あなたの愛人、もう辞めます

abang

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可愛い娘の麗しい親友

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引きこもりがちだった娘を心配していたのが嘘のように、近頃リベルテは活発になり、元の元気を取り戻した。

妻も喜んでいるのか楽しそうに娘に贈るのだと、お転婆な娘の為に日傘を選んでいる。

名店とはいえもう長く付き合っているマリスはデザイナーでもあり店主でもある。彼女の夫は王家御用達の宝飾店、スペーシィの店主で夫婦共にうちもまた長らく懇意にしている。

その所為か、近頃の娘の様子に二人もまた自分のことのように喜んでくれており、商売をしに来ているはずのスペーシィ夫妻はリベルテへの贈り物まで用意してくれていた。



「すまないなマリス夫人、その分も沢山買い物しなさいシャルテ」

「ふふ、ええあなた」

「いえ、お嬢様の事は幼い頃から知っておりますので……心から嬉しいですわ」


マリスの言葉にもっと早く決断していれば良かったと自責の念が心をチクリと突いたが、どうやら娘には近頃とても大物のが出来たらしく楽しそうにしているので安心している。

実を言えば今日もこの伯爵家の南の別邸の屋上で二人は何をする訳でもなく寝転がっていると報告を聞いている。


護衛達によると、時折珍しく声を上げて楽しそうな笑い声を響かせているらしく娘の親友はどこかの幼馴染とは違って礼儀正しく誠実な方なので安心もしている。


表面上や言葉上だけではない誠実さはすべてエイヴェリー公爵の行動から信頼を得た。

王族に次ぐ家門の当主だというにも関わらず、目立たぬようにと気遣い、付き人と二人きりで裏門から訪ねてくる彼がどれほどリベルテの事を気にかけてくれているかが分かる。

必ず私と妻にまず顔を見せてくれる彼は、まだ若く子を持ったこともないだろうに心配する親心を汲み取ってかごく自然に「今日は南の別邸をお借りしてピクニックをします」と報告までしてくれるのだからよく出来た人だ。

あんなにも自然体で、よく笑うリベルテは久しぶりに見た。

二人が良い仲になってくれればなんて……考えてしまうが、リベルテがあれほど嬉しそうに「大切な親友なの」と笑うのだから何も言わずに見守るつもりだ。


リベルテに好奇の目が向かぬようにどちらかの敷地内で遊ぶ二人はどうやら何かをするというよりは、今日のようにのんびりしているだけの時もあれば、互いに執務をしながら時折会話をしている程度の時もあるし、酒を酌み交わしている時もある。


あれほどベッタリだというのに確かに色気のいの字も感じさせないので邸では残念がるメイド達の声がよく聞こえてくる。


けれども私は見逃してはいない。

リベルテを見るエイヴェリー公爵の蕩けるような視線、公の場では聞いたことのない普通の青年のような優しい声。
妻に似て自分のことにはめっぽう鈍いリベルテに無防備に触れられるたびにほんの僅か、誰も気づかぬくらいに間が空く事を……。


無意識の内なのか、心の内を隠しているのかまでは分からないがきっと、彼がリベルテを傷つけるつもりではないのは分かる。



「まだ早いが一杯やるかな……」

何となく気分が良くて、コレクションのウイスキー棚を見上げると一番高価な瓶が消えている。

お気に入りの椅子が棚の下にある事と、執事が申し訳無さそうに「お嬢様が先日召し上がりました」と報告した事によって犯人はすぐに特定できたが、思わず頭を抱えた。


暫く大人しかった所為で、娘がとんだお転婆だと言うことをすっかり忘れてしまうのだ。


「あの……ですがゴールディ公爵閣下よりこちらを……」

「これは……!」

「ご馳走になったと伝えてくれと手紙が……」


あまりにも素敵なサプライズに思わずにやけてしまう。
酒好きならば一度は飲んでみたいものだし、実際に自分もこの酒が好きでシーズンになるとまとめて取り寄せるのだ。

リベルテが次々と空けてしまうものだから困っていたが、今日はどうやらありつけそうだと安心した。


(はぁ……やはり娘といい仲になってくれんかなぁ)









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