は探偵にでもなる気かしら?と朱里が苦笑いしつつ「ミラーハウスかぁ」と小さく呟く。
精々サーカスくらいが日本における移動遊園地に近い物ではないかと朱里は思う。
朱里がティルナール達くらいの子供の頃に両親と見に行ったサーカスは、虎と一緒に丸い球体の様な檻の中で人間がバイクに乗ってぐるぐると走り回っていたのをうっすらと覚えている。
遊園地自体は数ヵ所行った事がある。それは移動しない遊園地で有名な所もあれば、動物園と隣り合わせの所だったり、小学校の遠足で山に登るはずが雨で行けず遊園地に急遽行く事になった所だったりと、遊園地だけならそれなりに行った気がする。
まぁ、遊園地には家族との思い出が付きもので遊園地自体思い出す事はほとんどなかった。
まさか異世界で遊園地に来るとは少し驚きである。
朱里が想像していた遊園地と少しだけ似通った遊園地が目の前にある。
多少の違いは異世界なのだから仕方がない。メリーゴーラウンドの馬がペガサスやユニコーンだったり、大きな船が揺れる乗り物は魔法で浮いていたりするのは許容範囲というところだろうか?
遊園地に付きもののお菓子売り場の売店もそこかしこにあり、ミルアとナルアが早速「スイーツですわ!」と売店に走って行ってしまった。
「もう!2人共人が多いんだから勝手に動かないで!」
「大丈夫ですわー!」
「何かあれば腕輪しますわー!」
電話しますわではなく、腕輪しますわな所が何とも言えない所でもある。
2人はチュロスに似た長い砂糖にまぶした揚げ菓子を持って戻るとサクサクと食べながら遊園地の乗り物を見て「あれが良いですわ!」と指をさしていく。
「ミルアとナルアは元気が良いな」
「ちょうど楽しいお年頃ですからね」
「チビッ子達は遊ばんのか?」
ミルアとナルアが高速回転するという乗り物に乗ると言って列に並んでいて、三つ子達は乗り物がブンブン回っているのを見ただけで首を振って怖がるので、ルーファスと朱里とグリムレインが1人に1人付き添う形で面倒を見ている。
「あれはどう?ティーカップ」
小さな子供でも親が一緒で尚且つ自分達で速度を替えられるティーカップの形をした乗り物ならば安全かと朱里が指さすと三つ子は困った顔をしている。
「ごくごく?」
「お茶のティーカップに見えるけど、飲み物じゃなくて乗り物だよ」
「とりあえず乗ってみればいい。気に居るかどうかはその後だ!」
グリムレインがエルシオンを持ち上げるとティーカップの列に並び、早く来いとルーファスと朱里を促す。
「仕方がない。行くかティル」
「あい!」
「よーし!ルーシーも一緒に行こう!」
「あい!」
グリムレインと一緒に列に並び、ミルアとナルアが高速回転で回る乗り物『フリスビー』に乗れたらしく遠くから2人の「キャー!」という声が聞こえ、ルーファスの耳がピクピク動きながらも恐怖の悲鳴では無いので気になる程度なのだろうが少しだけ眉が下がっている。
ティーカップは最大6人乗れるが、今回は2人ずつに別れた。
理由としては個々の回転の速さの好き嫌いがあるだろうという事で回転させる大人が調整してあげて行かなくてはいけない。
順番が来て大きなティーカップの中に入るとゆっくりと中心の回転盤を手に握り動かしていく。
「ルーシーはどのくらいの速さがいいかなー?」
「あれー」
ルーシーがグリムレインの乗ったティーカップを見るとかなりの速さで回っていてエルシオンが涙目で口をパクパクさせている。
「アッチャー・・・グリムレインやりすぎだわ」
「エルないちゃちゃ」
「あー、うん。泣いちゃたねぇ」
あの組み合わせは駄目だったかも?と思いながら、グリムレインが楽しそうにエルシオンの頭をぐしゃぐしゃと撫でている。
ルーファスの方はティルナールと回転盤を持って一緒に動かしているので結構のんびりと回っていたが、グリムレインの回転の速さにティルナールが気付き、ルーファスに回せと言ったのか徐々に早くなっていっている。
楽しそうではあるが、これはティルナールとエルシオンを逆にすべきだったとつくづく思いながら朱里が苦笑いする。
「ルーシーいくよー!」
「あい!」
ぐんっと回すと少し速く回り、次第に弱くなるという感じを繰り返してティーカップがくるくる回っていく。
「ルーもやるー!」
「はい。どうぞ」
ルーシーが回転盤を持ってグイグイ回しながら回転させ、朱里よりもパワフルに回って2人で「きゃー」と言いながら笑い声をあげて楽しんだ。
ティーカップから降りるとティルナールとルーシーは満足そうだが、エルシオンは泣きながらルーファスの足に抱きついていて、ティルナールの面倒をグリムレインが見る事になった。
ミルアとナルアも合流して大きな船の乗り物に全員で乗ったり、射的や輪投げのゲームをしたり、メリーゴーラウンドも乗ったりもした。
「『鏡の国のメノン』?」
不思議の国みたいなネーミングだと思いながら朱里は首を傾げる。
移動遊園地の中にあるレストランで昼食をとりながらミルアとナルアが楽しそうに話す。
「この移動遊園地にある鏡を使ったアトラクションがあるらしいのですわ」
「絵本のメノンの途切れた場所なのですわ」
「途切れた場所?」
昼食のちょっと塩辛いオムライスを食べながら目をパチパチと瞬かせる。
メノンと聞いてルーシーも2人の姉を交互に興味深げに見上げる。
「絵本のメノンシリーズは丁度11冊目、でも12冊目以降は何故か出ていない。取材はこの移動遊園地の鏡を使ったアトラクションで途切れ、話は進まなくなっているのですわ」
「わたくし達気になったので鏡を使ったアトラクションを探したのですけど見当たりませんの」
「・・・ミラーハウスかなぁ?」
2人がテーブルを乗り出し、朱里に「母上知っているのですか?!」と詰め寄り、ルーファスに行儀が悪いとペシッと頭を叩かれる。
「知ってるわけじゃないよ?ただ、鏡を使ったアトラクションって合わせ鏡で作ったミラーハウスくらいしか思い浮かばないだけで」
「わたくし達、鏡を使ったアトラクションというので何か乗り物の様な物だと思ってましたわ」
「1から探しませんといけませんわね」
「ルーも!ルーもさがすー!!」
ルーシーがピョンピョンと椅子の上でジャンプしてルーファスに「ルーシー行儀が悪いぞ」と怒られ耳をぺしゃっと下げながらも上目遣いでミルアとナルアを見て2人が「ルーシーも一緒に探しましょう」と3姉妹で仲良く探す事を提案して笑い合う。
「もう、そんな噂話で遊園地を楽しまない気なの?」
「楽しみつつ探すのですわ」
「ちゃんと押さえるところは押さえて遊びと探究心を満たすのですわ」
「うー!ルーもさがすぅー!」
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