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箱と中身
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大きなつづらと小さなつづら……と、昔話であったなぁと思いつつ、目の前の大きな箱と小さな箱をリビングのテーブルの上に置いて「ふむ」と言葉が漏れる。
「誕生日でも何でもないんだけど、タイミングが同じっていうところが不気味だ」
大きな箱は英語で書いてある事から、メイデルだと思う。
小さな箱は日本語。見慣れた字に、顔に似合わず雄々しい字を書くんだよなと、生意気な弟分を思い出す。
メイデルとシズクが姿を見せなくなり、二ヶ月経つ。
そろそろ発情期ではあるけど、それに関係しているのだろうか?
大きな箱から開けると、中からは小さなカードに『申し訳ありません。今回は帰れません』と書いてあった。
「仕事……かな?」
特殊な仕事だから、別に気にはしていない。
ただ、メイデルの事だから、何がなんでも日本に来そうな気がしていた分、拍子抜けしただけだ。
箱の中からは、何故か枕……なんで枕? しかも、メイデルの香りがする。
自分の代わりに枕を抱いてろとでも言うのだろうか? しないけど。
あとは、オメガのマーク入りの瞬間抑制剤が十二本入っていた。
瞬間抑制剤は、瞬時に発情を抑えてくれる上に副作用のようなものもない。
ただし、お値段は鬼のように高い。
「大事に取っておこう……」
誘惑香を発さない体になった分、苦しむのは自分だけだから、家の中で大人しく過ごすだけだ。
だから、食料を一週間分買い込んで家の中で耐えていればいいだけで、薬を使う必要もない。
瞬間抑制剤を脇に置いて、小さな箱の方を開ける。
「何を送ってきたんだか」
いつも服用している抑制剤の錠剤と、何処かのカードのようなものが一枚入っていた。
抑制剤は眠気が強い物で、朝飲んだら次の日の朝まで寝てしまう物ではあるけれど、おかげで発情期らしい発情期で体が疼いたりはした事が無い。
「メイデルもシズクも、俺の発情期を気にし過ぎだから!」
アルファ達の思考はどうなっているのやらだ。
それにしても、このカードは何なのか? 他には何も入っていないし、メイデルもシズクも俺に連想ゲームでもさせる気か?
「しかし、これ何処のカードだ?」
黒いプラスチックに金の文字で『グランアージュ』と書かれ、カクテルグラスが描いてある。
夜のスナックを連想させるようなカード。飲み屋の会員カードとかだろうか?
パソコンで店の名前を打ち込むと、IDを求められた。
カードの裏を見れば数字が刻印してあり、数字を打ち込むと店の地図が表示された。
「ここに行けって事……でいいのか?」
シズクが何を考えてこれを送ってきたのか分からないけど、行くしかないか。
どうせ、暇だしな。
そう、情報屋の仕事が全然入ってこなくて、現在、ホットドッグ売りをしているだけの貧乏生活である。
家賃の事もあるし、そろそろ何か仕事をしなければヤバいのである。
シズクの事だから、何か情報屋としての仕事を手伝ってくれるという可能性も……無くはないと、思う。
「誕生日でも何でもないんだけど、タイミングが同じっていうところが不気味だ」
大きな箱は英語で書いてある事から、メイデルだと思う。
小さな箱は日本語。見慣れた字に、顔に似合わず雄々しい字を書くんだよなと、生意気な弟分を思い出す。
メイデルとシズクが姿を見せなくなり、二ヶ月経つ。
そろそろ発情期ではあるけど、それに関係しているのだろうか?
大きな箱から開けると、中からは小さなカードに『申し訳ありません。今回は帰れません』と書いてあった。
「仕事……かな?」
特殊な仕事だから、別に気にはしていない。
ただ、メイデルの事だから、何がなんでも日本に来そうな気がしていた分、拍子抜けしただけだ。
箱の中からは、何故か枕……なんで枕? しかも、メイデルの香りがする。
自分の代わりに枕を抱いてろとでも言うのだろうか? しないけど。
あとは、オメガのマーク入りの瞬間抑制剤が十二本入っていた。
瞬間抑制剤は、瞬時に発情を抑えてくれる上に副作用のようなものもない。
ただし、お値段は鬼のように高い。
「大事に取っておこう……」
誘惑香を発さない体になった分、苦しむのは自分だけだから、家の中で大人しく過ごすだけだ。
だから、食料を一週間分買い込んで家の中で耐えていればいいだけで、薬を使う必要もない。
瞬間抑制剤を脇に置いて、小さな箱の方を開ける。
「何を送ってきたんだか」
いつも服用している抑制剤の錠剤と、何処かのカードのようなものが一枚入っていた。
抑制剤は眠気が強い物で、朝飲んだら次の日の朝まで寝てしまう物ではあるけれど、おかげで発情期らしい発情期で体が疼いたりはした事が無い。
「メイデルもシズクも、俺の発情期を気にし過ぎだから!」
アルファ達の思考はどうなっているのやらだ。
それにしても、このカードは何なのか? 他には何も入っていないし、メイデルもシズクも俺に連想ゲームでもさせる気か?
「しかし、これ何処のカードだ?」
黒いプラスチックに金の文字で『グランアージュ』と書かれ、カクテルグラスが描いてある。
夜のスナックを連想させるようなカード。飲み屋の会員カードとかだろうか?
パソコンで店の名前を打ち込むと、IDを求められた。
カードの裏を見れば数字が刻印してあり、数字を打ち込むと店の地図が表示された。
「ここに行けって事……でいいのか?」
シズクが何を考えてこれを送ってきたのか分からないけど、行くしかないか。
どうせ、暇だしな。
そう、情報屋の仕事が全然入ってこなくて、現在、ホットドッグ売りをしているだけの貧乏生活である。
家賃の事もあるし、そろそろ何か仕事をしなければヤバいのである。
シズクの事だから、何か情報屋としての仕事を手伝ってくれるという可能性も……無くはないと、思う。
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※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
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