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24章
我が家のエルフ嫁
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「酷いのだ! 我とハガネに押し付けてリューが戻ってこなんだ!」
「ごめんねー、グリムレイン。リューちゃんに今度、美味しい物奢って貰おうね」
リュエールとキリンちゃんが『堕とし札』の最中に抜け出してしまったので、ハガネとグリムレインが代わりに最後までやったらしく、私の頭の上でグリムレインが撫すくれ中である。
私はグリムレインを労いつつ、庭で罪人の大岡裁きのような感じになってしまっている縁側に熱いお茶を淹れて持っていく。
「名前はラム・クランチ、アリクイ獣人で間違いないな。通称『恋仙人』」
ルーファスがアリクイ獣人、ラムさんの名前を聞き、ラムさんが頷くとリュエールが縛り上げている紐をギリギリときつく縛り上げている。
「ワシは老人ぞい、そんな風に若者が老人に無体なことをするなど、親の顔が見てみたいわい。シシッ」
「オレが親だが? 喉笛に噛みつきながらじっくり見たいか? お前の最期の見る者の顔がオレになるがな」
うーん。ラムさんは相変わらず、捕らえられてもおちょくるのを止めない姿勢は凄いなぁ。
ルーファスも相変わらず、鼻にしわが寄ったまま威嚇声を出しているし……馬が合わないのかも?
「ルーファス、お茶置いときますよ。リューちゃんとハガネの分も置いておくね」
「ありがと、母上。後で貰うよ」
「あんがとさん、置いといてくれりゃいいから」
「奥さん、ワシのはどうしたんじゃわい?」
「あら? ごめんなさい。縛られてるから飲めないかと思って……」
「気の利かぬ嫁じゃわい」
性格のキツイお爺さんだなぁと思っていたら、リュエールがラムさんを足で踏みつけ、ハガネもラムさんを踏みつけて、ルーファスがお湯玉をぶつけていて、グリムレインがそのお湯玉をカチンコチンに凍らせて「フンッ」と鼻息を荒くしている。
「みんな、やり過ぎだよ。もう、どうどう」
「嫁! こんなのは温泉大陸から追い出すべきだと我は思うぞ!」
「まぁまぁ、グリムレイン。ちゃんとラムさんが、なにしに来たのか聞かなきゃ」
グリムレインを宥めて、お湯玉の氷を溶かしてもらうと、再び尋問の始まりである。
ラムさんが言うには『東国の王子の番を見付け出すこと』がラムさんの依頼で、温泉大陸への招待券や書類を用意したのも東国らしい。
ちなみにカイナくんに確認したところ、寝耳に水状態で驚いていて事実確認をしてから、折り返し魔法通信で【刻狼亭】の魔法通信へ連絡してくるようだ。
「しっかしよぉー、爺さんの特殊能力は怪しいんだよなぁ」
「なんじゃと! この狸風情がワシの能力を疑う気か!?」
ゲシッとハガネが笑顔でラムさんを踏みつけて、「俺は貉だっつーの。どいつもこいつも狸、狸とやかましいわ」と、口を尖らせている。
アハハ―……みんなハガネを狸ってよく言うよねぇ……そんなに似てるかなぁ?
でも私、狸の獣人も狸自体も見たことが無いからアナグマのハガネしか見た事ないので、いまいち似ているのか分からない。
私が今まで狸! って思っていたのが実はアライグマだったから余計に……狸は分からない。
「大体、昔、うちの大旦那に『番は居ない』っつといて、番はこうして現れたじゃねぇか! インチキじゃねぇか!」
「それこそ、そこの奥さんが変なんじゃわい! そこの狼に番の糸は結ばれておらなんだわ!」
んーっ、それは私が異世界に居たから、ルーファスとの番の糸? のような物が途切れていただけじゃないかなぁ?
ルーファスを見れば、私と同じ意見になっているのか「それは見えなくても、仕方がなかったのだろうさ」とふぅと、息を吐いている。
「んで、東国の誰に頼まれたんだよ?」
「依頼人の名前は言えんわい」
「うちの娘を利用しようなんて真似はさせないよ?」
「利用もなんも、姫にはちゃんと番の糸が繋がっておるわい」
私達は未来のスクルードから聞いてしまっているから、将来結ばれるのは知っているけど、普通に考えれば、東国が温泉大陸とのパイプを持とうとして、番だと言っているとも思えるよね。
番だとわかるのは十代前後からだから、それまでに話を大きくしてしまえば、お互いに情のようなもので離れられなくなっていたり、周囲のことを気にして別れられなくなってしまうかもしれないから……それはそれで可哀想なモノかもしれない。
「最悪……考えられるのは、番であるシャルを亡き者にして、王太子の番が現れないようにし、依頼主の親族を王太子の婚約者に据えようと画策する為の依頼なのかもしれんな」
ルーファスの言葉にガタッと音がして、後ろを振り向けばシャルちゃんをベビーベッドに置いていたキリンちゃんが、弓矢を構えてギリギリと矢を放とうとしていた。
「依頼主を言いなさい! 言わないと、二度と余計な口がきけないように射貫くよ! 『森の風よ、旋風の一矢をー……』早く言わないと後悔するよ!」
キィィィンとキリンちゃんの矢が風と光を渦巻き始めている。
うちの嫁怖いっ!! ひぇぇぇ!
あわわっと私がしていると、スクルードとレーネルくんが私の後ろにしがみ付く。
「きゅぅぅ」
「くぅぅん」
二人共、キリンちゃんが本気で怒るところは初めて見るから脅えてしまっているけど、それだけ子供を守りたい気持ちは本気なのだから、仕方は無いだろう。うん、怖いけど……。
「脅されても言えんわい……んぎゃっ!!」
スピンと綺麗な音で弓糸が鳴り、ラムさんの長い鼻先に矢が貫通していた。
真っ直ぐ撃った矢が風に乗り、上から下に曲がるという曲芸じみた攻撃に、私は目を丸くしてしまった。
しかし、驚いている場合ではない。
レーネルくんとスクルードが見ないように、二人を自分の腕の中に顔を押し付けるように抱き寄せる。
「さあ、もう一度聞くよ? わたしの子供を狙うのは何処の誰?」
「キリン、少し落ち着け。まだ可能性というだけだ」
「でも、お義父さんっ!」
「東国から、連絡が来たようだ」
ルーファスが耳を動かしてそう言うと、庭にテンが小鬼を連れていつも通りににこやかな顔で現れたのだった。
「ごめんねー、グリムレイン。リューちゃんに今度、美味しい物奢って貰おうね」
リュエールとキリンちゃんが『堕とし札』の最中に抜け出してしまったので、ハガネとグリムレインが代わりに最後までやったらしく、私の頭の上でグリムレインが撫すくれ中である。
私はグリムレインを労いつつ、庭で罪人の大岡裁きのような感じになってしまっている縁側に熱いお茶を淹れて持っていく。
「名前はラム・クランチ、アリクイ獣人で間違いないな。通称『恋仙人』」
ルーファスがアリクイ獣人、ラムさんの名前を聞き、ラムさんが頷くとリュエールが縛り上げている紐をギリギリときつく縛り上げている。
「ワシは老人ぞい、そんな風に若者が老人に無体なことをするなど、親の顔が見てみたいわい。シシッ」
「オレが親だが? 喉笛に噛みつきながらじっくり見たいか? お前の最期の見る者の顔がオレになるがな」
うーん。ラムさんは相変わらず、捕らえられてもおちょくるのを止めない姿勢は凄いなぁ。
ルーファスも相変わらず、鼻にしわが寄ったまま威嚇声を出しているし……馬が合わないのかも?
「ルーファス、お茶置いときますよ。リューちゃんとハガネの分も置いておくね」
「ありがと、母上。後で貰うよ」
「あんがとさん、置いといてくれりゃいいから」
「奥さん、ワシのはどうしたんじゃわい?」
「あら? ごめんなさい。縛られてるから飲めないかと思って……」
「気の利かぬ嫁じゃわい」
性格のキツイお爺さんだなぁと思っていたら、リュエールがラムさんを足で踏みつけ、ハガネもラムさんを踏みつけて、ルーファスがお湯玉をぶつけていて、グリムレインがそのお湯玉をカチンコチンに凍らせて「フンッ」と鼻息を荒くしている。
「みんな、やり過ぎだよ。もう、どうどう」
「嫁! こんなのは温泉大陸から追い出すべきだと我は思うぞ!」
「まぁまぁ、グリムレイン。ちゃんとラムさんが、なにしに来たのか聞かなきゃ」
グリムレインを宥めて、お湯玉の氷を溶かしてもらうと、再び尋問の始まりである。
ラムさんが言うには『東国の王子の番を見付け出すこと』がラムさんの依頼で、温泉大陸への招待券や書類を用意したのも東国らしい。
ちなみにカイナくんに確認したところ、寝耳に水状態で驚いていて事実確認をしてから、折り返し魔法通信で【刻狼亭】の魔法通信へ連絡してくるようだ。
「しっかしよぉー、爺さんの特殊能力は怪しいんだよなぁ」
「なんじゃと! この狸風情がワシの能力を疑う気か!?」
ゲシッとハガネが笑顔でラムさんを踏みつけて、「俺は貉だっつーの。どいつもこいつも狸、狸とやかましいわ」と、口を尖らせている。
アハハ―……みんなハガネを狸ってよく言うよねぇ……そんなに似てるかなぁ?
でも私、狸の獣人も狸自体も見たことが無いからアナグマのハガネしか見た事ないので、いまいち似ているのか分からない。
私が今まで狸! って思っていたのが実はアライグマだったから余計に……狸は分からない。
「大体、昔、うちの大旦那に『番は居ない』っつといて、番はこうして現れたじゃねぇか! インチキじゃねぇか!」
「それこそ、そこの奥さんが変なんじゃわい! そこの狼に番の糸は結ばれておらなんだわ!」
んーっ、それは私が異世界に居たから、ルーファスとの番の糸? のような物が途切れていただけじゃないかなぁ?
ルーファスを見れば、私と同じ意見になっているのか「それは見えなくても、仕方がなかったのだろうさ」とふぅと、息を吐いている。
「んで、東国の誰に頼まれたんだよ?」
「依頼人の名前は言えんわい」
「うちの娘を利用しようなんて真似はさせないよ?」
「利用もなんも、姫にはちゃんと番の糸が繋がっておるわい」
私達は未来のスクルードから聞いてしまっているから、将来結ばれるのは知っているけど、普通に考えれば、東国が温泉大陸とのパイプを持とうとして、番だと言っているとも思えるよね。
番だとわかるのは十代前後からだから、それまでに話を大きくしてしまえば、お互いに情のようなもので離れられなくなっていたり、周囲のことを気にして別れられなくなってしまうかもしれないから……それはそれで可哀想なモノかもしれない。
「最悪……考えられるのは、番であるシャルを亡き者にして、王太子の番が現れないようにし、依頼主の親族を王太子の婚約者に据えようと画策する為の依頼なのかもしれんな」
ルーファスの言葉にガタッと音がして、後ろを振り向けばシャルちゃんをベビーベッドに置いていたキリンちゃんが、弓矢を構えてギリギリと矢を放とうとしていた。
「依頼主を言いなさい! 言わないと、二度と余計な口がきけないように射貫くよ! 『森の風よ、旋風の一矢をー……』早く言わないと後悔するよ!」
キィィィンとキリンちゃんの矢が風と光を渦巻き始めている。
うちの嫁怖いっ!! ひぇぇぇ!
あわわっと私がしていると、スクルードとレーネルくんが私の後ろにしがみ付く。
「きゅぅぅ」
「くぅぅん」
二人共、キリンちゃんが本気で怒るところは初めて見るから脅えてしまっているけど、それだけ子供を守りたい気持ちは本気なのだから、仕方は無いだろう。うん、怖いけど……。
「脅されても言えんわい……んぎゃっ!!」
スピンと綺麗な音で弓糸が鳴り、ラムさんの長い鼻先に矢が貫通していた。
真っ直ぐ撃った矢が風に乗り、上から下に曲がるという曲芸じみた攻撃に、私は目を丸くしてしまった。
しかし、驚いている場合ではない。
レーネルくんとスクルードが見ないように、二人を自分の腕の中に顔を押し付けるように抱き寄せる。
「さあ、もう一度聞くよ? わたしの子供を狙うのは何処の誰?」
「キリン、少し落ち着け。まだ可能性というだけだ」
「でも、お義父さんっ!」
「東国から、連絡が来たようだ」
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