黒狼の可愛いおヨメさま

ろいず

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19章

海上戦 空中戦

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 空中戦から落とされた魔獣の処理に海上での戦闘は息つく暇がない程忙しい。
こちらの敵は落とされた魔獣を食べに海面に上がって来る海獣も相手にしなければいけない。
【刻狼丸】の船上でタマホメとメビナが鎖鎌を回しながら魔獣と海獣を相手に暴れまわっているが、山吹色の狐幼女2人の攻撃範囲が広い為に他の戦闘員は巻き込まれない様にする方に忙しい。

「あっぶねぇぇ!!」
「ごめーん!でも邪魔だよ!」
「ヒッ!タマ!ヒナ!気をつけろ!少し切れたぞ!」
「わるーい!でも邪魔だよ!」

 鎖鎌の鎖をジャラッといわせて鎌をキャッチすると2人は他の従業員に「向こうをやって」と指をさしで伝えて、再び暴れ始める。

 ザパーンと大きな音を立ててホエールデビルが海面に顔を出すとホエールデビルの飼い主であるリロノスが海面に落ちた魔獣に近付いて余計な手間をかけさせる海獣を魔法で薙ぎ払って出て来る。

「リロノス!そっちに乗り移させてくれ!」
「良いですけど、割りと危ないですよ?」
「あいつ等の戦闘に巻き込まれるよりか海獣相手の方がマシだ!」

 従業員がタマホメとメビナを指さすと、顔のスレスレの所まで鎖鎌がヒュンと音を立てて横切り「なっ!あいつらの方がやべぇって!」とホエールデビルに乗り移る。

「「邪魔じゃまぁあぁぁ!!」」

 タマホメとメビナが声を上げながら鎖鎌を景気よく振り回して船上は双子の独壇場の様な物になっている。
船の操舵士のキリヒリだけが逃げるに逃げられないといった感じで舵を握っている。

 それなりに海上で食い止めてはいるが、既に温泉大陸の海岸に魔獣が上がり込み始めている。
グリムレインのドームは大砲を撃つ為に消し去られているので、大砲が打ち終わるまでは防衛としては使えない。
海岸でも戦闘が始まり、せめて街中には魔獣が入らなければいいがと思いつつ、海上に再び空から落ちて来た魔獣を処理する為に戦闘が繰り広げられる。

「父上!大分数が減ってきましたわー!」
「シュー兄様!無茶しないで下さいませ!」

 ミルアとナルアがローランドの上で魔力ポーションを飲み干して口元を拭うとルーファスとシュトラールに声を掛ける。
ルーファスは雷撃で魔法攻撃の遠距離攻撃中心にして戦闘タイプではないアルビーに魔獣が近寄らない様にしているが、シュトラールは初めから近接攻撃でケルチャが伸ばす木の蔦の上を足場にして魔獣の群れに突っ込んで行っている。
自分に回復魔法を掛けて捨て身で突っ込んでいけるシュトラールだからこその戦闘スタイルであるが、見ている方は危なっかしくて見ていられないという感じなのである。

「ミルア、ナルア、空はもういい!海上の殲滅を手伝ってやってくれ!」
「わかりましたわ!」
「最後に【火山・竜巻ボルケーノタイフーン】」

 魔獣の群れに火魔法を放ち2人は空中戦から海上戦へと降りていく。
ルーファスが体力回復ポーションと疲労回復ポーションに魔力回復ポーションを飲んでほんの少し、自分も年を取ったかもしれないと息を吐く。

「アルビーまだ大丈夫か?」
「まぁね。ルーファスが雷魔法使いまわるから背中がビリビリするけど、低刺激のマッサージだと思っとくよ」
「悪いな。雷魔法のコントロールは難しくてな」
「平気だよ。自分にも回復魔法掛けてるしね。にしても、随分空の方は減ったけど、海上と港の方も急がないとね」
「ああ。アカリはちゃんと撤退しただろうな・・・」
「アカリはたまに無茶するからねー」

 ルーファスが温泉大陸の方を振り向けば、温泉大陸の大砲は空に向けてまだ発砲を繰り返している。
港の上にグリムレインが飛んでいるのが見え、背中に小さな黒い人影が居る事から朱里はまだ撤退をしていない様だった。
何をしているんだ!と、思うものの空中の魔獣達に囲まれてギリッと唇を噛む。

「邪魔だ!このっ魔獣共が!!【雷槍サンダースピア】」

 雷の槍を力任せに魔法で放ち魔獣達が海面へ落ちていく。
父親のルーファスがバリバリと雷の音を立てながら暴れる様を見て、巻き込まれたら大変だとシュトラールが一際大きい魔獣に拳を振り下ろした時、シャランと聞きなれた音が耳に届く。

「・・・フィリア?」

 ドクンッと心臓が跳ね上がると自分の妻の羽音に目の前の魔獣を凝視すると、魔獣が小刻みに喉を震わせると大きな口を開けてシュトラールの目の前に何かを吐き出して落下していく。
魔獣から吐き出された物を掴もうとシュトラールが手を伸ばすが、吐き出された粘液で手が滑りそれは落下していく。
シュトラールがケルチャの蔦から飛び降りて追う様に落下していく。

「ちょっと!シュトラール!アンタ何してんのよ!」

 ケルチャが悲鳴に近い声を上げてシュトラールに蔦を伸ばして捕まえると、シュトラールも魔獣が吐き出した落下物を手に掴んでいた。

「ケルチャ、ナイスキャッチだよ」
「それより、何それ・・・?人かしら?」

 シュトラールが手で粘液を払いながら、魔獣から吐き出された人物を確かめる。
銀糸の長い髪の男、そして背中には薄い透明の羽が生えている。

「『空の国』・・・フィリアと同じ羽の生えた精霊族だよ」
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