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届かない鎖と、歪んだ愛
しおりを挟む「くそっ!」
今日も、リベルテからの手紙の返事は無い。
婚約者が出来たときもそうだったようにリベルテはいくら臍を曲げても、傷つけても私への愛を貫くだろうと思っていたのに……
リベルテの実家に金があるのはよく知っていたが、身分の差という障害は私にとっては大きい。
成り上がりの家門のリベルテを娶れば私が跡を継ぐ際に家格を下げると父に言われて仕方なく今の妻を娶った。
けれど、妻のエリシアはリベルテとは違って大人しい女性で、貴族令嬢らしい人だった。リベルテとはまた違った魅力のエリシアを守ってやりたいと思い始めていたのも確かだった。
それでも私は、出会った頃からずっと決めているのだ。
リベルテを手放すつもりは無いと。
私の中ではどんな形でもリベルテを側に置くのは決定事項だった。
なのに……
「リベルテからの返事は!?」
「ま、まだ何も……っ、申し訳ありません」
苛立つのを抑える為に葉巻に手を伸ばす。
もうすぐエリシアが帰ってくるので落ち着かせるように深く吸い込んで、従者を下がらせた。
幼い頃から私だけを見つめていたあのルビーのような瞳も、撫でるたびに美しくなる気がする赤い髪も、芯の強さが伝わるあの何処か腹の底に響く可愛いのにセクシーな声も、リベルテの全部が惜しい。
毎日、毎日、リベルテに会いたくて、彼女が欲しくて仕方がない。
それなのに、エリシアのことは良い妻だと思うし罪悪感だろうか?大切にしないといけないとも思っている。
偶然、招待状の中から目に入った黒と金。
一際目立つその封筒を見て体温が上がる。
「ーっ、何なんだよっ!あんな大物が成り上がりに何の用だ!」
ゴールディ公爵家、王族の血縁でありながら商売にも長けている。領地は裕福で兵力なんて王家に次ぐ強さだ。
名声も、金も、力も、容姿まで……
全て持っているゴールディ公爵が何故?わざわざリベルテにちょっかいをかける?別にリベルテでなくても沢山の女達が彼に夢中だというのに。
そこまで考えてから、ふと思い出して葉巻を落とす。
自分がリベルテの行動を事細かく見張り始めたのは、彼女が人目を惹くからだという事をーー。
絨毯の焦げた臭いの所為か、このつまらない状況の所為か苛立ちをぶつけるように葉巻を踏み潰した。
「リベルテは絶対に戻ってくる」
長い間ずっと私だけを見つめてきたんだ、
他の男など見る隙も与えなかった。
「大丈夫だ……子供の反抗期のようなものだろう」
「お、奥様が戻られました……っ」
「ふぅ……、分かった」
絨毯を新しくするように伝えてから、新しく書いた手紙を使用人に押し付けた。
「リベルテに送っておいてくれ、それとゴールディ公爵家の招待状に返事を」
(念の為、だ)
まだまだ時間はあるし、考えすぎならばかえってリベルテを同伴させてゴールディの夜会に行けばいい。
何も心配ない、すぐに全部戻ってくるーー。
「ただいま戻りました、あなた」
「ああ、おかえりエリシア」
エメラルドグリーンのドレスがよく似合うブラウンの髪を撫でて、好きだと視線で訴えかけてくるエリシアの額に口付けた。
「貴方をイメージしたの」
「よく似合ってるよ」
「私が一番似合う?」
「ああ……そうだね」
エリシアが完璧な令嬢だとしたら、リベルテの着飾った姿はまるで妖精のようだったなと思い浮かべた。
(すまないエリシア、一番はーーー)
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